“スマート化”したアナログペン?

スマートウォッチにスマートスピーカーなどなど、多くの機能を兼ね備えた“スマート”なデバイスが増え続けている現在。
ユーザーたちもすっかり“デジタル”なものに慣れてしまっているだろうが、時代の波に乗り“スマート化”したこんなアイテムが登場した。

それが、株式会社キングジムが5月14日に発表した“スマートボールペン”「インフォ」だ。
 

 
 
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この「インフォ」は、アプリを通じてスマホと連動させることで、スマホに届いたプッシュ通知を表示してくれるデジタルデバイス。
スマホにメールや電話・Twitterなどの新着があると、「インフォ」本体に備え付けられた小型ディスプレイや通知用LED、バイブ機能が知らせてくれる。
 

 
 

さらに、ディスプレイ脇のタッチボタンでスマホの操作もでき、音楽の再生や音量の変更・カメラ撮影などが行える。

もちろん、“ボールペン型”というわけではなく、実際にペンとして使用することも可能。
真鍮製の本体の中には黒・赤2色の芯が入っており、市販の替え芯を使用することができる。
 

 
 

連動アプリ「Info+ App」は、iPhone・Android版ともに無料でダウンロードが可能。
本体の重さは約40グラムということで、卵1個分よりも軽いという、意外な軽さも魅力だ。


機能色々の「インフォ」は、持っているだけで“スパイ感”もあって目を引きそうではあるが、気になったのはズバリ「どんなシチュエーションで役に立つの?」という点だ。

「インフォ」のディスプレイで確認できるのは、基本的にスマホのプッシュ通知に表示される文章と同じもの。
例えば電話の着信通知なら発信者の名前、メールなら送信者とタイトルなど、日本語で30文字前後となっている。

「インフォ」単体では電話を受けたり、メール本文を全て読むことはできないため、スマホが近くにないと、ただ通知を受け取るだけになってしまうはず。
そしてすぐに電話に出られるような近さにスマホを置いておくとしたら、「インフォ」はどう活用すればいいのだろうか?

そして「アナログなペンはご無沙汰…」という人も少なくないだろう時代に、なぜあえて「ボールペン」を“スマート化”させてしまったのだろうか?
ラベルライター「テプラ」でもおなじみの、株式会社キングジムにお話を聞いてみた。
 

スマホが出せない場面で「取るべき着信を選べる」

――“スマートボールペン”開発のきっかけは?

会議や打ち合わせなどのビジネスシーンにおいて、スマートフォンが手元に置けない場面で、電話の着信やメール受信などを手軽に確認できるようにならないか……という開発者の実体験がきっかけになりました。
また、当社が提供できる新たなウェアラブルに近い端末は何か?ということから検討しました。


――通知を受けても「すぐに確認できない」というのは不便ではない?

「インフォ」とスマートフォンは、Bluetoothでの通信で、基本的に、本体であるスマートフォンが近くにある前提での運用になります。
その上で「バッグの中に入れているので気づかなかった」「打ち合わせ中で、すべての着信を取れるわけではなく、緊急のものだけ取りたい」など、着信を取るための判断をしなくてはならないタイミングはどなたにでもあると思われます。
とはいえ、スマートフォンを取り出して確認しづらいという環境も、現在だからこそ多くあり、その点、どのタイミングでも手に持っていておかしくない、ペンという形であるならば、いつでもその内容を確認して判断できるというメリットがあげられます。

 

通知画面で通知の緊急度を判断できる
通知画面で通知の緊急度を判断できる

キングジムによると、「インフォ」が活躍するのは「スマートフォンを持っていても、すぐに確認できない打合せシーン」など。

確かに、大事な会議の最中に机の上でスマホの通知がピカピカ、それを常にチラチラ…というのは少々失礼にも感じるし、そんな場面を経験をしたことがある人もいるだろう。
しかし、本当に緊急の着信があったとき、スマホをしまい込んでしまっていては一大事。
そんな時、「インフォ」で概要を確認できれば「これは後で返事をしよう」「これは今すぐ確認しなくては」と判断することができるのだ。
 

「ニッチな人たちの心に届く商品を!」

ビジネスシーンで浮かない“ボールペン型”であることで、常に身につけておける「インフォ」。
しかし、ボールペン自体をしまい込んでしまうような筆無精の人には“刺さらない”のではないだろうか?



――手書きはご無沙汰、という人も多いかと思いますが、なぜ“ボールペン型”に?

メモを手書きする機会はたしかに全体としては減っているかもしれません。しかし、文字を使って記録するということは、絶対になくならない文化です。
わざわざ文字を使ってメモをする人が減っているということは、別のとらえ方をすれば、どうしても「手書きにこだわる人たち=熱量のあるコアなユーザー」が際立って残っていくことを示しています。
弊社の製品はニッチな人たちの心に届く商品を戦略としていますので、この点では、手書きというこだわりの世界において、ボールペンというものには十分な可能性があると考えています。
 

45分の充電で最大12日の待機時間
45分の充電で最大12日の待機時間

実は、万人に“刺さる”デバイスを追求していないのが、キングジムの商品開発ポイント。
「万人がそこそこ欲しい」という製品ではなく、「一人が強く欲しいと思う」製品を開発しているということで、今回の「インフォ」も“ニッチでコア”なユーザーを狙ったものなのだ。


キングジムといえば、33万人以上のフォロワーを持ち、“中の人”とユーザーとの交流が盛んな公式Twitterアカウントも有名(5月21日現在)。
ユーザーを引きつける話題作りのうまいキングジムだが、ニッチなユーザー狙いの戦略も、コアなファンを集める理由になっているようだ。


実際に、SNS上ではすでに「欲しい!!」「気になる!」と、“刺さった”ユーザーからの声も挙がっている「インフォ」。
ちなみに、スマホの間が10m以上離れたり、人や物などの障害物を挟んでしまうとうまく機能しないことがあり、さらに「インフォ」本体をなくしてしまうとスマホの通知が第三者に見られてしまうことになるので注意が必要だ。

販売は6月14日から、気になる価格は12,000円(税別)。
現在、一部の販売店では予約を開始しているということで、“刺さった”人はぜひ実物を手に取ってみてはいかがだろうか。
 


 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。