先祖の墓を撤去して、遺骨を寺に移したり海にまいたりして供養する「墓じまい」。その際に必要な「改葬届け」の件数は、高知市で2023年度は247件と過去最多で右肩上がりの一方、墓じまいができないというケースが出てきている。

当たり前がかなわない?納骨堂パンク

骨つぼを受け入れ永代供養する高知市の安楽寺では、少子高齢化や若者の県外移住などによる墓じまいの増加を背景に、この10~15年で永代供養の依頼が増え、納骨堂が手狭になってきているという。

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安楽寺・小角隆幸住職は、「対策をとらなければ10年以内に(納骨堂が)パンクする。(遺骨が)さまよえるということが出てくる」と懸念している。

高知市にも、「寺から納骨堂が手狭になり、遺骨の受け入れができないと言われた」という相談が相次いで寄せられているという。

寺にとっても納骨堂の増設には高いハードルがあると市の担当者は話す。

高知市環境保全課・神尾秀樹管理主幹:
寺としても納骨堂を建てる場所がない。高知市には平地がない。つくるとなれば山を削る。もしくは、使わなくなった空き地か農地。周辺住民にも理解をいただかなくてはいけない。なかなか大変

四国霊場第三十一番札所、高知市の五台山・竹林寺。
11年前に納骨堂をつくり永代供養の受け入れを始めたが、依頼は多い時で年間100件を超えた。次第に納骨室が手狭になり、3年前に受け入れを中断したという。

2024年秋から合祀(ごうし)墓の隣に新たな納骨室をつくり、2025年に受け入れを再開する予定だが、竹林寺・海老塚和秀住職は「将来やがては限度がくる」と話す。

竹林寺・海老塚和秀住職:
今までは墓へ行く、当たり前だったそれがかなわない時代になってきてしまう

新たな墓のあり方で気持ちが軽く

そんな中、新たな墓のあり方が注目されている。

高知市の法泉寺が管理する、城見ケ丘メモリアル霊園。5年前に遺骨を自然にかえす「樹木葬」を始めた。

法泉寺・町田大成事業部長:
さらしで遺骨をまいて埋める形をとる。最終的に土にかえるというのが樹木葬の形

当初、樹木葬として整備した640区画は3年で完売したため、2023年、隣の敷地に約800区画を増設。それでも、半年で4割近くが予約で埋まった。

樹木葬が増える一方で、一般的な墓を建てる人が減っているという。

法泉寺・町田大成事業部長:
これまでの墓は山の上にあることが多く、草刈りをしないといけない、水も持っていかないといけない。けっこう重労働。子どもに迷惑をかけたくない墓ということで、生前に準備をする方が増えている

法泉寺・町田大成事業部長は、樹木葬のメリットについて、「管理をする必要がない。(城見ケ丘メモリアル霊園の場合)宗派が不問。比較的、墓としては安価」だという。

実際、こちらの樹木葬は、家族複数人が入れる1区画が37万円。草刈りなどを代行する永代管理料が10万円で、合計47万円。一般的な墓を建てるより安いとされている。

また、高知では遺骨を海にまく「海洋散骨」が、都会では専門の建物に納骨する「マンション型のお墓」の需要が増加するなど、近年、墓じまいにともなう永代供養が多様化している。

「自分がどう葬られたいか決める」

少子高齢化や若者の県外流出で途絶えていく墓守。それが、ある問題となって墓にあらわれている。

高知市の「仁井田共同墓地」は、地域住民の山岡潔さん(74)と近藤久子さん(75)たちが長年管理しているが、この日、初めてやぶの中に隠れた墓の存在に気づいた。

墓守が途絶え長年放置された墓は、やがて「無縁仏」につながっていく。

山岡潔さん:
こういうのは、結局主のない放置墓地として公告を出して所有権を主張する人がいなければ、僕らが処分していく。処分には相応の費用がかかるので、利用希望者がいれば措置をとるが、そうでない限りは現状置いておく

自分たちの墓はどう守り残していくべきなのか。

竹林寺・海老塚和秀住職:
今までは、1つの形として「葬式をして墓へ葬られる」。それが困難な時代になってきた。いろんな祀(まつ)り方、葬られ方、納骨の形ができてきた。自分がどう葬られたいか、それを決めることが残った人生を自分らしく生きていく生き方につながっていく

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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