「バイデン候補は中国に弱腰」

「中国が我々のランチを食べてしまうって? 冗談じゃない」

「ランチを食べられる」と言うのは「利益などを横取りされる」と言う意味で使われるが、来年の大統領選に民主党から出馬を表明したジョー・バイデン前副大統領はオハイオ州で開かれたメーデー集会で、この表現を用いて中国は脅威でもなんでもないと擁護する発言をした。

トランプ大統領の対中関税引き上げ問題については、野党民主党の上院の指導者チャック・シューマー議員が「大統領に賛成だ。頑張れ」とツィートしたり、下院の指導者のナンシー・ペロシ議長も「正しい判断だ」と語りこの問題に限っては党派を越えて中国に厳しい対応を示している中で、このバイデン前副大統領の中国寄り発言は異彩を放っていた。

「バイデンが中国に弱腰である困った理由」

こうした中で、こんな見出しの記事が11日のニューヨーク・ポスト紙電子版に掲載された。筆者は米政治家の腐敗を追及した「シークレット・エンパイア(秘密の帝国)」を著したピーター・シュワイツアー氏で、問題はバイデン前副大統領の二男のハンター・バイデン氏をめぐる疑惑にあるという。

バイデン候補二男と中国の怪しい関係

2013年12月 米中会談
2013年12月 米中会談
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シュワイツアー氏によると、ジョー・バイデン氏が現職の副大統領時代の2013年12 月に中国を公式訪問した際、ハンター氏も同行した。その後二週間もたたないうちに、ハンター氏が経営に関わるヘッジファンドのローズモント・セネカ・パートナーズ社に中国銀行から10億ドル(現在の為替換算で約1100億円)の出資金が振り込まれ、それは後に15億ドル(同約1650億円)に増額されたという。

この時バイデン副大統領は、中国が尖閣列島など東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設けると発表したことについて「絶対に認められない」と語っていたものの、習近平主席との会談では「深い懸念」を伝えるにとどまり(CNN)日本などの期待を裏切った。

それとハンター氏のヘッジファンドへの出資がどう関係するのかは不明だがそのタイミングは疑念を呼ぶのに十分で、トランプ大統領もFOXニュースとのインタビューで「捜査すべきか?」という質問に「100%すべきだ」と答えている。

2013年12月 習近平国家主席と握手する、バイデン・アメリカ副大統領(当時)
2013年12月 習近平国家主席と握手する、バイデン・アメリカ副大統領(当時)

ウクライナをめぐる問題でも浮上した疑惑

実はハンター氏には、中国とは別にウクライナとの問題で別の疑惑が浮上している。

これはニューヨーク・タイムズ紙などが伝えているもので、バイデン氏はやはり現職の副大統領時代の2016年3月にウクライナを訪問した際、同国の検事総長を罷免するよう要求。応じなければ10億ドルの借款保証を取り下げると強く求めた。
 ウクライナ議会は間もなく検事総長を罷免したが、それによって追及を免れることになった捜査対象にブリスマというエネルギー会社があった。副大統領の二男のハンター氏はそのブリスマ社の取締役として月5万ドル(約550万円)の報酬を得ていたという。

このウクライナをめぐる問題は、ハンター氏の関わりだけでなくその後のいわゆる「ロシア疑惑」にも関係する疑いが浮上しておりトランプ大統領の法律顧問を務めるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長がウクライナへ調査のために訪れると言われたが、民主党側の反対に会って断念するということにもなっている。

ジョー・バイデン民主党候補
ジョー・バイデン民主党候補

いずれにせよ、バイデン前副大統領はその知名度の高さから現在23人が名乗りを上げている民主党の大統領候補者の中で一頭地を抜く支持率を得ているが、今後こうしたハンター氏をめぐる疑惑が足を引っ張ることになるかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。