皇族数の確保をめぐる国会での議論が大詰めを迎えています。

しかし、その陰で「棚上げ」状態が続いているテーマがあります。

それは、女性・女系天皇の是非です。

これまで女性天皇が存在する一方、なぜいま、皇位を継承できるのは、男系男子だけなのか。女性・女系天皇の是非については、正面から議論されないまま、先送りとなっています。

■わずか3人 皇位継承者の現実

日本の皇室は、これまで126代もの天皇によって続いてきたとされています。

明治時代以降、皇位を継承できるのは「男系男子」、つまり父方をたどると天皇の血筋を受け継ぐ男子のみとなりました。

天皇皇后両陛下の長女・愛子さまや、秋篠宮家の次女・佳子さまは皇位を継承することができません。

現在の皇位継承順位は、1位が秋篠宮さま(60)、2位が悠仁さま(19)、3位が上皇さまの弟で90歳の常陸宮さまと、わずか3人しかいない状況です。

この深刻な現実を受け、国会では皇族数の確保策として2つの案がとりまとめられました。

1つ目は、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案です。現行制度では、愛子さまはご結婚されれば皇室を離脱しますが、この案ではご結婚後も皇室に残ることになります。

2つ目が、旧宮家の男系男子を養子に迎える案です。1947年、昭和天皇のご兄弟である3つの宮家を残し、11の宮家が皇籍を離脱しました。この「旧宮家」の男系男子を現在の宮家の養子に迎え、皇族とするというものです。さらに、養子に迎えた人に男子が生まれれば皇位継承資格を認めるべきとの声も、自民党内に根強くあります。

皇族数の確保を議論する一方で、女性天皇の是非は依然として俎上に載せられていません。

■「基本的には先送り、棚上げ」名古屋大学の河西秀哉教授は指摘

象徴天皇制に詳しい名古屋大学の河西秀哉教授は、現在の議論の構造に懸念を示します。

【名古屋大学 河西秀哉教授】「皇位継承の問題をまったく議論していないということなんだと思うんですよね。基本的には先送り、棚上げっていう感じになっていると思います」

養子として迎えた人の子どもが男子であれば即位する可能性があるにもかかわらず、天皇の実の子どもであっても女性ならば皇位を継承できないという矛盾が生じています。

街の人からは「女性でもいいんじゃないですか、愛子さまでもいいんじゃないでしょうか」「時代的には、そんなこと言ってられない。女性首相だって生まれてるわけだし」といった声が聞かれました。

FNNが3月に行った世論調査でも、5割を超える人が皇位継承を男系男子に限ることに「反対」と回答しています。

河西教授は、象徴天皇のあり方は時代とともに変化してきたものだと指摘します。

【名古屋大学 河西秀哉教授】「明治は完全に男が上で女性が下だということがあった。ある種、今の皇室典範は過去の遺物がそのまま残っちゃっている。象徴天皇は基本的に時代とともに変化してきている。昔は奥さんがたくさんいたにもかかわらず一夫一婦制になるし、決められた結婚だったのが恋愛結婚になったりと、時代の変化に応じて様々変化してきている」

■これまでに8人の女性天皇が存在 史上初の女性天皇推古天皇とは

そもそも、日本の歴史を振り返ると、8人の女性天皇が存在しています。

なかでも史上初の女性天皇として知られるのが、推古天皇です。聖徳太子とともに日本を治めたことで知られ、先週、世界遺産登録される見通しとなった飛鳥の地で政治を行ったとされています。

天皇制の歴史に詳しい京都産業大学の久禮旦雄教授は、日本最古の大仏を作るよう命じたのも推古天皇だと言います。飛鳥寺で拝礼していた可能性が高いとされるこの大仏について、住職から「かなり推古天皇のお好みの顔である」という裏話も伝わっているといいます。

政治の場においても推古天皇は確かな足跡を残しています。

冠位十二階が定められ、十七条憲法が読み聞かせられたとされる「小墾田宮(おはりだのみや)」を拠点に、政治的経験と人望から即位したとされる推古天皇は、その後の日本の礎となる数々の改革を実行しました。

久禮教授は「女性だから劣っているとか、男性政治家の操り人形だというのはとんでもない話。日本の歴史を大きく変えた天皇」と言います。

■「愛子さまか、悠仁さまかみたいな人気投票を決めるような話ではない」明治天皇の玄孫でもある竹田恒泰さん

一方で、女性天皇を容認しない立場からの主張も根強くあります。

旧宮家出身で、明治天皇の玄孫でもある竹田恒泰さんは、「愛子さまか、悠仁さまかみたいな、そういう人気投票を決めるような話ではない」と明言します。

歴史的に女性天皇が存在したことは認めつつも、その意味は異なると竹田さんは説明します。

【竹田恒泰さん】「歴史上、女性天皇はいらしたんですけども、それはもう定められた男系の御子が育つのを待つ間に女性皇族が一時期皇位を担ったということなんですよね。皇位継承者がいなくなって女性天皇を立てたら、男系が終わってしまうわけですよ」

愛子さまについては「素晴らしい方ですし、チャーミングです。誰もから愛されている」としながらも、「そのかわいらしいとかチャーミングだとかいうことと、(皇位継承は)別問題なんです」と語ります。

■「一度も例外なく男系で受け継がれてきた」

竹田さんが重視するのは、天皇が「一度も例外なく男系で受け継がれてきた」という長い歴史の事実です。

【竹田恒泰さん】「もし男系の血筋を引かないものが天皇になったとしたら、歴史上初めてのことになるわけですね。そうすると、認める人と認めない人に分かれてしまう。そんな天皇がどうやって日本国の象徴、日本国民統合の象徴としての役割を果たしていけるんでしょうか」

自身も男系男子にあたる竹田さんは、皇族への復帰については「もし私が皇族になりたければ、黙っているのが一番得をするわけですよ。話せば話すだけ遠のいているわけですね」とはっきり否定しました。

その上で、“女性天皇”を容認する世論に対し、こう注文をつけました。

【竹田恒泰さん】「血筋を重んじてきたわけですね。人気投票しろっていうのは、皇室をなくせという意見と基本一緒。ちょっと冷静に見守っていただきたいと思います」

■「その時の首相の思いで決めていいのか」元AERA編集長

今回の皇室典範をめぐる議論がここまで急展開している背景には、政権側の強い意向があるとの指摘もあります。

自民党の萩生田光一幹事長代行は今年4月の取材に対し、「今は皇位継承者がいらっしゃるわけですから、ここで万が一例外を作ると、大混乱をするので、ここはそれで理解してもらいたい」と述べています。

元AERA編集長の浜田敬子氏は皇族当事者の気持ちや世論を置き去りにし「その時の首相の思いで決めていいのか」と述べました。

【浜田敬子氏】「この20年間、女性・女系天皇を認めてもいいのではないかという世論は非常に高まってきており、複数の世論調査では特に女性天皇について7割から9割が賛成しているというデータもあります」

しかし現在の議論は、「皇族数の確保」という数の問題に終始し、皇族当事者の気持ちや国民の世論が軽視されているのではないかという懸念を示しました。

【浜田敬子氏】「高市首相は男系男子天皇の強化をしたいという確固たる思いがある。そのときの一内閣、そのときの首相の気持ちや思いで決めていいのかというのは非常に感じるところですよね」

伝統の遵守か、時代に合わせた変革か。議論の大きな枠組みは変わりませんが、女性天皇の是非という本質的な問いは、いまだ正面から扱われていません。

日本の象徴をめぐる問いだからこそ、政治家や専門家だけではなく、広く国民が関心を持ち、冷静に見守り続けることが求められています。

(関西テレビ「newsランナー」 2026年6月9日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。