2月22日、令状の無いGPS捜査の違法性を巡り、最高裁判所で双方の意見を聞く弁論が開かれた。

弁護側は「GPSによる行動監視はプライバシーの侵害」と主張。対して検察側は「(令状が要らない)尾行や張り込みを超えるほどのプライバシー侵害はない」と主張。真っ向から対立している。

対立の要因と問題点を、ホウドウキョク平松デスクがわかりやすく解説!

GPS捜査とは?

2月22日、最高裁判所の大法廷で弁護側、検察側双方の意見を聞く『弁論』が開かれました。焦点は「GPS捜査の違法性」についてです。

GPS捜査とは、警察が捜査対象者の車などに、無断でGPS端末を設置、捜査対象者の行き先や行動を監視・把握するもの。現在、最高裁で争点となっているのは、GPS捜査には裁判所の令状が必要か否かという点です。

GPS捜査の問題点とは?

例えば、警察は家宅捜索に入った際に、その人の家のものをゴッソリ持っていくわけです。そこには事件に関係するものもあれば、関係ないものも含まれます。
なぜ、このような捜査が許されるのか? それは、警察が裁判所にOKをもらっているから。相手のプライバシーに触れるような捜査方法においては、警察であっても、裁判所のお墨付き、つまり「令状」が必要なのです

それを踏まえた上で、GPS端末捜査の場合を考えてみましょう。

警察がGPS端末を取り付ける捜査対象者の車は、逮捕されているわけではありません。「疑わしき」段階で対象者の車に、GPS端末を付け、位置情報を入手。当然、捜査対象者は容疑者になりうる人物ですから、捜査対象者に、GPS端末設置の許可を得るようなことはなく、無断で設置し、位置情報を入手しています。

警察がGPS捜査を活用する意図は、尾行の一つの手法であり、尾行を補う手段であるということ。具体的には、追跡者を見失った時の補助の手段としてGPSを使うケースが多いということです。

GPS捜査が認められるケース

まだ「疑わしき」段階にある捜査対象者に、無断でGPS端末を設置、行動を監視するという捜査について、当事者の警察はどう捉えているのでしょうか。GPS捜査が認められるのは、どんな時なのか、2006年に警察庁が通達を出しています。

GPSがないと追跡が困難な場合
つまり、捜査対象者が警戒するあまり、尾行そのものが困難である場合。
要するに尾行をまく為に、色んな所をウロウロするなど、GPSがないと追跡が難しい場合が実際にあるわけです。

速やかな事件解決が必要な場合
被害の拡大を防ぐ為に、迅速な事件解決が必要と明確に判断できる場合。

GPS設置で違法行為が無い場合
GPS設置に伴う違法な侵入行為の有無。

このような事例に沿っていれば「令状は不要」というのが、警察のスタンスです。

GPS捜査を違法と判断した事例

しかし、容疑者の弁護士や、日弁連(日本弁護士連合会)は『令状が必要だ』と主張しています。つまり「令状なきGPS捜査は違法」ということ。

その理由を具体例を挙げて紹介しましょう。

捜査対象者がラブホテルに入ったため、警察がその間に駐車場に侵入、GPS端末を取り付けた事例がありました。

路上駐車ではなく、ラブホテルであったり、マンションの駐車場などに停車中の車への端末設置は「建造物侵入に当たらないのか?」「違法ではないか?」という指摘なのです。

司法判断は割れている

GPS捜査を行うにあたり、警察が裁判所の令状をとるべきかどうか。現状では司法判断が分かれています。

まず『令状を取らないと違法』という判断を紹介しましょう。

GPS捜査を違法と判断したのが、大阪地裁、名古屋地裁、名古屋高裁、水戸地裁。
「立法措置を講じるべき」という突っ込んだ意見もあったりします。

その一方で「違法ではない、適法」という司法判断もあります。

広島地裁と広島高裁の考え方は・・・

・公道を走行。
・私道のみを走行する車はほとんどない。
・よって『プライバシーの侵害濃度は低い』。
・尾行は以前より違法性はなし。
・尾行を補う手段としてGPSを採用してるケースが多い。

 よって「違法ではない、適法」という判断になっています。

さらに付け加えると、警察は、GPS捜査の過程で入手したデータの中で、必要のないデータは消去しています。であれば『そもそも公道を走っている車に対して、監視の目を厳しくする行為自体はプライバシーを侵害していない』という見解、判断なのです。

「携帯電話のGPS機能を使った捜査」では令状が必要

例えば、行方不明者の捜索などの場合、携帯電話のGPS機能を捜査に活用するケースも実際にあります。この場合、警察は裁判所から令状取っています。また、通信傍受といって、携帯電話の会話を傍受する際にも、警察は裁判所の令状を取っています。会話をこっそり聞く、本人に内緒でこっそり聞く、本人に内緒で居場所を携帯電話から割り出す行為は、裁判所の令状を取っているわけです。

「携帯電話のGPS機能を使った捜査」と「GPS捜査」の違い

「携帯電話のGPS機能を使った捜査」の場合、警察は令状をもらっています。そう考えると『「GPS捜査」も令状が必要なんじゃない?』という疑問が湧きます。

そこで、知り合いの検事に見解を伺ったところ『「携帯電話のGPS機能を使った捜査」の時の令状は「GPS捜査」に対する令状ではなく、携帯電話会社に対しての令状だから、携帯電話会社が管理しているものをいただくことの令状だ』と。
要するに『本人じゃなくて、携帯電話会社に対する令状だから(GPS捜査とは)位置付けが違う』と。

ただし、位置付けは違っても用途・目的は一緒です。

それにも関わらず、本人の携帯GPSの利用と通信傍受は令状を取って、そうではないGPS捜査では令状は不要という点には、非常に疑問を感じます。

千葉県警は令状を取らない「GPS捜査」を問題視

実は、GPS捜査に際して令状を取るべきか否か? これは捜査する側である警察でも、様々な考え方があるようです。

去年、千葉県警は、初めて検証令状を取ってGPS捜査を実施しています。『裁判所の令状があったほうがやりやすいな』と感じている証でしょう。

さらに、このケースでは捜査対象者に逮捕後、GPS捜査をした旨を通知をしています。

このような実例もあることから、来月の最高裁判決は、GPS捜査に令状が必要であり、逮捕後に通知も必要……といった流れを汲んだ判決、つまりは「立法措置が必要」であるという主旨の判決になると個人的には予想しております。

今後はきちんとしたルール作りが必要

GPS捜査に関する現在の問題点をあげると、以下の3点。

(1)仮にGPS捜査が許されなくなると、迅速な捜査ができなくなるという不安
(2)そもそも令状は、誰に対する令状なのか?
(3)GPS端末で行動を監視する当人への通知は事後でいいのか?

現状、通信傍受は、事後に本人に通知をします。それにならえば、事後でいいという考え方もあります。
一方でGPS端末を設置した時点で通知すべきだとすると、全く捜査になりません。

現代において、最新の技術を駆使すれば、行動の把握も容易になっています。なので、きちんとしたルール作りが必要ではないでしょうか。