新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない日本で、検査を受けたくても受けられない”検査難民”の存在が今深刻な課題となっている。

「1日3800件超検査可能」でも実態は約900件

新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判定するPCR検査。

 
 
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加藤勝信厚労相は先週17日、1日あたり3800件を超える検査が可能になったと明言した。

 
 

しかし、今日26日に開かれた衆院予算委員会の席上、加藤厚労相は「2月18日から24日の7日間の検査実績、合計で6300件ということであります。平均すると、(1日)900件」と、直近の検査実績が1日3800件に遠く及んでいないことを明らかにした。

 
 

この発言に対し、野党側からは厳しい追及の声が上がる。

山井和則・衆院議員:
「私はてっきり(1日)3000件ぐらい検査されているというふうに思ったんですけれど。少なすぎるじゃないですか!」

 
 

枝野幸男・立憲民主党代表:
「(感染の)疑いがある方については、しっかり検査しないといけないじゃないですか?」

 
 

対する加藤厚労相は、「どこにネック(障害)があるのか今調べております」「能力には限界があります。この能力を上げるべく努力をさせていただいておりますけれども、少なくとも3800を超える能力があるわけでありますから、それをしっかり活用していく」と答弁するにとどまった。

 
 

検査の数が増えない理由について、政府関係者は「新たな事案が発生したときに備え、検査実施能力の余裕を持たせているというだけのこと。検査が必要な人が検査できないことはない」と説明し、必要な検査は行っているとしている。

 
 

PCR検査、専門家「”医学的には”ほぼ必要なし」

加藤綾子キャスター:
そもそもPCR検査とはどういったものなのか。
まずは患者の鼻に綿棒を入れて、粘膜やたんなどを採取します。採取したあと厳重に管理して検査機関に運び、ウイルスが特有に持っている遺伝子情報が見つかるかどうかで陽性か、それとも陰性か判断するというものなのです。

 
 

加藤綾子キャスター:
久住先生、これは他の病気でも使われる検査なのでしょうか。

久住英二・ナビタスクリニック 内科医:
感染症という点では、冬に流行る子どもが肺炎を起こすRSウイルスとか、麻疹や風疹の検査にも使われますし、がん細胞の遺伝子を検査するときにも、その遺伝子を増やす目的でPCR法というのは広く用いられています。

加藤綾子キャスター:
このPCR検査をめぐっては、「検査が行われる数が少なすぎるのではないか」という声が上がっているのです。日本では、最新のデータでは1日およそ900件にとどまっているのですが、一方で韓国はおよそ6000件(25日16時から26日9時まで)と日本との大きな開きがあるんですね。

 
 

加藤綾子キャスター:
これには当然、「政府の対応が遅いのでは」「子供が検査できないのは困る」といった、親御さん世代からの声も出ているんですよね。この900件よりはもっとできるのに、じゃあなんで検査をしないのか。これに対して久住先生はこうお答えになっています、「”医学的には”ほぼ必要なし」。”医学的には”という言葉がついていますが、これはどういうことでしょうか。

 
 

久住英二・ナビタスクリニック 内科医:
まずこの検査をして診断をつける目的が何かってことなのです。残念ながら今、新型コロナウイルスの特異的な治療薬、いわゆるインフルエンザに対するタミフルのような特効薬はないのです。ですから、診断しても診断しなくても、治療の方法というのは変わらないのです。基本的には治るのを待つしかない。その間、点滴をしたり、呼吸器を使ったりということなのです。

 
 

久住英二・ナビタスクリニック 内科医:
一方で、今後は治療薬が見つかってくると診断するメリットが出てくると思います。そして今、この検査、いわゆるPCRの検査っていうのは、100人の患者さんがいたらそのうち何人(の感染者)を見つけられるかという点では、50%ぐらいしかないんですね。ですから、検査して反応が出なかった時は、「違います」ということにはならない。幸いにも、この検査は特異度といって、「この反応が出たけれども、実は病気じゃなかった」という確率は低いんです。

 
 

久住英二・ナビタスクリニック 内科医:
検査も万能ではないのです。その検査を症状がある方に行うのは許されると思うのですが、無症状の方まで全員受けることになってくるとこれはすごく混乱を招いてしまう。(検査結果が)陰性だったからといって、「会社行って大丈夫ですか?」という話になると、「そうじゃないです」になってくるので。そこの知識が皆さん十分お持ちではないので、そこが理解いただかない上で検査だけやってしまうと逆に混乱を招いてしまう。

加藤綾子キャスター:
だから、絶対検査しなくてはということで不安に駆り立てられるほどではないということですね。

風間 晋・フジテレビ 解説委員:
日本と韓国の検査の数の違いなんですけど。韓国は確かにいっぱい検査をやってます。でも大邱(テグ)の急速な感染拡大の防止にはつながっていないわけです。そこはやっぱり一言指摘しておきたいなって思うところです。

(「Live News it!」2月26日放送分より)