「サードプレイス」という言葉をご存知でしょうか?「自宅」や「職場」とは隔離された心地の良い「第3の居場所」を指す言葉です。去年、フリーランスのライターとなった筆者も「自分らしくいられる場所」を探すひとり。

そこで、様々なイベントが紹介されているピーティックスに協力してもらい、自分にぴったりの居場所を探すことに。すると、神奈川県厚木市で、その名もまちのサードプレイスをみつけよう!」というワークショップがあると知り、どんなイベントなのか参加してきました。

ソトで楽しみを見つけよう!

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イベント会場は公園の中。移動図書館、里山の木々を使ったプランターや、革のクラフトショップなどが並び、数組の親子の姿が見えました。 

「まちのサードプレイスをみつけよう!」のワークショップがあったのはその一角。参加者は地元の人を含めた9人です。

「家(第一の場所)」、「職場(第二の場所)」とは異なる「サードプレイス(第三の場所)」は、気軽に集まって楽しめるオープンな空間でなければなりません。 

そのため、どこでもいいというわけではありません。(1)立場や年齢関係なく平等に人を受け入れ、(2)利用しやすくて行きやすく、(3)楽しめて、(4)精神的な心地よさを与えてくれる場所であることが、主な条件として一般的に挙げられます。

参加者の中には、すでにサードプレイスを持っている人もいました。例えばある人は、会社と家の中間地点にあるオープンスペースでした。時間が空くと、コーヒー片手に読書をしているそうです。

そんな「とびきり居心地のいい」場所を、家の外で見つけるのが今回の試みです。居心地の感じ方は人それぞれなので、世代や地域、文化によっても大きく異なるはず。正解がないので、どんな場所にでもつくることができるのです。

映画おじさんと、妄想女で見つけたサードプレイス

ワークショップでは、2人1組の4チームに分かれて、本厚木駅周辺を散策しました。今回は、厚木の地元人にとっても、サードプレイスとなりうる場所を見つけることが目的です。

サードプレイスを見つけるポイントは2つで、まずは居心地がいいと感じるかどうか。そして、その場所に人が集まる可能性を感じるかです。

私がパートナーを組んだ青山さんは、3年前に商業施設アミューあつぎ内に映画館を立ち上げた人。厚木の地理に詳しく、今回はじめて厚木を訪れた私には頼りになる存在です。

そして、サードプレイス探しを開始。まず当たりをつけたのが、人通りが多い一番街のメインストリートです。ここにマルシェや屋台を出したら、休日の憩いの場になるのでは? 候補地として早速、写真を撮影しました。

また、散策の途中、青山さんが「屋外シアターを開いてみたいんですよね」と夢を明かしてくれました。

映画配給会社に在籍していたこともあるそうで、映画への愛はひときわ。そこで屋外シアターができそうな、スクリーンとなる壁や鑑賞スペースなどを確保できる場所を一緒に探してみることに。すると、駅前にスルガ銀行を発見。 大きな外壁など、これなら屋外シアターに向いていそう。

「ここだ!」と第二候補に即決しました。

そして、私が厚木でいちばん気になったのが、量り売りの老舗駄菓子店・千石屋。地元の人で賑わう店の雰囲気と、ケースいっぱいに詰まった菓子に思わず一目惚れしてしまいました。

この場所では、ピタッと足が止まってしまい、頭の中に妄想が広がっていきます。何度も店内を覗いたり、駄菓子屋さんの魅力をつぶやいてみたり。妄想を話し続ける私に、青山さんも少し困り顔でした。

あれこれ考えを巡らせて出てきたのは「駄菓子BARならどうかな?」
大人は酒を飲みながら駄菓子をつまみ、子どもはバイキングで思いっきり駄菓子を味わえるのです。

駄菓子屋の周辺には、図書館やバスセンターにつながる道があります。この道沿いに露店の駄菓子BARをつくれば、通りに活気が生まれるかもしれません。

最後の駄菓子店で、時間を大きく割いてしまったため、ここでタイムアップ。写真を撮影してサードプレイスの候補地探しは終了となりました。

厚木の残念スポットも登場!まだまだあるサードプレイス候補地

そして、スタート地点の公園に戻り、各チームが見つけたサードプレイスを発表。個性豊かで、皆の目のつけどころが本当に面白い!

最初のプレゼンは厚木出身者がいるチーム。「厚木に似合う場所とは?」との視点から、地元でも人気な相模川の河川敷を紹介します。

次のチームが見つけたのは「厚木の残念スポット」!
例えば、バスターミナルの上にある公園です。ここは日当たりがいいのに、来訪者がゼロなんて日も。見つけにくい場所にあり、この周辺を私たちも歩きましたが、公園の存在には全く気付きませんでした。

もうひとつは、アミューあつぎから駅まで続く、雨避けの地下道です。ここはホラーやサスペンス映画のロケ地に使われるほど、少し不気味な感じがあるのだとか。確かに、利便性がありそうなだけに残念!

そして、最後のチームが紹介したスポットは、厚木神社。幹線道路から近いにも関わらず、木々が密集しているためとても静かな場所なのです。

なによりも重要なポイントは、手水舍にあるゆるーいクマのオブジェだとか。

厚木へのアツい想いを胸に

サードプレイス候補地が出揃ったところで、厚木市役所職員の山口さんが、厚木の街の今後について語ってくれました。

「まちづくりを模索したときに考えたのは、『厚木らしさってなんだろう?』ということ。地域の人にヒアリングをしてみたら、自然とコミュニティのふたつが見えてきたんです」

厚木市は、FLATPARKを通じて、このふたつをキーワードに居心地の良い場所、サードプレイスを模索しているようです。

例えばアミューあつぎは、行政と商業の施設が一体となっています。8階には子育て支援センターがあり、ひとつ上階のシアターでは、学童の子どもを招いて映画を上映しています。子どもたちにとって安心、安全なサードプレイスへと変わってきました。

また「行政が進めるのだけではなく、地域の人たちと協力しあうことで、ポジティブにやっていきたい」とも話しました。 

今回のワークショップを振り返ると、「初めての街を散策するのって面白い!」の一言に尽きます。

「サードプレイスを見つける」という意識で街を見渡すと、駅に降りた際に見た景色とは、また違ったものが見えてきました。

駐車場ひとつにしても、「ここなら野外映画館になるかもしれない」と立ち止まってしまいます。営業時間や人通りをチェックしたり、収容可能人数を想像したりと、思考回路は大忙し。

今回のワークショップでは素敵な出会いがありました。そしてこの人とのふれあいは、サードプレイスでも生まれるはず。でも、「人とのふれあい」は、イコール「人と会話する」ではありません。

その場に人が集まり、みんなで空間を共有するだけでも「ふれあい」になるのです。「話したことがないけれども顔見知り」という、ちょうど良い距離感の関係性なら気負いせずにつくれるかも。

ワークショップで身についた意識や考え方を、慣れ親しんだ街に向けてみたらどうなるのだろうか。見落としていた地元の街の魅力を再発掘できるかもしれませんね。

私も春の桜に誘われて、新しいサードプレイスを見つけにいってきます。


(執筆:小林有希)