自民党の松川るい外交部会長代理は2日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、中国当局が3月に北京でアステラス製薬の男性社員を「スパイ活動に従事した」として身柄を拘束したことに関連し、日本にもスパイ防止法が必要だとの認識を示した。

松川氏は「反スパイ法は日本にも必要だ。今回はとんでもない邦人拘束事案だ。領事面接もできないのはありえない。即刻解放を求めたい」と強調した。その上で「スパイ防止法だけでなくていい。日本はG7(主要7か国)議長国だ。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に中国が入りたいと言っているけど、それをどうするかなどいろいろなカードがある。(外交上)あらゆるものを総動員して対処するということだ」と述べた。

番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)は「やられたらやりかえす!スパイ返しだ!」とし、「日本もスパイ防止法を持ち、国際社会で、スパイ防止法で(日本人が)拘束された場合にはやり返す。それで互いに交渉して相互解放する」と主張した。

立憲民主党の長妻昭政調会長は「起訴の前に手を打たないと長期の収容になりかねない。獄中で亡くなっている日本人もいる」と指摘し、この日、中国の秦剛外相との会談を予定していた林外相には「相当強い姿勢を示してもらいたい」と注文をつけた。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
日本の外相が約3年ぶりに中国を訪問する。林外相は2日、秦剛外相と会談するほか中国指導部とも会談する予定。新たな外交問題が浮上している。先日、中国当局が、大手製薬会社現地企業に勤める日本人男性を反スパイ法に違反したとして拘束した。反スパイ法は、習近平政権下でスパイ行為の取り締まりのために2014年に施行され、最高刑は死刑。令状なしでの盗聴や家宅捜索、拘束を認めている。中国国家安全省はサイトで外国人に対する密告を呼び掛けており、日本円で最大970万円の報奨金が出るという。            
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
今回の日本人拘束に関して中国側は容疑内容を明らかにしていない。中国は法治国家であり、法律に違反した者は取り締まるとの建前論を言っている。これまでにも多くの日本人が中国で反スパイ法に違反したとして拘束されている実態がある。林外相はどう交渉に臨むべきか。

長妻昭氏(立憲民主党政調会長・元厚労相):
まずは領事との面会を実現させるということだ。どういう状態にあるのか、早期の釈放(を求め)、起訴前に手を打たないと長期の収容ということになりかねない。獄中で亡くなる日本人もいる。とんでもない話だ。この人を含めいまも5人が拘束されている。外交カードに使うようなことは絶対あってはならない。古本屋で資料を買った、あるいは中国の要人に北朝鮮の状況について話題に出したことなどで拘束されている人もいるようだ。反スパイ法第38条には「その他のスパイ活動」と明記され、全く抽象的だ。理由も言わずにこういうことをやっており、相当強い姿勢を林外相には示してもらいたい。

梅津キャスター:
橋下さんの意見は「やられたらやり返す!スパイ返しだ!」。少し前に話題になった台詞という感じだが。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
ちょっともう古いかもしれない。日本にはスパイ防止法がない。成熟した民主主義国家であったとしても先進国はみなスパイ防止法を持っている。日本は法治国家で法の支配が守られている。でも日本を一歩出ると、法治国家でない国は山ほどある。そういう国がどういうことをやるか。今回、中国が反スパイ法で日本人を拘束したのは、どうも外交のカードとして使っているのではないかと(思う)。日本も半導体製造装置の対中輸出管理厳格化などいろいろ言っているわけでしょ。

松山キャスター:
日本も中国に対して半導体製造装置の輸出管理厳格化を打ち出した。

橋下氏:
日本もスパイ防止法、反スパイ法を持って、国際社会で、スパイ防止法で(日本人が)拘束された場合にはやり返す。互いに交渉して相互解放するとか、こんなの日本の外ではしょっちゅうあることなのではないのか。            

松川るい氏(自民党外交部会長代理、同女性局長):
そうだ。例えば、イギリスとロシアの間で、これは諜報活動員だったと思うが、実際互いに拘束し合った人物を同じ人数、ある日突然解放するなどいろんなことがある。私も反スパイ法は日本に必要だと思う。今回、林外相には本当にこれを最優先にすることを求めたい。とんでもない邦人拘束事案だ。領事面接もできていないのはありえないことだ。即刻解放を求めたい。中国とどう向き合うか。中国は経済安保も含めて安全保障上の懸念国だ。ここについては厳しく対処をするのだけれど隣の国だ。本当に建設的で安定的な関係というのは日本とっても必要だが、中国にとっても同じであるはずだ。だとしたら、こういうやり方をやっていたら、つまり日本人を突然拘束するようなことをやっていたら、中国と日本が建設的で安定的な関係を結ぶなんていうのは難しいよと。もっとぶっちゃけ言うと、中国がこういうことをやっていると、いくら中国の市場が魅力的だからといって、日本企業がこれからもどんどん投資したり、安心してさまざまなものを展開したりできなくなる。そういう意味で、こういうやり口をもう今後一切やるなということをはっきり毅然として伝えていくべきだ。その時にツールになるべきものというのを日本は持っておくべきだ。それはスパイ防止法だけではなくていい。

松山キャスター:
韓国に対する輸出管理厳格化については緩和する方向となった。一方、中国に対して政府は新たに半導体製造装置の輸出管理厳格化の方針を出した。松川さんは反スパイ法以外の方策もカードとして持つべきだと言ったが、中国に対する輸出管理もカードとして使えるか。

松川氏:
これについては、日本の経済安全保障にとって必要なことをやっているだけなので妥協できないと思う。ただ、例えば、日本はG7議長国だし、中国はTPPに入りたいよと言っているけど、それをどうするかなど様々なカードがある。外交はさまざま全面的なものなので、私が言ったのは、あらゆるものを総動員して対処するということだ。

橋下氏:
あらゆるもの(を総動員するの)は当然だが、やはり反撃能力というのであれば、スパイ防止法もひとつのツールになるだろう。やられたらやり返すという姿勢を示す。ただ、松川さん、僕はそれが(かつての治安維持法のように)国内に向いてくることを心配する。ここはきちんと歯止めをかけるような議論も合わせてやってもらいたい。
            
松川氏:
そこは日本政府と日本の民主主義を信じてもらいたいと思う。

日曜報道THE PRIME
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