連日の厳しすぎる暑さが続く中、愛知県豊田市では17日に小学1年生の男子児童が熱中症で亡くなった。

熱中症の予防に水分や塩分の補給など対策が呼びかけられているが、子供を持つユーザーがTwitterに投稿したつぶやきが話題になっている。

小1男児熱中症で死亡って最悪過ぎる。うちの子も顔真っ赤にして帰ってきた。学校にポカリ持って行っていいか聞いたらジュースなんでダメですって言われたし。早く改善してほしい

熱中症対策として、スポーツドリンクのポカリスエットを子供に持たせたかったが、この学校は「ジュース持ち込み禁止」のためダメだったという。
この投稿に、ネット上では「甘いジュースならわかるけど、スポーツドリンクもダメなの?」「熱中症が増える」という声が続々。

記録的な暑さが続く中での学校の対応にいろいろな意見が出ているが、今回は、熱中症対策にスポーツドリンクは本当に有効なのか、ブドウ糖と食塩で作る経口補水液とはどう違うのかなど、飲み物について改めて調べてみた。
 

「清涼飲料水」は幅が広い

ポカリスエットのラベルには「清涼飲料水」と表示されているが、全国清涼飲料連合会によると、「清涼飲料水」とはアルコールでも乳製品でもない飲料のこと、「ジュース」とは果汁100%の飲料をさすという。
ざっくり言ってしまえば、「清涼飲料水」という大きなくくりの中に「ジュース」があるという形になる。

基本情報がわかったところで、ポカリスエットを販売している大塚製薬株式会社に、熱中症対策に有効な飲み物について聞いてみた。

 
 
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水だけではダメ! 塩分の補給が大事

――熱中症対策に有効な飲み物とは?

日本スポーツ協会では、100ml中にナトリウム40~80mgを含む飲料が、熱中症対策にふさわしいとしています。
ポカリスエットは100mlあたり49mgのナトリウムを含んでいるため、汗で失った水分や塩分(ナトリウム)をすばやく身体に補給し、身体の中に長くとどめるために適した飲みものです。


――糖分が多いのでは?という意見もありましたが…

適切な量の糖分が含まれる飲料は、吸収量が多くなります。
そのため、すみやかな水分補給のためには糖分がふくまれている飲料が望ましいです。
糖分量に関しては、缶コーヒーや炭酸飲料などの方が多いです。


水やお茶を飲むだけでは失った塩分を補給することができないため、水分と一緒に塩分をとること、さらに吸収力を高めるため適度な糖分が入った飲み物がふさわしいという。
調べてみたところ、大塚製薬から発売されている「アミノバリュー」や、他社のスポーツドリンクにもおおよそ100ml中40mg以上のナトリウムが含まれていた。
 

「経口補水液」は熱中症予防というよりは…

やはり、ポカリスエットを含むスポーツドリンクは熱中症の対策に有効なことがわかったが、では経口補水液はどうだろうか。
同じく大塚製薬から販売されている経口補水液「OS-1」のラベルを見てみると、こちらにも「清涼飲料水」の表示があった。

となると、分類上はポカリスエットと同じ飲み物ということになるが、より熱中症予防に効果的な感じもする。
経口補水液もゴクゴク飲んでいいとしたら、スポーツドリンクの代わりに学校に持っていけないだろうか?

 
 

――熱中症にならないために経口補水液を飲んでもいい?

OS-1は「病者用食品」というものです。
熱中症対策というよりも、脱水状態・発熱時の水分補給などに飲むのに適しています。


大塚製薬の公式サイトによると、経口補水液(OS-1)は「脱水状態で不足している電解質(ナトリウムなど)を補うため、一般的なスポーツドリンクよりも電解質濃度が高くなっている」という。

OS-1とポカリスエットの成分表示を比べてみると、OS-1には「食塩相当量 0.292g」という表示があるが、これは「ナトリウム115mg」にあたる。確かにポカリスエットの49mgよりも、ナトリウムが多く含まれていた。

左:経口補水液 右:ポカリスエット
左:経口補水液 右:ポカリスエット

経口補水液はスポーツドリンクと同じように塩分と糖分を含んでいるが、熱中症を防ぐために必要な成分を補充する飲み物ではなく、熱中症になってしまったときに不足している成分を補給できる、点滴のようなものなのだ。

大塚製薬は「日常生活における水・電解質補給であればスポーツドリンクでも十分ですが、軽度から中等度の脱水状態には経口補水液が適している」として、健康な時に飲んでも問題はないが、熱中症にならないように飲むのは、スポーツドリンクの方がよいということだった。
 

最後にネットで話題の疑問を聞いてみた

発端となった今回のツイートの話に戻ると、"味付きの飲み物"を全面的に禁止するのは、熱中症対策に水を飲むよりも有効な飲み物まで含んでしまうことになる。
ただ、「味付きの飲み物禁止令」については、全国清涼飲料連合会に取材をする中で、いくつか興味深い話を聞くことができた。

小学校では「ペットボトルはNGで水筒でなくてはならない」といったルールがあったり、また、水やお茶以外を飲むことで給食できちんと計算されている栄養バランスが崩れる可能性があり、栄養指導の面でも「甘い飲み物禁止」ということになっているのではないか、ということだ。
さらに、砂糖の入った飲み物をこぼしてしまうと、学校の芝などを傷めることも考えられている、という。

様々な要因があって、学校で"味付きの飲み物"を禁止しているということがわかったが、子どもの身を守るための熱中症対策として、飲み物も活用した方がいいレベルの記録的な暑さの現状では、特例的に検討することも必要ではないだろうか。

最後に、上記の話に出た、「水筒」についてネットで話題になっている疑問も大塚製薬の担当者に聞いてみた。

――金属製の水筒にポカリスエットを入れるのは体に悪いのでは?という話がありますが…

ポカリスエットは酸性のため、金属製の水筒の内側にキズなどがあると金属イオンが溶けだし、風味が変わってしまうことが考えられます。
症例は報告されていませんが、中毒症状を起こすことも考えられます。
持ち歩きの際はペットボトルのままをおすすめします。
 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。