東日本大震災で被災した3県の今を伝える「明日への羅針盤」。5月10日は宮城からです。仙台市は津波で大きな被害を受けた沿岸部を「海手」と呼び、市営バスのルートを活用し新たなにぎわいを作り出そうとしています。

復興事業で大きく変貌した仙台市沿岸部。津波の記憶を伝える震災遺構や新しい商業施設が点在しています。東日本大震災で関連死を含め、924人が亡くなった仙台市。沿岸部のおよそ1200万平方メートルが災害危険区域に指定されました。いっときは離れた、海と人との距離。もう一度近くしようという取り組みが始まっています。

「せんだい3.11メモリアル交流館」で開かれているのは、沿岸部に向かう市営バスのルートを紹介する企画展です。沿岸部を「海手」と呼び、蒲生、荒浜、井土・二木など、全部で6つのルートを紹介しています。

せんだい3.11メモリアル交流館 皆上小冬さん
「震災で大きな被害を受けた地域ではあるが、新しいものも生まれつつ、昔から地域で愛されてきたものもたくさん残っている沿岸部に、ぜひ遊びに行ってもらいたい」

記者リポート
「私が選んだのは、井土・二木ルートです。仙台駅から乗車します」

仙台駅から井土浜まで、およそ40分のバスの旅です。

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「沿岸部に近づいてきました。車窓からの眺めも変わってきます。この辺りは震災被害があったところでしょうからこういう景色を見るのも感慨深いものがある」

海岸からおよそ1キロにある井土浜のバス停です。ここからは地図を片手に歩きます。この地区の一部は震災後、災害危険区域に指定されました。津波に備えて避難場所も整備されています。

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「人の営みがある目の前に津波の避難タワーがあったり、歩いてみないと気付かないことがたくさんあります」

震災前は100世帯ほどが暮らしていましたが、現在は10世帯ほど。風景は大きく変わりました。

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「あっここだ!」

地域で親しまれてきた薬師堂です。津波でお堂と鳥居が流失しましたが、同じ場所に再建されました。去年秋から、この地区に暮らし始めたという男性に出会いました。

去年 井土地区に移住
「いいところはやっぱり自然豊かな所ですかね?津波がきたので怖いところもあるが復興道路や避難タワーができたり、仙台市もかなりの対策をしているので、有事の際は手順に従って避難すれば問題ないかなと思っています」

井土からおよそ1キロ行くと二木地区に入ります。地区の鎮守として信仰を集める「日吉神社」は津波で本殿が大きな被害を受けました。境内には今も津波の痕跡が残されています。

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「東六郷小学校があった場所ですね」

この地域にあった小学校は校舎1階の天井付近まで浸水し、閉校となりました。跡地には今、広場が整備されています。

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「ここには池があります。池の中には復興のシンボルといわれるメダカがいます、いました~」

この地域だけに生息する野生種の「井土メダカ」です。津波で絶滅したとみられていましたが、研究用に飼育されていた「井土メダカ」が戻され、再びこの地域で命をつないでいます。

「海手」には注目のグルメもあります。去年12月にオープンしたクラムチャウダー専門店です。看板メニューは、具だくさんの「濃厚クラムチャウダー」パンの器に入ってボリュームも満点です。

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「いただきます!アサリが丸ごと入っています。アサリのうまみがしっかり利いています。濃厚です、おいしい」

Harry,sChowder 末永天店長
「ゆったりしている地域で近くの農園から野菜をとったりして、すごくいい雰囲気でできている。1つの観光地として、ここに来ようと目的地になるような場所になったらいい」

仙台市の市営バスのルートにはこのほか、「震災遺構荒浜小学校」や24時間バスケットボールが楽しめるコート、今年、海開きをする予定の深沼海水浴場なども含まれています。

海とのつながりをあらためて感じる「海手」のバス散歩。復興の今を知る一歩になるかもしれません。

仙台放送
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