6人が犠牲となり、5万5000軒以上の住宅が被害を受けた大阪北部地震から、6月18日で1年が経過した。
地震の教訓から、被災地はどう変わったのだろうか?

進むブロック塀の撤去

1年前の地震で、小学校のブロック塀が倒壊し、9歳の女の子が亡くなった高槻市の小学校。
6月18日に、地震の発生時刻には追悼式が行われた。

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いま、被災地では地震を受けブロック塀の撤去が進んでいる。
高槻市の寿永小学校では、崩れたブロック塀がすべてフェンスに変わった。ブロック塀で目隠しをしていたプールも、移転工事が進められてる。

高槻市では、この1年で小学校などあわせて108の公共の施設で高さ120 ㎝以上のブロック塀を撤去した。
それ以下のブロック塀についても、この夏から、順次撤去を進めていく予定だ。

子供の通学路にブロック塀があったという保護者に話を聞くと…

保護者:
もし同じように崩れていたらどうなったのだろうと思うし…やはり安心しましたね…。

一方、民間のブロック塀はどうなったのだろうか?

大阪市東淀川区では、80歳の男性が、地震で崩れた住宅のブロック塀の下敷きになり死亡した。
6月12日に取材すると、ブロック塀が崩れた住宅は取り壊され更地に―。

また、子供たちの通学路沿いにある住宅は、ブロック塀が撤去され、金属製のフェンスに変わっていた。

通学路の見守りをしている男性:
ちょっとヒビが入っていたから、通学路で今後、怖いって… この家は率先してやってくれた。

大阪府によると、2019年3月までの時点で、自治体の補助制度を利用してブロック塀を撤去した家は、大阪市や北摂地域を中心に府内に1781軒。

1年が経ちブロック塀の撤去が広がりをみせる一方で、被災地では今もまだ、多くの人が苦しんでいる。

”応急処置”のブルーシートが…今も。

街の中を、地図を見ながら歩いていく人たちがいた。
地震の直後から、茨木市で活動を続けるボランティア団体のメンバーだ。
彼らの被害調査に同行すると青いシートがかかったままの家が至る所に残っていた。

ボランティア・佐々木夏美さん(21):
まだまだ自分たちボランティアの手が届いていないところ、住人さんが声をあげられていない場所が多いと感じながら回りました。

地震による大阪府の住宅被害は全壊20軒、半壊440軒。そして、一部損壊は約5万5000軒にのぼる。現状どれくらいの家がシートのままなのか、自治体も把握していないという。

シートは、雨漏りを防ぐための「応急処置」のはずですが、なぜ今も残ったままなのだろうか?
この家では2018年の11月に屋根を修理する予定だったが業者の手が回らず、作業が延期になっているという。

被災した女性(70):
(延期になった後)再度、いつですかって聞いたら、(今年の)11月って言われて…。こんなにかかると思ってなかった。
茨木市の被災者・谷本昭さん(71)は、ボランティアに頼んでシートを張ってもらった。

被災した谷本昭さん(71):
だいぶシミが広がってきているんですけど、ほっといたらもっと広がって垂れてくる。バケツおいたり、シートひいたり…。ボランティアにきてもらっていなければ、もっとひどいことになっている

ボランティア団体には、地震から1年が経った今も、「シートを張って欲しい」という依頼が絶えないという

レスキューアシスト 中島武志代表:
いままで920軒ほどのお家のブルーシートはりをやらせてもらった。
まだまだこれからも。月に40から50は依頼が来ている。

熊本地震などの被災者支援を行い、1年前から茨木市を拠点に大阪北部地震の支援を続けるボランティア団体「レスキューアシスト」。現在は、約20人で活動している。代表をつとめる中島武志さんは、今後、雨漏りが続いている家の住人の生活は、さらに厳しいものになってくると話す。

レスキューアシスト 中島武志代表:
一番心配なのは、健康被害。雨漏りによって、天井裏に“かび”が生える。それで、呼吸困難になったり、せきが止まらなくなって、どんどん体が弱っていくという心配が一つ。もうひとつは家がどんどん弱くなり天井が崩れ落ちたり柱が腐って家が弱くなって、次に地震がきたときに家が耐えられない状態になる可能性が高い。

不安でも、我慢するしかない被災者

6月9日。ボランティア団体のメンバーが訪ねたのは、茨木市に住む安田一郎さん(71)の家。
梅雨が迫る中、ボランティアに助けを求めた。

安田さんの家は地震で壊れ、屋根のほぼ全てにシートがかかったままだ。
そのシートも劣化し、雨漏りが続いているため、張り替えが必要になった。

被災した安田一郎さん(71):
最初は自分で(シート張りを)やったんやけど、もう、この年なので…。ブルーシートは(劣化が)早い。3ヵ月ぐらいでダメになってくる。

家の中を見てみると…腐りかけた天井には「シミ」ができていた。ほとんど落ちかけ、バキッとわれそうな状況だ。家の中には壁にも大きなひびも入っている。

被災した安田一郎さん(71):
柱が揺れて、壁が落ちている。これで”一部損壊”です。瓦だけでも1000万円近くいるということで…。年金では無理ですね…

国の被災者の生活再建の制度では、「一部損壊」では補助は出ない。

中島さんたちボランティアが屋根にあがり、実際の状況を確認。この日は、夜から雨が降る予報。特に雨漏りがひどい部分だけに絞って、劣化したシートを張り替えることにした。

レスキューアシスト 中島武志代表:
今日は全部できないので、できるところだけやって、また後日も来るようにしますので。

安田さん:
すみませんな、年寄りは(屋根に)上がられへんねん。

一部だけの作業でも、7人がかりでかかった時間は約5時間半。作業が終わったころ、小雨が降りだした。

作業2日目。この日も全ての張り替えは終わらず、翌日にも作業を続けることにたった。
ただ、シートを張り替えた部分は、雨漏りがなくなったという。

安田さん:
(前日の)昼間の雨は大丈夫だったので、一安心してゆっくりと(できた)。ここまでしてもらえるとは思ってなかったから、ありがたく。うれしい。

ボランティア男性:
なんでもっと早く頼まなかった?

安田さん:
うちで我慢するだけしようか言うて…。

生活の不安を抱えながら、この1年を過ごしてきた安田さん。

梅雨前にひと安心とはいえ、本格的な作業はまだこれから…。また、修理の費用の都合がついたとしても、業者が回って来るのは、来年以降になりそうだ。

「レスキューアシスト」中島武志代表:
苦しんでいる人を一人でも残したくないという気持ちなんですよね、まだまだ本当にお家の中で苦しんでいる方がおられるということを、皆さんに知って欲しい。

安田さん宅のブルーシート張り替えは、6月17日も続きましたが、結局終わらず。後日にもう1日行ってやっと終わるという。

いわば「応急処置」の「応急処置」だけでも、それだけ、人手と時間がかかる作業になるのだ。

「ボランティアを支える」… 新たな仕組みを

NPOの代表によると、他の災害に比べ地震被害は「見えにくい災害」だと言う。自治体もブルーシートがかかった家の数を把握できていないので、ボランティア団体が町を歩いて、被害や被災者のニーズを調べる活動を繰り返しながら、苦しんでいる人たちを支援しようとしている。ただ、そのボランティアの数も、発災当初に比べて減ってきているのだ。

今回取材した「レスキューアシスト」では主に20人が活動しており、活動資金を今は赤い羽根募金や民間の企業からの支援を受けているというが…NPOの代表によると「資金に余裕はない」 。

そのため、全国各地から来てくれるボランティアの交通費や宿泊費を少しでも節約するため、ボランティアの拠点に寝泊まりしたり、食事をみんなで作って自炊したりして、なるべくお金を使わないで済むようにしているという。

1年経って、まだまだ復興というには遠い現状。行政では見つけられない被害を見つけ出して、それを支援していくという活動を民間のボランティアが担っている現状を考えると、今後も継続的にボランティアが活動を続けて行くためには、行政の支援も必要ではないだろうか。

一例として、兵庫県では、去年災害が相次いだことなどを受けて、災害ボランティアの交通費や宿泊費を助成する制度を今年から始めるべく制度設計中だ。ふるさと納税の寄付を財源にして、兵庫県内から被災地の支援に行く方や、県外から兵庫県に来る方で5人以上のグループを対象に、上限20万円を助成しようというものだ。同じ人が複数回ボランティアに行く場合はどうするかなど、詳細は検討中ですが、できるだけ早く始めたいとしている。

また、災害ボランティアの活動に携わる人を、臨時の職員にしてしまうというのも一つの方法ではないではないか。本来は行政の仕事を、民間が担っている、という考え方をすれば、臨時の職員になってもらって、ボランティアの活動を継続的にしてもらうという方法もあるのではないではないか。関西大学・河田惠昭特別任命教授によると、実際アメリカではそのような形でハリケーンなどの被災地の支援を行っているという。

(関西テレビ)