21世紀のグローバル化と産業構造変化が生み出した“格差” 

多くの場合、大衆や一部の識者、また、自分の知性の低さを棚に上げて自らを“革命的、革新的”と考える極めて浅薄な概念をもとに粋がって薄っぺらい勘違いをしているような思考回路や思考様式を持つ者たちが喧伝する「エスタブリッシュメント(層)が嫌いだ」「政治をエスタブリッシュメントから本当の民衆の手に取り戻そう」というロジックやそれに呼応する輩がポピュリズム論客の核になることが一般的で、現在、多くの場合、これに排外主義、20世紀後半からの経済のグローバル化から派生する産業構造の変化に政策が追い付かなかったことに関連した経済的な非対称性から生ずる大衆のフラストレーションが政治行動につながる傾向が続発する可能性の顕在化だ。 

特に、2008年9月のリーマンショック以降は、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和(ドル資金供給量を5倍近く増加させたこと)や先進国各国の金融緩和による過剰流動性が、グローバル経済、自由主義経済、自由貿易からくる、主に20世紀に繁栄を謳歌した先進国のそれぞれの国内で“格差”を生んだ側面は否めない。

根底には46年前のドル・金兌換の終了も

自由主義経済を基本とする資本主義は、1945年の第2次大戦終結後は、冷戦時代を含め、まずは実物経済の需要を満たすことで拡大、成長した。
その間、世界の基軸通貨である米ドルが、1971年のニクソンショック(米ドル紙幣と金との兌換停止)で非兌換国際基軸通貨となり、20世紀の最後の10年で冷戦が崩壊し、自由貿易のもとグローバル経済が進化した。通貨政策と産業構造、産業段階の国ごとの違い、差異が補完的に経済活動を活発にし、各国で時期的なばらつきが生まれつつも世界経済は発展してきた。

しかし、2008年のリーマンショック以後は、いわば、世界の実物経済の需要蒸発を金融緩和で乗り切ろうとして生じた過剰流動性が、その後の循環的景気変動での回復局面を経て、主に新興国や先進国の内部で“格差”を生んだ形である。
言い換えれば、実物需要を上回る通貨供給、過剰流動性のため、金融リテラシーや数学的思考のある人たちにはある程度の富を蓄積させ、そうでない20世紀型の産業で労働者として地道に働く人たちには20世紀型の富のボリュームしかもたらさないでいる、という点だ。それにグローバル化に伴う人の移動の自由化により、人件費コストの切り下がりが加わった20世紀型産業従事労働者の収入の減少と購買力低下が、経済力の非対称性からくるフラストレーションとそこから単純な「エスタブリッシュメントが嫌いだ」のロジックにつながっていると見ることができる。

資本主義は、様々なゆがみを経て、近世、近代から20世紀前半まで、戦争などの様々な政治的悲劇と極端ないくつかの屈折を生み出したあと、人類の知恵として、何とか、民主主義と自由主義、自由主義経済の穏健な構想、枠組みの確立にこぎつけた。
この間、人類の2大発明と言われる、貨幣と民主主義が、戦後の世界経済の発展に寄与したことは間違いなく、これは壮大で奇跡的な成熟の軌跡だったと言えるだろう。

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貨幣経済と民主主義は、反知性主義のポピュリズム政治やリーダーを生みかねない

この、人類の知恵の最高峰の一つである貨幣の発明と、多数決を基本とする民主主義の発明が、21世紀にはグローバル経済の中で、秩序破壊につながる“凶器”になる可能性をはらんでいる。つまり、貨幣経済とグローバル化で生じる非対称性が、民主主義という装置のもと、反知性主義のポピュリズム政治やリーダーを生みかねないという状況を生じさせるという皮肉、パラドクスのような状況である。

この間の資本主義の発展では、市場原理を中心とする自由競争の市場も失敗するし、政府の政策や規制の行き過ぎによる経済活動のダイナミズム低減やアニマルスピリット減少などの失敗も起きていたことは各国で確認できる。
市場原理主義的な政策や経済構造だけでは失敗してポピュリズムを生み出すし、政府・規制の行き過ぎも産業構造の変化や発展を阻害したり、人々を怠惰にするなど失敗も起きる。

つまり、市場も失敗するし、政府・規制も失敗するのである。
これは、成長と分配のどちらに重きを置くか、といった、ややステレオタイプな議論とは別次元の問題だろう。

“民主主義”“貨幣”を超え、人類の知恵を生み出せるか

トランプ大統領のような極めて頭が悪くお粗末でレベルの低い政治リーダー&国家リーダーが、今後、欧州先進国や世界で誕生しないよう、人類は貨幣と民主主義を超えるなんらかの知恵、発明、発見、模索を、市場も失敗する、政府・規制も失敗するという観点で考えて何とか乗り越え、20世紀型の発想から抜け出た新地平、新機軸につながるようにアウフヘーベン(止揚)しなくてはならない。今、世界各国の為政者に求められることはこのことではないだろうか。

(これを書いているのは2017年3月11日時点だが、今後、2017年はオランダ議会選挙、フランス大統領選挙、フランス議会選挙、ドイツ総選挙、状況によってはイタリア総選挙、と続くが、当面トランプ政権の政権運営のレベルの低さを反面教師にして、「トランプみたいなことになったら大変だ」という雰囲気が世界で醸成され、多くの有権者が理性的に気がついて、まともな政治判断が続くことを期待する)


(執筆: 大山泰)