8月28日、九州北部を襲った記録的な豪雨。

“数十年に1度の災害”の恐れがあるとして、福岡・佐賀・長崎の3県に大雨特別警報が発令され、気象庁の梶原靖司予報課長は、「直ちに命を守るために最善を尽くす必要のある、警戒レベル5に相当します」と呼びかけた。

今回の雨の原因は、台風11号だった低気圧がもたらした温かく湿った空気と、秋雨前線に向かう空気がぶつかったことで発生した「線状降水帯」だ。

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気象レーダーには赤や黄色の激しい雨を示す雲が、九州北部に連続してかかり続けていた。

大雨はどれほどの猛威をふるったのか?一夜明け、被害の全容が見えてきた。

街を覆った濁流 取り残された家族をヘリで救助

特に大きな浸水被害を受けたのが、佐賀県武雄市だ。

ヘリコプターからの記者リポート:
途中で道路が水没していて、先がまったくわからない状況になっています。

武雄市では、山林地帯を除いたエリアの実に4割が浸水。街は一面、湖と化し、午前6時半ごろも人影はほとんどなかった。

市の中心部を走る国道34号線も完全に水没し、午前9時過ぎには車が屋根の下まで泥水にのまれていた。

さらに、広大な畑が広がるエリアも冠水し、午前6時頃には住宅に濁流が迫っていた。

午後1時すぎの武雄市の上空からの様子は…

テレビ西日本 阿江保智アナウンサー:
住宅街のところに置かれている車。完全に埋まっていて、かろうじて屋根の部分だけが見えています。

テレビ西日本 阿江保智アナウンサー:
信号機は色もついていません。救助隊員の中には、完全に肩まで水に浸かっている人もいます。

アパートの駐車場に止まる車はフロントガラスまで浸水。ぎりぎりの状況で、ボートを使って住民を救出していた。

救助された人:
相当降ってましたね。気付いたのは朝方4時くらい。そのころには水位も上がって、なかなか車の運転もできない。

そして午後3時すぎ、県道が冠水して車に取り残された家族の救助の一部始終をカメラがとらえていた。

ーーどこに行きたいのですか?

男性:

佐賀空港です。

泣き叫ぶ1歳の我が子を抱えた父親は救助隊に子供を託し、救助隊員は懸命に走り、ヘリまで向かった。

テレビ熊本 熊本竜太アナウンサー:
隊員がヘリで救助を開始します。これから佐賀空港まで避難するということです。

浸水した街ではこうした自衛隊員らによる懸命な救助活動が行われたが、車ごと濁流にのまれるなどして3人が死亡。一時、87万人に避難指示が出された。

住宅に迫る「油」10万リットルが流出

さらに、猛烈な雨は鉄道も寸断。JR佐世保線の北方駅では、線路が泥水に覆われて見えなくなっていた。

市内を流れる六角川が氾濫したため、蛇行する川の周りに水が溢れ、自動車学校では車への被害を防ぐため、教習コースの坂道などの部分に車を密集させていた。

また、武雄市の隣に位置する大町町では、佐賀鉄工所から約11万リットルの油が流出。
工場から濁流によって流され、近くの順天堂病院にまで達していた。

この油は近くの住宅にも押し寄せ、家の中が真っ黒に。

住民:
やばい、家の周り黒…めっちゃガソリン臭いんだけど。

道路に魚、車置き去り…街中が混乱

佐賀市では1時間の降水量が110ミリを観測し、観測史上1位の値を更新した。

サガテレビ 川野優也アナウンサー:

午前7時半ごろの佐賀市内は道路の至るところで冠水しています。乗用車がハザードランプを点けて止まっています。その横では、タクシーも動けなくなっています。

普段見慣れた街の様子も一変。駅近くの百貨店の前も一面、冠水していた。

別の道路では、交差点の真ん中を金色のコイが悠然と泳ぐ姿が目撃され、近くの佐賀城のお堀から流されてきたとみられている。
福岡県久留米市でも、道を歩いていた視聴者が突然、魚に遭遇。ライギョの仲間のカムルチーとみられている。

佐賀県小城市では、牛津川が氾濫し、伊万里市でも松浦川が氾濫するなど、被害が拡大。
浸水した佐賀市内の住宅では、ポンプを使って水を汲みだしていた。

さらに、佐賀県吉野ヶ里町のファーストフード店には、「本日は大雨の為、臨時休業致します」と張り紙がされていた。

この豪雨の影響で、多くの店が臨時休業。床上まで浸水した福岡県久留米市の美容院を訪ねると…

美容院の店員:
あーあ、ショックショック。シャンプーの機械が使えなくなるのが怖い。モーターが下にあるからね。

長崎県平戸市では、降り始めからの降水量が、平年8月のひと月ぶんの2倍以上となる500ミリを超えた。

佐賀県武雄市の冠水した道路でで目立ったのは、立ち往生する車だ。今回亡くなった3人のうち2人は、いずれも車から脱出することができなかったとみられている。

これは、2008年にめざましテレビで放送した冠水した車の検証実験の様子。車が水に浸かった状態で、ドアを開けて脱出を試みるが…

リポーター:
ちょっと開けてみます。もう全く開きません!

水圧の影響で、ドアを開くことはほぼ不可能。さらに窓も作動しなくなり、携帯ハンマーで後方の窓ガラスを割って、ようやく脱出できた。

新たな災害の恐れ 十分な警戒を

不安定な空の影響は、九州以外でもみられた。

東海林香南リポーター:
突風の影響で、屋根と建物の壁が飛ばされています。

静岡県三島市で吹いた激しい突風。竜巻の可能性があるという。

この突風で、室内にいた30代の女性が割れたガラスを踏むなど、2人が軽傷を負った。
今後も引き続き、激しい雨への警戒が必要です。

(「めざましテレビ」8月29日放送分より)