「(レーガン政権期の)1986年以来、最も重大な税制改革で、アメリカ史上最大の減税の1つになる」

トランプ政権は、発足後100日を前にした先月26日、NEC=アメリカ国家経済会議のコーン委員長がこう胸を張った税制改革案を公表しました。
大きな柱となるのは、法人税率の大幅引き下げです。
アメリカの連邦法人税率は35%で、地方税とあわせた実効税率は約40%と、主要国で最も高い水準にあります。
改革案では、この35%の連邦法人税率を15%に下げることにしました。
企業の税負担を軽くして、立地先としてのアメリカの魅力を高め、国内での工場や設備投資に結びつけ、雇用拡大につなげるのがねらいです。

企業が海外にため込んだ留保金をアメリカ国内に戻した場合、一時的に税率を低減する策も盛り込まれました。
利益をアメリカに還流させることで、投資を促し、経済を活性化させる意図があります。

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減税規模は、10年間で4兆ドル(約440兆円)に達する試算

また、個人をめぐる税制でも、所得税の最高税率を36.9%から35%に引き下げ、相続税も廃止します。
消費拡大を念頭に、富裕層の負担を軽減する措置ですが、一方で、所得から差し引ける基礎控除も拡大し、低中所得層の減税幅も広げます。

問題は、これらがとてつもない歳入減を伴うことです。
今回の減税規模は、2001年の「ブッシュ減税」を大きく上回り、10年間で4兆ドル(約440兆円)に達すると試算されます。
必要な安定財源を手当てすることができなければ、政府債務は著しく増大します。

トランプ政権は、経済成長により税収が増えれば、税制上のもろもろの優遇措置を整理することとあわせて、財源をまかなうことができるとの姿勢ですが、
具体的な青写真は示しませんでした。

議会との調整は難航のおそれ

評価の目安とされる「就任から100日」を迎えたトランプ大統領ですが、「アメリカ第一主義」に基づく公約の大多数は立ち往生しています。
期待が先行する形で、株高ドル高が進んできた金融市場では、勢いに陰りも見られるほか、アメリカの1~3月期の実質GDP=国内総生産の成長率は、市場予想の1.2%を大きく下回って0.7%(前期比・年率)にとどまり、3年ぶりの低水準となりました。
特に個人消費は、自動車販売の不振などを受けて0.3%増と、2009年10~12月期以来の低い伸びとなりました。
政権発足時に目標として表明した「4%成長」は遠い状況です。

大型減税は、経済成長を重視するトランプ政権にとって、景気刺激策の主軸に位置付けられます。
細部の制度設計は、今後の議会との調整に委ねられることになりましたが、財政規律を重んじる共和党保守派との協議はとりわけ難航することが予想されます。

「小規模な恒久減税」に落ち着く可能性も

財源の裏打ちのない単純な減税は財政赤字を膨らませ、アメリカ経済を傷つける結果になる反面、大風呂敷を広げた「大減税」が、「小規模な恒久減税」に
落ち着くことになれば、経済押し上げ効果は限定的となり、市場の期待も急速にしぼみます。

また、行き過ぎた景気刺激により、インフレ圧力が高まれば、金融引き締めに向けた利上げペースは想定以上に速まり、景気の腰折れにつながる可能性があります。鳴り物入りで打ち出された巨額減税が、アメリカ経済活性化と生産性向上の促進剤となり、成長力のけん引役を担えるのか。
その成否は、失点続きで足踏み状態に陥ったトランプ大統領が、景気押し上げをテコに政権浮揚を図れるかの大きなカギを握ることになります。