日本11都市往復の無制限搭乗チケットがなんと29万9000ウォン(約2万8000円)!」
今月、韓国の格安航空会社(LCC)エアソウルが発売した破格の激安チケットだ。韓国の仁川(インチョン)空港から成田・大阪・福岡・沖縄・札幌・静岡・高松・広島・米子・富山・熊本の11都市を、何度でも自由に往復できるという。期間は6月1日から7月19日までの49日間だ。

エアソウルの担当者によると「発売初日(5月23日)に1000枚以上売れた」という。日本好きの韓国人の反応は熱い。 エアソウルは「日本旅行はKTX(韓国高速鉄道)やバスを利用する国内旅行より時間と費用の面でメリットがある」と語った。この激安チケットに販売数の制限は無く、エアソウルのホームページから会員登録することで購入出来る(韓国語のみ)。

エアソウルの激安チケットキャンペーン 日本と往復し放題で2万8000円
エアソウルの激安チケットキャンペーン 日本と往復し放題で2万8000円
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韓国人の日本旅行ブームは続く

いわゆる徴用工や慰安婦の問題など、政治的には日本と鋭い対立が続いている韓国。

一方民間では、ユニクロや無印良品など韓国内での日本商品が人気で、外食市場でも日本料理がブームになっている。そしてモノや食と同様に、韓国では日本旅行ブームもほぼ定着している。 私の周りの知人たちも、SNSに「日本旅行に行ってきた」と堂々と書き込み、有名観光地や日本を象徴する食べ物の写真を掲載することが多い。直接現地に行って日本の文化や食べ物を楽しもうとする韓国人の熱気は想像以上だ。

このような現象を見る限り、政治的対立で両国関係が悪くなる度に両国政府が口癖のように繰り返してきた「民間交流」は、表面的には問題なく行われているようだ。

今年1月に旅行比較検索サイト「Skyscanner」が発表した「2018年韓国人海外人気旅行先ランキング」によると、大阪が2017年に続き2年連続首位で、2位東京、3位バンコク、4位福岡だった。韓国人の人気旅行地の大部分を日本の都市が占めている形だ。 
韓国観光公社によれば2018年に日本を訪問した韓国人は753万人。韓国の総人口が5170万人なので、単純に計算すれば韓国民100人中15人が年に1回日本に行ったことになる。 中国への年間訪問客数が385万人(2017年)、アメリカが233万人(2017年)であることを考えれば圧倒的に多い。 日本人の韓国訪問客数の294万人(2018年)と比較しても2倍以上だ。

これだけ観光客が増えたのは最近の話だ。2013年は245万人だった日本訪問客は2014年に275万人、2015年400万人、2016年509万人、2017年714万人、2018年753万人で、5年で3倍に急増している。経済的に豊かになった事も背景としてはあるが、日本に対する関心が高まったためであろう。

「日本は治安が良くて観光インフラが整っている。旅行初心者も気楽に楽しめる所だ」
「地域ごとに特色のある多様な観光資源がある」

日本旅行者の体験談をインターネットで検索してみると、肯定的な意見がとても多い。 韓国人の日本旅行熱は、そう簡単に冷めないだろうと予想できる。一部からは「韓国からの日本訪問客1000万人時代は遠くない」という声が聞かれるほどだ。

地方に向かう韓国人観光客が地方創生の起爆剤に?

また航空会社の就航実績を見ると、日本ブームが多様化している事が良く分かる。
韓国の国土交通省は取材に対し「ここ数年間で韓国の航空会社の日本就航は東京・大阪などの主な都市だけでなく地方都市へ広がる傾向であり、その便数がどんどん増えている」と話した。韓国の航空会社8社の全てが日本路線を運航していて、現在は24都市70路線にものぼる。この24都市には、東京や大阪、福岡や札幌以外に、新潟、米子、宮崎、大分、佐賀などの地方都市も含まれている。韓国人の日本旅行者にはリピーターが多く、地方都市への注目が高くなっているのだ。韓国のテレビ局が地方都市を舞台とした旅番組を制作している影響もある。韓国の文化放送(MBC)は去年12月「猫の楽園」として知られる愛媛県の青島をお笑い芸人が訪問する番組を放送したのだが、その後韓国のネットコミュニティーでは「猫島訪問記」と題した青島の旅行記事が大幅に増えた。

富山や米子など地方都市を含む激安往復チケットを売り出したエアソウルは「大都市だけでなくまだ知られていない「隠された宝石」のような観光地が日本には多いから、このチャンスを活用して多様な日本文化を経験できるきっかけにしていただけたら良い」と話している。安倍首相は今年の施政方針演説で「観光立国によって、全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれました」と述べた。地方都市への韓国人観光客増加は地方創生に直結するので、今回の激安チケットは日本の地方都市にとっては朗報となるだろう。

【執筆:FNNソウル支局 裴誠准(ベ・ソンジュン)】

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裴誠准(ベ・ソンジュン)
裴誠准(ベ・ソンジュン)

2001年3月からフジテレビソウル支局勤務