新入社員の本音がにじむ調査結果

新年度を迎えてから3か月、社会人の先輩たちにとって、価値観の異なるであろう新入社員たちとどう接していくか大きな課題となってはいないだろうか。

売り手市場といわれる中、やっとの思いで採用した新入社員が会社に来なくなってしまった、すぐに辞めてしまった…さらにワークライフバランスという言葉も普及し、パワハラにも注意が必要な昨今、この問題に頭を抱える企業もまた多いはず。

こうした中、マイナビが13日に発表した「2019年新入社員1カ月後の意識調査」が、今どきの若者の本音を伝えている。これは、新卒入社した22~23歳の男女800人を対象として、入社1カ月後のタイミングで、自身の会社に対してどのような意識を持っているか調査したものだ。

まず、最初の問いに対する、新入社員たちの回答を見ていただきたい。

定年まで働く意向を持った新社会人は1/4にも満たない(マイナビ「2019年新入社員1カ月後の意識調査」より抜粋)
定年まで働く意向を持った新社会人は1/4にも満たない(マイナビ「2019年新入社員1カ月後の意識調査」より抜粋)
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「あなたは、今の会社で何年ぐらい働くと思いますか?」という質問に対し、なんと「3年以内」が22.2%となり、「定年まで」の21.8%に拮抗する結果となった。さらに前者の内訳をみると、「1年未満」と「1年ぐらい」だけで実に6.4%に及ぶ。

そして、「4年~5年ぐらい」の14.9%と合わせると37.1%に達し、実に4割近くの新入社員が現在の会社を5年以内で退職する意向を持っているようだ。調査結果を見る限り、終身雇用が変わりつつある現実とともに「定年まで今の会社」という意識も薄れてきているようだ。

そうなると、企業側として気になるのが、退職したいと考える理由だろう。

「色々な会社で経験を積んでいきたいから」の回答も続く(マイナビ「2019年新入社員1カ月後の意識調査」より抜粋)
「色々な会社で経験を積んでいきたいから」の回答も続く(マイナビ「2019年新入社員1カ月後の意識調査」より抜粋)

「今の会社で、ずっと(長く)働きたいと思わない理由を教えてください」という質問には、「ライフスステージに合わせて働き方を変えたいから」が44.4%、「転職でキャリアアップしたいから」が29.7%となった。(374人が回答)
どうやら今の新入社員は、自身の志向に合わせてキャリアを構築していく考えが主流のようだ。

「就活をやり直したい」が半数超え…

さらに、就活やり直しについても驚きの調査結果が。
「もしも、もう一度、就活時代に戻れるならば、就活をやりなおしたいと思いますか?」の質問に、「就職をやり直したい」という新入社員は約53%と、全体の過半数を占めるに至っている。繰り返すが入社後1か月での意識調査だ。
そして意外なことにこの傾向は、入社後の会社のイメージが「変わらない」とする人に特に顕著だ。

就活をやり直したい、とする意向を持った者は過半数を超えた(マイナビ「2019年新入社員1カ月後の意識調査」より抜粋)
就活をやり直したい、とする意向を持った者は過半数を超えた(マイナビ「2019年新入社員1カ月後の意識調査」より抜粋)

今の新入社員たちは会社をどのように捉えているのか。そして上司や先輩たちは、そこまで長く居続けるつもりのない彼らとどう接していくべきなのか。マイナビの担当者に話を聞いた。

仕事の厳しさを知ったことも影響している

ーーまず調査を終えての感想は?

調査時期が入社1カ月後で、ちょうどリアリティショックを受けている時期であるため、ある程度転職意欲が高く出たなと感じています。大学生が社会に出て、仕事の厳しさや現実を知ったことが反映された数値だと考えています。

また、別の調査でも、若年層のほうが転職を前向きにとらえる傾向が出ていましたので、キャリアアップやライフスタイルの変化に合わせ職場や環境を変えることに、柔軟な考えを持っていることが改めてわかりました。

20代は「転職は前向きな行動」に「そう思う」と答える割合が大きい(2019年4月の「マイナビ転職動向調査」より抜粋)
20代は「転職は前向きな行動」に「そう思う」と答える割合が大きい(2019年4月の「マイナビ転職動向調査」より抜粋)

ーー「3年以内に辞めたい」「定年まで働きたい」という回答が拮抗した。両者に会社規模や年収などの違いはみられる?

本調査では、特に目立った違いは見られませんでした。

ーー新入社員の多くは「今の会社を辞める」よりも、 「会社のほうを変えていこう」という発想にはなりにくい?

若年層の傾向として、会社への帰属意識よりも、自身のライフスタイル、プライベートを重視する傾向にあります。そのため、「会社のほうを変えていこう」という発想にはなりにくいのではないかと推察します。

ーー就活やり直しの意向を持つ層が目立っている。要因は?

冒頭に述べたようなリアリティショックによるものだと思います。会社の印象とは関係なく、自身の未熟さを知ったり、仕事の厳しさを知ったことも影響していると考えています。

ーーやり直しの意向の強さには、現在の売り手市場も影響している?

今年の新社会人は、就活時に「売り手市場」を体感しているため、意向に反映されている可能性はあるかと思います。

変化への細やかなフォローが必要

ーー今の新社会人はどのような生き方や働き方を目指す傾向にある?

男性でも女性でも、ライフステージが変わっても働き続けるために、生き方と働き方をリンクさせながら、柔軟に働く環境や仕事のスタイルを選んでいきたいと考える人が多い傾向にあるようです。

ーー来年以降の新社会人も同じような傾向が続く?

ひとつの会社・働き方に固執することなく、さまざまな選択肢の中から、自分のキャリアを考えていくのではないでしょうか。ワークライフバランスを重要視する傾向も続くと思います。

ーー先輩や上司は新入社員とどのように関わるべき?

「対人関係に悩みがある」とした新社会人も多く、彼らが相談しやすい環境を整えることは重要で、実際にメンター制を取り入れている企業もあります。また、若年層がワークライフバランスを重視する傾向にあることから、生活環境の変化などにも細やかにフォローできることが、企業として求められてくるのではないでしょうか。

また、入社したての新入社員は、社会人としての能力やスキル不足を実感し、自信を無くしているタイミングです。先輩社員や周りとしては、まだ未熟であることを受け入れ、肯定し、相談しやすい空気感を作っていくことが大事かと思われます。

こういった意識調査の結果はでたが、まだ1か月でその会社のことを理解する前というポジティブな見方もできる。
上司や先輩は、時代とともに“仕事観”が変化していることを受け止めつつ、彼らと接していくことが大事だろう。新入社員など若手を育てていくことが会社の未来につながることは確かだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。