ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、愛媛・新居浜市のバレエ教室に通う子どもたちが、日本に避難してきた現地のバレエダンサーと交流した。バレエを通じて平和について改めて考えた子どもたちに密着した。

ウクライナのダンサーと交流

新居浜市のバレエスタジオ「クララ」では、小学生から社会人まで約50人が日々、バレエのレッスンを続けている。

レッスン生の声を聞いてみると…。

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レッスン生:
バレエが大好きです。毎日楽しく仲間たちとやっています

レッスン生:
バレエは(動作)1つ1つ丁寧にやっていくところがすごく精密だと思います

そんな子どもたちが今、楽しみにしているイベントがある。

レッスン生:
プロの方にバレエを教えてもらうことです

レッスン生:
ウクライナのバレエ団の方のワークショップを受けさせてもらいます

戦火のウクライナから、兵庫県の淡路島に避難しているプロのバレエダンサーや講師との交流会が行われるのだ。

2022年2月24日に始まり、2023年10月現在も続くロシアによる軍事侵攻。多くのウクライナ国民が国外避難し、日本にも現在2,500人余りが避難してきている。

このうち、国立バレエ団のダンサーと講師の5人が淡路島に避難している。
元リビウ国立バレエ団のネリア・イワノワさん、スヴェトラーナ・シュリヒテルさん、ハリコフ芸術大学卒業のソフィア・シェイコさん、元キーウ国立バレエ学校講師のマルガリータ・ドシャコワさんとカテリーナ・エフチコーワさんの5人は、淡路島で観光施設を展開する総合人材サービス、パソナグループの支援でやってきた。

5人は島に移住を決め、世界的バレエダンサーの針山愛美さんが立ち上げた淡路ワールドバレエ(Awaji World Ballet)のダンサーや指導者として活動している。

Awaji World Ballet 芸術監督 バレエダンサー・針山愛美さん:
彼女たちの生きがいでもある芸術文化「バレエ」を通して、何か地域のためにも貢献して、(バレエ留学していた)子たちの指導をしていただく、歯車を回していくのが自分の役目かなと

バレエ教室がある新居浜市は、パソナグループと2023年5月に、芸術文化の振興強化などを目指し包括連携協定を結んでいる。

この取り組みの一つとして、ウクライナのダンサーと新居浜の子どもたちがバレエを通じて平和を考えるプロジェクトが企画されたのだ。

バレエスタジオ クララ・小林圭己代表:
今回お話をいただいた時に、ワークショップだけじゃなくて、みんなが世界の平和を学ぶ機会をいただいたので、みんなで考え直すきっかけになったらいいなと思い、参加することに決めました

“バレエ愛”込めたプレゼント

ウクライナのダンサーたちとの交流に向け、子どもたちは以前にも増して、真剣にレッスンに取り組んでいる。

レッスン生:
ジャンプをうまく飛べるコツを教えてもらいたいです

レッスン生:
回転をうまくできるコツを知りたいです

ある日、レッスンを終えた子どもたちがスタジオで何かを作り始めた。

「ウクライナのみんなが しあわせに たのしくくらせますように」

作っていたのは、ウクライナの希望のシンボル「ひまわり」のイラストに、ダンサーへのエールの言葉を添えたメッセージカード、そして平和を願う象徴の千羽鶴だ。ペンと指先に平和への願いを込める。

交流会まで1週間を切った8月18日。子どもたちは再び集まって何かを作っていた。

バレエ歴13年・宮部友莉菜さん:
ウクライナのシンボルがひまわりなので、ウクライナの平和を祈ってクッキーを先生に渡すことにしました

作っていたのは、ひまわりとウクライナ国旗のクッキーだ。そして、ハートのクッキーには土台にピンクの丸トウシューズを描き、甘いクッキーに「バレエ愛」を乗せた。

焼きあがったクッキーとメッセージカード、千羽鶴を合わせ、プレゼントは完成だ。

レッスン生:
きっと喜んでくれると思います

みんなをつないだ“平和への願い”

そして迎えた8月24日、子どもたちは一路、淡路島へ。

淡路ワールドバレエが公演を行う淡路市立アソンブレホールに到着した一行は、早速リハーサルを見学した。

続いては、楽しみにしていたマルガリータ先生によるワークショップ。体のポジションや手足の先まで、柔らかくメリハリの利いた動きを学んだ。

カテリーナ・エフチコーワさん:
きょうのワークショップで習った続きでパフォーマンスを見てもらうので、習ったことを感じて見てもらえると思います

ネリア・イワノワさん:
公演はとても長い期間準備したので、ちょっとでも感動を共感してもらえたらいいと思います

この日公演された「コッペリア」は、かわいいからくり人形を巡る青年フランツと婚約者スワニルダの結婚を、楽しくロマンティックに描いた作品だ。

ダンサーの美しく表情豊かな踊りに、子どもたちはすっかり魅了されたようだ。

そして、この日最後のイベントは、子どもたちからダンサーへエールを送るセレモニー。司会進行は、一緒にやって来た新居浜西高校の生徒たちだ。

新居浜西高校の生徒:
これより、新居浜市・パソナグループ共同開催による、パソナグループ ウクライナ支援プロジェクト 新居浜市交流会を開催します

子どもたちが花束を贈ったあと手づくりクッキーを手渡すと、ウクライナのダンサーたちはハグをしたり、涙ぐんでいた。

続いて、千羽鶴と平和への願いを記した寄せ書きも手渡し、最後のプレゼントは一生懸命練習したウクライナ語での「感謝の言葉」だった。

バレエスタジオ クララ・髙橋冬弦くん(7):
シチーロデャークュ(ありがとうございました)

マルガリータ・ドシャコワさん:
皆さんが手作りしたプレゼントがすごくうれしかったです

スヴェトラーナ・シュリヒテルさん:
戦争が一刻も早く終わって、ウクライナが元に戻って平和になってほしい

バレエがつないだダンサーと子どもたちの平和への願い。貴重な経験を励みに、子どもたちはきょうもレッスンと向き合う。

レッスン生:
もっと練習を積み重ねて、ウクライナの人みたいにうまくなりたいです

レッスン生:
たぶん心の中ではウクライナのことが心配だったけど、それを表に出さずに元気さを出して踊ってレッスンをしてくれました。戦争が終わったら故郷に気持ちよく帰れるようになってほしいです

ーー何が一番喜んでくれた?

レッスン生:
クッキーだと思います。私たちが心を込めて一生懸命作ったので、それが伝わったと思います

新居浜のバレエ教室から淡路島、そしてウクライナへ。平和を願う心が確かに届いたようだ。

(テレビ愛媛)

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