トランプ氏は9日、航空会社トップとの会合で、「2~3週間のうちに税制について驚くような発表をするつもりだ」と述べ、 法人税の大型減税などの具体策を今月中にも明らかにする方針を示しています。
現在、アメリカの法人実効税率は、主要国のなかでも高い水準にあり、連邦法人税率は35%となっています。
トランプ氏はこれを大幅に引き下げ、成長の促進剤にしたい考えで、15%にまで下げる案を示しています。
共和党も20%への引き下げを打ち出していて、両者の間で妥協点を見出す作業が行われることになります。

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「国境税調整」…輸出で稼いだ利益を免税に、輸入で仕入れた製品は費用控除を認めない

こうした中、法人税改革で、税率と並び、大きな焦点となるのが「国境税調整」です。
もともと、日本やヨーロッパでの消費税は、製品は最終消費地で課税されるという「仕向地主義」の考え方を採用していて、 企業が、完成品を輸出する際には、原材料の仕入れで支払った消費税を還付され、外国から輸入するときには課税されるという仕組みが取られています。
ところが、アメリカには連邦レベルの付加価値税が存在しないため、アメリカ企業には、輸出時の税還付がないにもかかわらず、 輸出先では課税されるという不満があります。
そこで、日欧の消費税のような「仕向地」課税を法人税で実施し、企業が輸出で稼いだ利益は課税を免除にする一方、 海外から輸入した製品や部品については費用控除を認めずに課税するというのが、法人税の「国境税調整」の考え方です。
輸出が課税されなくなれば、アメリカ企業の競争力は高まり、海外移転が抑制され、国内回帰を促す効果があるというわけです。

アメリカ国内で安価な輸入品が手に入りにくくなり、 物価は上昇。さらにWTO条項違反のおそれも

しかし、一方で、この措置は、法人税と同率の輸入関税を課すのに等しく、アメリカ国内では安価な輸入品が手に入りにくくなり、 物価の上昇から消費の減退を招来しかねません。実際、輸入品への依存度が高い小売業界は反発を強めています。
また、法人税という直接税での輸出時還付は、WTO(世界貿易機関)が禁じる「輸出補助金」とみなされ、係争の種となる可能性があります。
さらに、導入当初は輸出増・輸入減となったとしても、貿易赤字が減少するとの見方が広がり、「ドル高」圧力が強まった場合、ドル建ての輸出額が減少し、輸出企業は、国境税調整を受けたとしても、利益の大幅な拡大を期待できず、国内での設備投資や雇用に消極的になる事態も想定されます。

企業の海外滞留資金の納税猶予をなくし、直接課税を行う案も

また、トランプ氏は、企業の海外滞留資金にメスを入れ、納税猶予をなくし、直接課税を行う案も示しています。
企業が海外にお金をためこんでおく動機がなくなり、資金をアメリカ国内に戻しやすくなるというわけですが、 外貨建ての留保利益が還流する際にはドル需要が高まることから、こちらもドル高要因となります。

国境税調整をはじめとする法人税改革が、トランプ政権の狙い通り、長期的に輸出競争力を高め、国内雇用の復活を担えるものになるのか、世界経済の見通しにさらなる不確実性を加えるものになるのか、公表される具体的内容の実効性を見極める必要があります。