金融規制の緩和は、リーマンショックの反省から、金融機関への監督強化や破たん制度の整備、消費者保護の徹底など、幅広く規制を強化したドッド・フランク法を、抜本的に見直すというものです。融資拡大の促進や、銀行間競争による経済の活性化へと金融行政の舵を切り、景気拡張路線の後押しをねらいます。

「大型減税」「インフラ投資」「規制緩和」は景気を浮揚させる効果

トランプ氏の一連の経済政策は、アメリカ国内企業の競争力を強め、「雇用を生み出す」ことを目指しています。
「大型減税」や「インフラ投資」そして「規制緩和」は、いずれも雇用創出に資する景気浮揚を期待させる因子となります。

しかし、一方で、「移民抑制」や「保護貿易」を色濃く打ち出した一連の初動政策は、自由な労働力往来や交易の阻害を通じて世界経済に悪影響を及ぼす懸念があるのみならず、景気過熱というインフレリスクを亢進させ、一段のドル高を招く可能性を内包しています。

アメリカの労働環境は完全雇用に近い状態

3日発表されたアメリカの雇用統計では、非農業部門の就業者数が、前月に比べ22万7000人の増加となりました。市場予想を大きく上回る数字で、雇用の明確な改善の目安とされる20万人を4か月ぶりに超えました。
失業率は4.8%と、0.1ポイント悪化したものの、5%を下回り、完全雇用といわれる状態に近づきつつあります。失業率の低下の余地が一段となくなる中、アメリカの労働市場は非常に引き締まった環境にあり、企業による労働力の確保は困難さを増している状況です。

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「移民抑制」「貿易障壁」は、インフレ加速のリスクを内包


こうしたなかで行われる移民制限は、安価な労働力を手に入れにくくして、労働需給を一層タイトなものにし、賃金上昇に拍車をかけることになります。
さらに、貿易障壁により、割安な輸入品が入りづらくなれば、物価の上昇を招来するほか、製造業のアメリカ国内回帰が進んだ場合でも、生産は海外に比して割高な人件費のもとで行われ、インフレを加速させる要因になります。


こうして過度なインフレ状態が生まれた場合、アメリカの利上げペースが速まる可能性は高くなります。
利上げ加速で、日本をはじめとする海外諸国との金利差が広がれば、トランプ大統領が是正を求める「ドル高」をさらに誘発することになり、急速なドル高は、輸出産業の持ち直しにマイナスに働きます。

景気刺激策による経済成長の押し上げ効果と、移民抑制や保護貿易、金融環境のひっ迫がもたらす悪影響のいずれが勝るのか。
トランプ政権の政策が、アメリカ経済、ひいては世界経済の潜在成長力を高めるものなのかどうか、その実効性を長期的な視点で見極める必要が出てきています。