相次ぐ事故受け注目集まる免許返納

今年4月、東京・池袋で乗用車が暴走。31歳の母親と3歳の娘が巻き込まれ死亡した。運転していたのは87歳の男性だった。

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福岡では6月4日、一台の乗用車が次々と車に衝突した上猛スピードで交差点へ。運転していた81歳の男性とその妻が亡くなり7人がけがをした。6月6日には、名古屋で87歳の男性が運転する車が急発進し、多重事故を起こした。

相次ぐ事故を受けて注目が集まるのが免許返納。長野県内でも毎年増加している。

免許センターを訪れた90歳の男性。運転暦は50年余りになるが、この日免許を返納した。

90歳の男性:
不都合(不便)にはなるが、自分で決めたことだから、これから順応できるようにしたい

どのように決断したのか。この春、男性は30年ほど乗り続けてきた愛車が故障したため、軽乗用車への乗換えを家族に相談した。しかし…

男性の息子:
もういいのではと。ここで卒業していいのではと思った。新しい車になった時に乗りなれない車に乗るわけだから、(運転を)間違えやすいのではと心配があった

大型連休、帰省した長男も含めて開かれた家族会議で、高齢ドライバーの事故が相次いでいることを踏まえ、皆が自主返納を勧めた。

男性の息子:
事故に対する心配が一番。人を巻き込んでしまうとか、確率的には高いと思うので年齢的にも。それを考えれば返納したほうがいいと思った

90歳の男性:
(事故のニュースで)テレビに出てくる人の年齢が82とか83や80歳を超えたくらいの人で、私は90歳で、90歳ででかい顔して乗っていること自体が図々しいのではと自分に言い聞かせて、まだ出来そうだと思ったが、1つの機会だと考えてやめにしようと

免許証の代わりとして男性は運転経歴証明書の交付を受けた。作成費用に1100円かかるが、タクシーが1割引になるなど優遇措置がある。長野市ではバスなどに使える「お出かけパスポート」に1000円分のポイントが付与される。

90歳の男性:
これですっきりしました。免許が完全にないわけだから

これからは自転車生活。男性は返納にあわせて購入した電動アシスト付き自転車で通院や買い物に出かけることにしている。

90歳の男性:
これが(効果)てきめんで、(車が)離れて走ってくれて、安心して走れる

長野県内の運転免許の保有率は群馬、山梨に次ぐ全国3位の72%。山間部が多く車は生活の必需品だ。しかし、相次ぐ事故や優遇措置を充実させる自治体も増えたこともあり、免許の自主返納は年々増加。去年は5年前の3倍以上となる7200人余りにのぼった。

「過信運転」をチェック

その自主返納を「見極める場」となっているのが70歳以上の免許更新時に義務付けられている高齢者講習だ。この日、長野市の教習所では83歳までの6人が受講した。

83歳の女性:
運転免許はないと困る。スーパーが遠いから。返納はもう1回は取りたいね。86歳で免許返納を考える

80歳の男性:
百姓をやっていれば野菜も取れなければ運びようもない

講義の後は実際に車を運転。教官からアドバイスを受ける。
高齢者の運転でよくあるミスがウインカーの出し忘れ。77歳の男性も左右の確認に気を取られ、ウインカーを出し忘れた。

77歳の男性:
ちょっと焦ってしまって

判断力の低下による操作ミスや視力の低下に伴う信号機を見落しなど、講習で運転技術を見つめ直す。
この日の最年長は83歳の女性。普段と同じようにマニュアル車を乗ったが、いきなりエンスト…

教官:
大丈夫ですよ。ミラーに頼らず自分の目で見ていきましょう。視野の欠損は安全確認でカバーします

その後は順調だったが、交差点を左折する時だった。

教官:
ブレーキを。今停まりましたか?

83歳の女性:
停まった

教官:
いや停まったつもり

交差点には「一時停止」の標識。女性も気付いたようだが…

教官:
停まったつもりは自己満足になってしまうので、出会い頭の事故を防止するためにもタイヤの回転を止めて下さい

講習では「自己流の運転」や自信や油断から生まれる「過信運転」をチェックする。

83歳女性:
停まったつもり…でもないか。今度からはちゃんと停まりますよ

ドリームモータースクール昭和 藤沢亨さん:
一時停止を完全に止まらないとか、車線変更は目視の確認をしないという人が多い。判断力低下と、運転行動の癖が身についてしまっている。その危険性に気付いてもらって、安全運転に繋げて欲しい

運転技術のほか、長野県警は返納を検討する項目として車に覚えのない傷が増える、慣れた道で迷うなどの認知症が疑われるケースを挙げていて、本人や家族が不安を感じた場合は、医師にも相談し、自主返納を考えて欲しいとしている。

長野県警東北信運転免許課・宮本忠義次長:
高齢者のドライバーによる悲惨な交通事故の報道があり、返納の数は増えている。返納せずに運転を続けたいと考える人も大勢いると思うが、家族と話し合って自主返納を決断する必要があると思う

「利便性」より「安全」優先。
事故を受けてそう判断するお年寄りが長野県内でも確実に増えている。

返納は長野県内3箇所の免許センターで受け付けいて、月に2日ほど、日曜窓口も設けている。

(長野放送)

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