11月30日に56歳の誕生日を迎えられた秋篠宮さま。誕生日に際し25日に記者会見に臨まれ、およそ1時間にわたり記者会から事前に出された質問に丁寧の答えていただきました。長女・眞子さんについて時間が割かれましたが、私が特に気になった3点をあげてみます。

皇室への影響

まず秋篠宮さまがお答えになった「皇室への影響」についてです。秋篠宮さまは、秋篠宮家だけでなく上皇后さまなどについて誤った報道があったことで皇室の皆さまに「負担になったことには間違いないと考えています」と述べられています。

秋篠宮さまは皇室バッシングへの反論”基準”の必要性についても言及された。
秋篠宮さまは皇室バッシングへの反論”基準”の必要性についても言及された。
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また、結婚に際して皇室で行われてきた「納采の儀」「告期の儀」「入第の儀」が行われなかったことで「それを行わなかったそのことによって皇室の行事、そういう儀式というものが非常に軽いものだという印象を与えたということが考えられます」とされました。

会見では、この3つの儀式を「私の判断で行わなかった」ことも明らかにされました。

秋篠宮さまは、知人などによれば、大変論理的な方といいます。秋篠宮さまは、3つの儀式を行わない場合、周囲が皇室の儀式について「軽いもの」と捉えられる可能性は織り込まれていたと思います。それでも行わない判断をされたわけです。

最終的に行わない判断をする事は、秋篠宮さまも苦悩されたと推測してしまいます。

しかし秋篠宮さまは3つの儀式を行ったとき、皇室と小室家が縁を結ぶことの影響を考えられのではないでしょうか。縁を結ぶことで、皇室に、より大きな影響が出ることを避けるための判断をされたと思われるのです。

10月26日に結婚し記者会見を行った眞子さんと小室圭さん
10月26日に結婚し記者会見を行った眞子さんと小室圭さん

公と私

秋篠宮さまは「公と私」についても触れられています。

この中で「皇室のあるべき姿、これは上皇陛下が言われていた国民と苦楽を共にし、そして国民の幸せを願いつつ務めを果たしていく、これが基本にあると私は思います」と秋篠宮さまの皇室像を示されています。

その上で、男性皇族と女性皇族は性格が違ってくるが、女性皇族の結婚は「私」であるとの考えを示されました。

仲睦まじく”自撮り”をされる眞子さんと佳子さま(提供・宮内庁)
仲睦まじく”自撮り”をされる眞子さんと佳子さま(提供・宮内庁)

女性皇族は結婚して民間人になる立場であり、ご両親は民間人として生活するための教育をされます。そういった面からも、女性皇族の結婚は「私」であっていいと思います。

ただ、わたしに意見させていただけるなら、眞子さんは、あそこまで金銭トラブルに絡んではいけなかった、という思いがあります。海外での生活拠点をつくってほしい、などの希望は、結婚や結婚生活に係わることでもあり、「私」に属していると考えます。

その一方で、金銭トラブルに係わったことは、基本的な〈皇室としての心〉である、「国民と苦楽を共にし、そして国民の幸せを願う」ということには反していたと思うのです。

元婚約者も国民の一人です。その方の「幸せ」も考えなくてはならなかったと思えて仕方ありません。

公であれ私であれ、基本的な〈皇室の心〉より、結婚したい気持ちが大きくなってしまい、眞子さんの公平性が失われていたように思えるのです。

確かに公である公務の際は、〈皇室の心〉の下、臨まれます。その一方で、「私」の際、お友達と話をする時など、いつも〈皇室の心〉で対応され続けることはないでしょう。ただ、関係する人たちに対しては、〈皇室の心〉に基づき行動してほしかったということです。

異常気象について

もう一点、わたしが注目したのは、「この1年を振り返り、特に印象に残った出来事をお聞かせください」という質問へのお答えです。

秋篠宮さまは、大変論理的な方だと先にも記しました。眞子さんについての質問に対して、質問の文言を正確に捉え率直に真摯にお答えいただきました。一方、このざっくりとした質問に対しては、ある意味、秋篠宮さまは、一番関心ある事象について感想を述べられたのです。

それは「異常気象」でした。秋篠宮さまは、この異常気象の影響について、自然災害の恐れと共に次のように述べられています。

「この人間の活動、それから気候変動、そして災害、そしてもう一つそれによって生物多様性の消失。そういうものがこうつながってきているっていうのが、すごく印象に残る今年の出来事だったと思うんですね。しかも生物の多様性の消失により、感染症が広がるということにも影響があると言われています」

生物の多様性が失われることで、宿りやすい主の密度が高くなり、ウイルスなどが増え、制御ができなくなる恐れがあるなどと、異常気象による生物の多様性の消失に対し危惧を示されたのです。

秋篠宮さまは、2003年に設立された「生き物文化誌学会」に立ち上げから深く関わられています。この学会は、「生き物」についてのさまざまな知見を得て、さらにそれらの「生き物」が人間文化とどのように関わっているのか、その物語を調べていくことを目的としています。

面白いことに、「生き物」には河童や鬼など伝承されているものも含まれ、こうした「生き物」がどう人と接し係わっているのかを調べようという学会なのです。秋篠宮さまは、これまで「ナマズ」や「家禽」について研究を続けてこられました。秋篠宮さまは、やはり自然環境について敏感に反応されているのです。

今や「異常気象」と言う言葉も、「異常」ではなくなり、「気候変動」や「温暖化」で語られるようになってきました。こうした問題に対して、秋篠宮さまだけでなく皇室の皆さまは、色々な視点から危惧を示されています。

天皇皇后両陛下も気候変動に関心

皇后さまは58歳の誕生日に際して出されたご感想では、「気候変動の影響によるものと思われる災害が増加しており、今後の対策がますます重要になってくるものと思われます」と記されています。

さらに、「私自身,大学時代にエネルギー経済学を少し学び、また、結婚前に仕事をしていた頃に気候変動問題を含む環境問題に携わっていたことがあり、気候変動や地球環境の問題の大切さに日々思いを深くしております」とも記されています。

実際、ハーバード大学の卒業にあたり「日本の貿易における石油」という論文を書かれています。

皇后さま58歳のお誕生日に
皇后さま58歳のお誕生日に

天皇陛下は、水問題を通じ、気候変動などに関心を持たれています。こうしたことは、会見などで度々発言されてきています。

皇室を取材するものにとって、誕生日に際しての会見や文書は、年に一度、直接お考えを聞くことの出来る機会です。今回の会見は、秋篠宮さまの考え方について理解を一層深めることが出来るとてもいい機会になったと思います。

【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】

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橋本寿史
橋本寿史

フジテレビ報道局解説委員。
1983年にフジテレビに入社。最初に担当した番組は「3時のあなた」。
1999年に宮内庁担当となり、上皇ご夫妻(当時の天皇皇后両陛下)のオランダご訪問、
香淳皇后崩御、敬宮愛子さまご誕生などを取材。