新型コロナウイルスの影響でテレワークの導入などが進む中、悩みの一つとなっているのが運動不足ではないだろうか?

もちろんテレワークでなくとも、オフィスで1日中デスクワークをするビジネスマンたちとって、どうやってなまった身体を鍛え直すか、頭を悩ませていることだろう。

そのような中、青森県庁内で行われている“ある試み”が注目を集めている。

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「この階段は、あなたの足腰を強くするために造りました」

「階段を選んだあなたに幸せを」

「考えるな、登るんだ!」


階段に1段おきで貼られているのは、階段の利用をうながす3点の標語。

これは青森県庁内、北棟の正面と裏のエレベーター近くにある1階〜8階までの階段、南棟の2階〜5階までの階段、合計3カ所の階段に貼られているというのだ。

その標語の数は88点にも及び、「足腰を弱らせないように階段を使おうぜ!!!」といった勢いを感じさせるものから、「踊り場には新たな出会いがあるかもしれない」「颯爽と駆け上がるあなたに恋をした」といった思わずドキッとしてしまうもの。「無理するな若いふりして一段飛ばし」など、そのバラエティも豊富だ。

さらには、「短命県返上のスタートラインへようこそ」というものも。


厚生労働省が調査する「生命表」によると、青森県の男性の平均寿命は、1965年(昭和40年)の調査で65.32歳を記録し、78.67歳だった2015年(平成27年)まで、毎回の調査で全都道府県の中で最下位だった。

女性に関しても、1965年はワースト3だったが、84.80歳だった2005年(平成17年)から85.93歳の2015年までの直近は、3回連続の最下位となるなど、その短命ぶりが数字に表れている。

県ではその原因を「運動習慣がない人が多いこと」などと捉え、県民に「屋外での遊びを通した身体活動」「体力づくり」を推進しており、階段の標語にはそうした空気を反映したりもしているようだ。

そして、この気になる標語の設置者だが、実は公務員が加入している公的医療保険の事務を担う地方職員共済組合青森県支部だという。

なぜこのような取り組みを始めたのか? 誰がこうしたさまざまな標語を考案したのか? 担当者に話を聞いた。

運動量を増やす環境づくりの一環

ーーこの「標語ステッカー」を貼ることになった経緯を教えて。

共済組合は県職員の医療保険を担っている関係上、医療費がかかると保険料の負担もその分増えてしまうことがあります。また、高齢化とともに、病気にかかる頻度も上がっていきます。

そのため、生活習慣病の予防に取り組むことで医療費の削減を図っているところですが、運動が非常に大切だということは分かっているものの、まとまった時間をそのために取るというのはなかなか難しい。そこで、職場での運動量を増やしていく環境づくりができればと、今回の施策を行っております。

ーー県庁内での貼り付けはいつから?

2020年の1月25日からです。

一番「上手いな」と思った標語は?

ーーこうした標語は誰が考えたの?

事業の関係上、共済員に募集をかけ、集まった201通から選んだものとなります。

ーー一番「上手いな」と思った標語と、その理由は?

「立ち止まっても、また歩き出せばいいだけ」
というものになります。

生活習慣の改善において、運動や食事などさまざまな取り組みの方法があるものの、どこかで挫折してしまったり、忙しくなってそれっきりとなり、結果的にリバウンドしてしまうケースもみられます。

そのような中、「1回ダメでもまた始めていいんだよ」というメッセージに対し、「非常に深いな」と思うところがありました。

ーーこうした「標語ステッカー」で、階段の利用者は増えた?

元々の利用者を把握していなかったということもあり、正直なところ分かりかねています。

ーーステッカーの貼り付け以外で、県庁内で行われている健康増進に向けた同種の工夫などは?

共済組合や県の人事課で健康教室を開き、運動のセミナーも実施しております。

ーーちなみに担当者の方は、何階分上がるときまで階段を使ったことがある?

特に上限は決めていませんが、急ぎではない場合、階段を使うことにしております。北棟は8階まであるのですが、1階から階段を使って上がったこともございます。

「面白いね」といった意見をいただけている

ーーちなみに、このステッカーはいつまで貼る予定なの?

3月末までをひと区切りとして、4月以降については未定の状態です。

ーーこうしたステッカーについて、県民など階段の利用者からはどんな声が聞かれる?

お声を直接受けたことはないですが、「面白いね」といった意見を概ねいただけているようです。

ーー最後に、県庁の階段を利用する人に何か一言。

「階段を使っていただきたい」という思いがあるのはもちろんですが、「自分だったらどういう言葉で階段を利用する人を盛り上げてあげるか」ということを考えながら上ってもらえれば面白いのかなと思っております。


年齢を重ねるに連れ、生活習慣病が身近な存在になってくることは確か。階段に目をつけ、遊び心を交えながら階段利用を啓発する今回の取り組みは効果がありそうだ。

(画像提供:青森県庁)

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プライムオンライン編集部
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