悩みを抱えた人たちが相談に訪れる“話せる古本屋”、富山・高岡市伏木の「古本なるや」。能登半島地震で被災し約4カ月休業していたが、4月27日に同じ伏木の地で新たなスタートを切った。

テーマは「より頑張らない」

高岡市伏木駅の近くで6年間店を構えた「古本なるや」。店主の堀田晶さんは、「孤立をなくし、人とつながれる場所にしたい」と、店を訪れる様々な人の話に耳を傾け、「話せる古本屋」として親しまれてきた。

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しかし、元日の能登半島地震で店舗は被災し、取り壊しが決まった。あれから4カ月近くがたった4月下旬に、同じ伏木の地で店を再開することを決めた堀田さんの姿があった。

オープン3日前、酒店の倉庫として使われていた空き家には、本棚やテーブル、椅子などが運び込まれていた。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
壁に無理やり固定して、これ以上倒れないように

扱う本は旧店舗の3分の2ほどで、地震に備えて本棚を固定し、手元に残していたものや近所の人から買いとった本を並べた。

立派な看板に「露骨に看板負けしてるお店」と堀田さんは笑っていた
立派な看板に「露骨に看板負けしてるお店」と堀田さんは笑っていた

再開を聞きつけ、手書きの看板をプレゼントしてくれた友人もいる。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
すごくないですか?すごないけ?全然、そんな本並んでないのに、看板負けしてる。露骨に看板負けしてるお店。まあそれもよかろう

お店の2階に住んでいた堀田さんは、家と仕事を同時に失い、3月からこの空き家の2階で生活を始めている。被災後、堀田さんへの相談は途絶えていたが、4月に入り再びメッセージが入るようになったという。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
「死にたい死にたい」「しんどくなってきた」みたいな、4月って何なんだろうって本当に思う

「自分を頼ってくれる人がいる」…堀田さんが店の再開を決めた理由だ。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
7年目以降のテーマが「より頑張らない」。頑張ることによってしんどくなるぐらいなら、継続することが大切

「なるや」で生まれる新たなつながり

6年前、堀田さんが店を始めた日と同じ節目の日、4月27日。新しい「なるや」にはオープン前から仲間が訪れ、差し入れやお茶の振る舞いを企画してくれた。

2年前からの常連さんも
2年前からの常連さんも

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
お久しぶりです、いらっしゃいませ。ゆっくりしてってください

2年前から「なるや」に通う男性:
お邪魔します。そんな大きい声でしゃべる場所じゃないですよね。明るい雰囲気じゃない、暗い人が集まる所ですよね(笑)

2年ほど前から「なるや」に通う高岡市の男性は、仕事や親の介護、これまで興味のなかった音楽の話など、堀田さんとの他愛(たあい)もない会話が好きだという。

2年前から「なるや」に通う男性:
27日心待ちにしてた。(堀田さんの)人間性にほれてる。利益第一じゃない

再開を待ちわびた人が、次々と来店する。

高岡市の江畑美由紀さんは現役の看護師だ。1年前から月1回、健康や医療の相談を無料で受けつける「暮らしの保健室」をなるやで開いてきた。

看護師・江畑美由紀さん:
広くてうれしくなってきちゃった。だいぶ片付いたね。安心感がある。1人でやるのは心細いところもあるけど、堀田さんが後ろにいてくれるので、どんな人が来ても安心して相談にのれる環境にあるのが一番

初めて顔を合わせる人たちが言葉を交わし、また新たなつながりが生まれていく「なるや」。オープン初日に売れたのは、ジョン・レノンの詩集だった。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
多分無理だろうなって、前向きに考えられなかった状況から、また新しく場を設けることができた。やってきたことはなくならない。大切なものは残しつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい

7年目を迎えた「古本なるや」は多くの人に支えられ、再び歩み始めた。

なるやで開かれていた「暮らしの保健室」は、新店舗で5月19日、「リラックス」をテーマに参加費無料で再び開催される。

悩みを抱える人や被災した人たちの心を少しでもほぐしたいと、堀田さんは話している。

(富山テレビ)

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