あつーい今の季節、仕事終わりの1杯。
“とりあえずビール!”

そこで使われている一見普通のビールジョッキ。

実はここに、アルコール多様化時代を生き抜く知恵が。

1杯目需要に着目“ジョッキ革命”
イノベーション2.0

「カンパーイ」

仕事終わりの人で大賑わいの都内の居酒屋。

そこで聞こえてくるのが・・・

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男性客:「とりあえず生って日本人っぽいじゃないですか」

男性客:「やっぱり仕事終わりはビールかなと思って1杯目ビールですね」

そんななか・・・・

男性客:「2杯目以降は違うもの。食べ物に合わせて」

男性客:「2杯目以降はちょっと落ち着かせてハイボールとかウーロンハイとかにしますね」

聞こえてくるのは、2杯目以降はビール以外のものを選ぶという声。

魚可津 正木秀逸代表取締役社長 :「今は二杯目からはビールよりはサワーとかハイボール、焼酎とかちょっとバリエーションが増えている感じになっていますね」

アルコール飲料の多様化により、2杯目以降、 ビールを頼む人が減少傾向にある。

そんな状況を逆手に取り、一人あたりのビールの消費量を上げるべく、アサヒビールが投じたのが、この大きなジョッキ。

オリンピックシンボルの「5つの輪」と 東京2020大会の競技数である「55」の数字を並べた、555mlという大容量ジョッキ、 その名も “555(ゴーゴーゴー)mlジョッキ”。

これまで使われていた400ml程度のジョッキと比べると、その差は一目瞭然。

アサヒビール マーケティング本部 沼中将夫氏 :「ビールを飲んでいただくきっかけであったり、 機会を作っていきたい、というふうに思っているのと、今回555mlジョッキを通じて大容量のジョッキということでビールの量を増やしていきたいというような思いがあります」

2杯目以降ビールが頼まれないなら、1杯目の量を増やして 一人あたりの消費量を増やそうという戦略だ。

さらにこの555mlという大きさも単なる語呂合わせだけではない。

「ビールは2杯以上飲めないもん。お腹いっぱいになるから」
「中ジョッキ1杯では物足りない。でも2杯目を頼むと少し多い・・・」

そんな消費者が “1杯で満足できる量” になっている。

「暑いときとか仕事でほんとに疲れたときとかに大をぐーっていったほうが美味しいかなって」

Q中じゃちょっと足りない?
「足りないです」「この大きさほしいですね」

この大きなジョッキ、飲食店にとっても意外なメリットが生まれていた。

魚可津 正木秀逸代表取締役社長:「オペレーション的にもラクだし、お客さんもやっぱり店員を呼ばなきゃいけないので,その手間も省けて結構いいと思います。売り上げも単価があがるので全然違いますね」

ビール離れを逆手にとった戦略がアルコール多様化時代。
人手不足時代を生き抜く新た一手になりそうだ。

番組コメンテターの松江英夫さん
「ボリュームと単価の関係がおもしろい。日本の食品メーカーは多様化の中でいかに収益を上げていくかに苦労をしている。多様化すると一つの製品の中で “量”というのがなかなか出にくくなるので、いかに値段、単価を上げていくかが勝負になる。単価の上げ方は ”量”に注目するのと “質”に注目するのと両側面で色々なやり方がある。夏ですから、かき氷で説明しますと・・・」

「宇治金時を例にとると、“質”を高めていくのが “付加価値”ということで、金粉付きの質の高い豪華な宇治金時で値段を上げていく。これが質に注目して値段を上げるやり方。一方、先ほどのビールのように、“量”に着目するやり方もある。例えば、普通の量の宇治金時が500円とすると、2倍の大きさであっても1000円にせず、750円にして少しお得感を出して、収益につなげる。逆に半分の大きさでも半分の250円にせず、350円にして単価を上げることによって収益につなげる。収益を上げるにはこういった二つのアプローチがある」

(「Live News α」7月26日放送分)