高齢ドライバーの限定免許制度を検討

近頃、高齢ドライバーによる交通事故が相次いでニュースになっている。

社会問題にもなっている状況を受け、政府は自動ブレーキなどの安全機能がついた車のみ運転することができる高齢ドライバー専用の限定免許制度の創設を目指している。
新たな限定免許の対象者は、75歳以上が想定されているが、6月下旬に閣議決定する成長戦略に盛り込まれ、細かな条件などについては、関係省庁が検討を行い、2019年度中に方向性を出すとしている。

また、11日に東京都は、アクセルとブレーキの踏み間違いを防止する装置などを新たに付ける高齢者に対し、その費用を9割補助する方針を明らかにした。


様々な対策が検討される中、注目されているのが「後付けできる運転サポート装置」。
自動車大手のトヨタは5月29日に、後付けできる「踏み間違い加速抑制システム」の対象車種を拡大すると発表した。

これまで対応車種は「プリウス」「アクア」「プリウスα」「プレミオ」「アリオン」の5車種だったが、6月3日に「ポルテ」「スペイド」「ウィッシュ」の3車種に設定を拡大、さらに10月に「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」「パッソ」、12月に「ヴィッツ」と全12車種に設定を拡大するという。

高齢ドライバーの事故要因は操作ミスが最も多い

詳しい説明の前に、まずは、高齢者ドライバーの事故の現状をみてみると、警察庁交通局が今年2月に発表した資料によれば、免許を持っている人10万人当たりの死亡事故件数はあらゆる年齢で減少傾向にある。
しかし、年齢層別で見ると、免許人口10万人当たりの死亡事故件数は、75歳未満が平均3.7であるのに対し75歳以上は平均7.7。
85歳以上では14.6件と、事故が起きる割合は高齢者のほうがより高いことがわかる。

出典:警察庁交通局
出典:警察庁交通局
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また、75歳以上の高齢ドライバーによる事故の人的要因はハンドルやブレーキなどの操作ミスが最も多い
さらに「ブレーキとアクセルの踏み間違い」は、75歳未満だと全体の0.8%だが、75歳以上では6.2%になっている。

出典:警察庁交通局
出典:警察庁交通局

「後付け」できるトヨタ純正の運転サポートシステム

こうした操作ミスを防ぐための、トヨタの「踏み間違い加速抑制システム」は去年12月5日から発売されていた。

出典:トヨタ(以降すべて)
出典:トヨタ(以降すべて)

仕組みとしては、車両の前後に超音波センサー取り付け、前後約3m以内にある壁などの障害物を検知すると、まずはブザー音で注意する。
そのときブレーキと間違えてアクセルを強く踏み込んでしまうと、加速を抑制して衝突被害の軽減に貢献するという。
一方、バックするときは障害物が無い状況でも、時速約5km以上になったら加速を抑制する。

また、加速抑制が働いた状態でアクセルを約5秒以上踏み続けると、緩やかに加速するように前進後進ともになっているという。

ただ、このシステムは自動で停止するわけではない。
公式サイトでは「自動で停止する機能ではありません。」と赤枠付きで書かれ、さらに「必ずご自身でブレーキペダルを踏んで停止してください。」という注意書きもある。

価格は税込み5万5080円で取り付け費用は別途必要。
全国のトヨタ車両販売店を通じて発売している。

仕組みはわかったが、なぜ自動ブレーキではなく“加速抑制”なのか?そして、どうして5秒以上踏み込むとまた加速するのか?担当者に聞いてみた。

高齢者比率が高い車種に拡大

――そもそも後付けの踏み間違い加速抑制システムを発売した狙いは?

高齢ドライバーの方々の増加、また高齢の方が駐車場などでのペダル踏み間違い事故を起こしやすい傾向があるとの認識から発売させていただいております。
また、お客様からの安全装備に対する関心の高さなどを受け、保有車に向けた本商品の企画・開発を行いました。


――対応車種を拡大した狙いは?

保有台数が多く、高齢者比率も高い、車種・年式を対象として計画的に設定車種を拡大しております。
システムへの認知拡大、車種拡大をお待ちいただいているお客様もいらっしゃるとの考えから、今後の計画も含め公表させていただきました。


――どのぐらい売れているの?

販売実績は2019 年 4月末時点で 1,660 台です。


――どんな人に売れている?購入者の反応は?

高齢ドライバーの方や運転に不安のある若い方用に、ご家族の方がご購入いただいている例もあるとお聞きしています。
また販売店にお礼の声をいただいた例など聞いております。

自動ブレーキではないから低価格

――取り付けにはどのぐらい時間がかかるの?

申し訳ありませんが、販売店の状況によるため一概にお答えすることができません。
取付時間は 3~4 時間で、基本的には当日お受け取りいただけることを目指しております。


――アクセルを踏んでも加速しないと、逆にびっくりするのでは?

加速抑制の制御中に「アクセルを離してください」の表示とブザーでお知らせし、戸惑いを軽減するように配慮しています。

――後付けではない、トヨタ車についている「自動ブレーキ」とはどう違うの?

新車で展開しているインテリジェントクリアランスソナーは障害物との衝突の可能性がある時にはブレーキ制御を行いますが、本商品にブレーキ制御機能はありません。


――後付けのシステムはなぜ自動でブレーキ制御をしてくれないの?

ブレーキ制御は、車両信頼性確保など、大幅な改造が必要となり、価格等お客様に負担をかけてしまうことになるため、より多くのお客様に選んでいただけるよう後付けのシステムは加速抑制とさせていただきました。


アクセルを約5秒以上踏むと緩く加速するワケ

――「アクセルを約5秒以上踏み続けると緩く加速する」のはなぜ?

万一、踏切り内で加速抑制してしまい、踏み続けて脱出しようとしているシーンを想定しております。
加速の際には表示とブザーでお知らせします。


――「後付けの踏み間違い加速抑制システム」は今後どうなる?

車種展開については、お客様のご要望をお聞きしながら検討していきます。
商品に関してもお客様のご要望をお聞きしながら検討してまいります。

交通事故ゼロに向けて、安全技術搭載車の普及拡大に一層努めていくとともに、ドライバーの方向けの運転講座、インフラ整備など、業界、国と自治体と連携させていただき、何ができるかを考えてまいります。



生活環境などもあり、単純に免許返上すればいいというわけではないのが高齢者ドライバー問題の難しいところでもある。
ただ、取り返しのつかない事故を少しでも減らすために、「踏み間違い加速抑制システム」は価格面での負担も考えて作られているということで、選択肢のひとつとして検討してもいいのではないだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。