コロナ対策の切り札とされるワクチン接種。しかし予約が殺到するなど混乱が起きている。

政府は6月中にも一般の国民に対する接種を始めたい考えだが、公平で効率的な接種となるのか。今回の放送ではワクチン接種の現状を検証し、日本全体のデジタル化という観点も交えながら、大量接種に向けた課題と対応策を議論した。

勤務医や潜在看護師を活用

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新美有加キャスター:
自民党神奈川県連による県内自治体への聞き取り調査では、少なくとも4自治体が、7月末までの高齢者のワクチン接種完了は困難としています。医療従事者の確保が難しい、財源の問題などの理由。

黒岩祐治 神奈川県知事:
把握している。だが7月いっぱいで高齢者にワクチンを打ち終えることは絶対命題。積極的に市町村を支援する。

反町理キャスター:
県からの人材の派遣まで考えている?

黒岩祐治 神奈川県知事
黒岩祐治 神奈川県知事

黒岩祐治 神奈川県知事:
そう。市町村の事務作業には外注の必要も出てくるが、この財政的な支援を国に求めていく。すでに要請をした。

反町理キャスター:
政府は、ワクチン接種の費用は全面的にサポートするとしている。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
そうです。補足すると、各地域で医療・事務それぞれのマンパワー不足がある。事務アルバイトの募集にも大変な労力がかかりシフトを組む必要もある。そこで県が一括で契約して自治体にマッチングをできればよい。医療従事者については、自治体が主に話す医師会の先には10万人の開業医の皆さんがいるが、一方で17万人いる勤務医の皆さんからは、協力したいが声がかからないという声がある。

反町理キャスター:
勤務医の方々の協力を吸い上げるにあたり、誰がどのように話をする? 

小林史明 内閣府大臣補佐官:
大学なら所管の文部科学省から。病院関係は普段から医療政策を担っている県から。国による医療関係者の人材バンクなどのご案内をしている。

反町理キャスター:
求職中・離職中の、いわゆる潜在看護師は。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
各都道府県の看護協会が接種の訓練を行っている。全国で約4000名の方が打てる状態にある。実際働き始めた方は2〜300名程度。

自治体の「ワクチン供給される日を知りたい」は難しい

反町理キャスター:
聞き取り調査で自治体から意見が出ている。「供給される日付をピンポイントに知りたい」、これは可能ですか。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
今の状況では難しい。昨年から作っていたV-SYSというワクチンの物流に関わるシステムがあるが、2週間に1度注文に応じて届ける形。自治体の皆さんは2週間のうちどのタイミングで届くかわからず心配されている

反町理キャスター:
冷凍保存できるのでは。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
その通り、一定在庫を溜めてからスタートし調整する対応はお願いしたい。必要に応じて県内で別の自治体との融通、医療従事者用と高齢者用の間でも柔軟に融通を。

最も望ましいのは抽選方式?

新美有加キャスター:
混乱が相次いだ予約について。高齢者のワクチン接種の予約方法は主に電話、インターネット、LINE、役場などでの直接予約。多くの自治体で先着順となったため、予約が殺到し混乱に。

栗野盛光 慶応義塾大学教授:
需要が供給をはるかに上回る場合、先着順にはこのような弊害がある。悪い代行者が出てくることも心配。最も望ましいのは抽選方式。どの時点で申し込んでもすべての人が平等に扱われる。

新美有加キャスター:
栗野さんご提唱の抽選方式では、接種期間前に申込期間が設けられます。接種希望者は自分が希望日時と場所を第3希望程度まで指定して申し込み。抽選後結果が連絡されます。

栗野盛光 慶応義塾大学教授:
兵庫県の加古川市は途中から抽選方式を導入した。初日は少し混乱したが今は穏やかとのこと。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
各自治体いろんな工夫をされている。全国すべての自治体が混乱しているとは思わないでいただきたい。加古川市のような抽選制のほか、福島県の相馬市のような完全割り当て制もある。町内会などの単位で接種日時を個々に完全に割り当てていくパターン。また、接種券送付のタイミングをずらすことで予約殺到を防ぐ方法も。良いノウハウを収集し、全国に共有していく。

栗野盛光 慶応義塾大学教授
栗野盛光 慶応義塾大学教授

栗野盛光 慶応義塾大学教授:
マッチング理論には長い歴史があり、経済学者が具体的なアドバイスをできる段階。しかし私たちがアドバイスを求められることはほとんどない。この混乱も予見していたのだが。日本の意思決定のあり方が少しおかしくなっている。本当に悪くならなければ社会課題の解決に動かない。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
社会全体に問題が共有されて扉が開く瞬間でなければ政策が通らない。それでは遅いという栗野さんのご指摘。政策決定をする組織がもっと多様でなければいけない。

ワクチン余ったら近くの方に柔軟に

新美有加キャスター:
自衛隊による大規模ワクチン接種について、自治体の接種との二重予約の問題があります。キャンセルがされなければワクチンが余ることに。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
今回の第一優先は、一人でも多くのワクチン接種を望む方に早く提供し、感染を抑えて日常活動を取り戻すこと。第二にはやはり安全。打った人の記録を残し後の活用へ。公平さはもちろん重要だが、そのために本人確認など入口の仕組みを厳格にすれば、予約できないという脱落が起こる。そうはせず、一方で不公平さを少なくする仕組みを考えていく。

反町理キャスター:
接種券番号と突合される形で予約を取り、自治体がコントロールすればよいのでは。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
自治体の予約システムと全国民の接種券番号をシステム的に連携させればスムーズ。しかし自治体のシステム改修が必要となり、クリニックにも予約枠の設定作業が増える。
一方で、キャンセルが起こった際の対応。事前にキャンセル待ちの名簿を作り、学校の先生や保育士、消防士などを事前登録しておき電話するなど。システムでのカバーと運用でのカバー、デジタルとアナログをトータルで行う。

小林史明 内閣府大臣補佐官
小林史明 内閣府大臣補佐官

反町理キャスター:
日本人が大好きな厳密さよりも、多少の誤差は許容し、なるべく多くの人が早く打つという最大目標に向かうことが一番重要だと。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
早く打って日常を取り戻さなければ、経済が一日一日失われていく。河野大臣からも連日、余ったら柔軟に打ってくださいと申し上げている。

反町理キャスター:
余ったワクチンを自治体の首長が打ったなどの話題を、新聞やテレビは多く流している。それで地域におけるワクチン接種がスローダウンすることはあるのか。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
報道がどうこうではなく事実として、余剰ワクチンが打ちづらい現状は聞こえている。ワクチンが余ったら近くの方に柔軟に打つよう強くお願いしたい。

接種記録システムVRSは準備完了したが、安定運用は

新美有加キャスター:
今後ワクチン接種の体制を拡充する中で情報管理に用いられるのが、政府が開発した接種記録システムのVRS。このメリットや目的は。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
従来は各自治体が接種記録を管理していた予防接種台帳の全国共通化。どこで接種しても記録が残り、引越しなどがあってもスピーディに対応できる。このシステムが自治体により異なれば、生活が非常に多様化した日本国民のニーズには全く応えられない。必要な情報をどこからでも確認できる状態が必要。
約2カ月で開発したが、すでに99%以上の自治体が入力にご協力いただける状態。決して義務でもないのに、感謝しかない。

反町理キャスター:
コロナ関連のデジタル施策は死屍累々という印象。VRSは本当に安定した基盤となりうるか。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
手段と目的をはき違えない。記録を取ること以上に、医療や自治体の現場を楽にしながら国民の皆さんの情報を的確に集めて必要な政策を打ち、課題を解決する。デジタルでもアナログでも、この目的のために徹底して一元化を図り全体を最適化する。

デジタル庁創設の意味

新美有加キャスター:
小林さんが自民党の中で司令塔となるデジタル改革の今後。デジタル改革関連法のポイントは、デジタル庁の9月発足、行政の押印や書面手続き見直し、緊急時の給付金などでの登録口座利用、自治体の主要業務システムの仕様統一など。日本にとっての意味は。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
2つ大きな転換を迎える。ひとつは、全国の道路と同じように、国家のインフラとして、同じルールで共通のシステムが作られること。ワクチン接種記録システムもそう。
もうひとつは行政をプッシュ型に転換すること。緊急時の給付金情報など、行政が一人ひとりに合ったサービスをピンポイントでお勧めし提供できるようになる。実際にこの6月以降から、一定の所得の子育て世帯の方に5万円が給付される。手紙が届いて、黙っていれば5万円が振り込まれる。

反町理キャスター:
パソコンやスマホを持っていない、使えないという社会的弱者に対してのケアは。

小林史明 内閣府大臣補佐官:
徹底的にスマホ教室をやる。寄り添うだけでなく、抱きしめて連れて行くぐらいのやり方をする。誰一人取り残さないデジタル社会をつくるために、対面で教えるのは相当アナログだがやり切りたい。

BSフジLIVE「プライムニュース」5月19日放送