世界中で様々なロボットの開発が進められているが、中には一風変わったものもある。
その1つが、「食べられるロボット」だ。
一体どのようなロボットで、どのようなかたちでの活用を考えているのか?
2016年から「食べられるロボット」の開発を進めている、東北大学の多田隈建二郎准教授に話を聞いた。
「食べることが可能な素材で構成されたロボット」
――そもそも、「食べられるロボット」というのは何なの?
「食べることが可能な素材で構成されたロボット・装置」というのが定義で、柔らかい材料を用いた「ソフトロボット」の一種とも言うことができるものです。
「ソフトロボット」が柔らかい材料として、ゴムやスポンジ、ビニール袋などを用いてきたのに対して、「食べられるロボット」は、羊腸、高野豆腐などの“可食材”(=食べられる材料)を用いるという点がもっとも斬新な点になります。
我々は2016年の初頭から、この「食べられるロボット」(=可食ロボット)の研究開発を進めています。
目的は「咀嚼ができなくなった被災者への栄養補給」など
――どのような役割を果たすロボットなの?
以下のような役割を考えています。
・自ら推進力を出すことによる、咀嚼ができなくなった被災者への栄養供給
・見た目の派手さや動きの面白さからくる次世代の娯楽的食事(たとえば、結婚式やパーティなどで話題にできるなど)
・胃腸内の能動的な清掃(動くコンニャクのようなイメージ)
――「食べられるロボット」の研究を始めたきっかけは?
災害対応ロボットの研究開発をしていたことがきっかけです。
――災害現場では、どのようなかたちで活用することを想定している?
災害現場では、救助隊員が助け出すまでの間、生きながらえさせる必要があります。
その際、栄養注射で要救助者にエネルギーを与えるとなると、粉塵やがれきなどの汚れから、どこに血管があるかが分かりにくいものです。要救助者が、咀嚼が困難な場合もあります。
こういった場合に、「食べられるロボット」が要救助者の口に入り、自らが推進して、最後には消化されて栄養分になる、というイメージです。
課題は「安全性の確保」
――実用化は何年後ぐらいになりそう?
少なくとも3年~5年の時間はほしい、と考えています。
――実用化のための課題は?
安全性に付きますね。
安全性をどう確保するかですが、「食べることができるサイズか(誤飲しても喉に詰まらないか)」「食べることができる硬さ・柔らかさか」「摂取量の上限値が低いものでない素材か」という点が、実用化する上ではやはり課題でしょうね。
この辺りは、医学的な観点もいりますので、スムーズに研究を進めていくのはなかなか難しいところです。
「食べられるロボット」とは一体何のためかと思ったが、災害対応ロボットの開発がきっかけで、「咀嚼ができなくなった被災者への栄養補給」を目的の1つとして開発が進められていた。