当時2歳の息子は母を「全然覚えていない」…未解決のまま20年

未解決のまま令和を迎えた名古屋市西区の主婦殺害事件。関係者を改めて取材すると、犯人が残した「血痕」に関する新事実が明らかに。さらに7年間捜査に携わった元刑事が犯人像を語った。

名古屋市内の自宅でアルバムを見る父親と息子…。息子は母親のことを全く覚えていない。

古いアルバムを見かえす高羽奈美子さんの夫・悟さんと息子の航平さん
古いアルバムを見かえす高羽奈美子さんの夫・悟さんと息子の航平さん
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ーー航平くんは母親のことを全然覚えていないと思いますが?

高羽航平さん:
そうっすね、全然覚えてないっすね

航平さんの父親・悟さん:
ぜーんぜん、記憶にないよね?

航平さん:
めっちゃアルバムあるね

悟さん:
これは新婚旅行だ。トルコ、イスタンブールと、写真撮るのは好きでしたね

映っていたのは、高羽奈美子さん(当時32)。写真を撮るのが好きだった。

夫・悟さんに初めて航平さんが抱かれた時の写真には「パパとご対面(この人誰だろ??)」というコメント。日付や場所、それにコメントも全て自分で書いていた。

殺害された高羽奈美子さん(当時32)
殺害された高羽奈美子さん(当時32)

航平さん:
めっちゃ脚きれいじゃね?自分の母親やけど。モデルかと思った

悟さん:
手足長いし、もう…

白くてスラリとした長い脚。息子の航平さんは、似ているところを見つけた。

航平さん:
僕、めっちゃ美脚って言われるんですよね、いろんな人たちに。女子とかからも。めちゃめちゃスタイルいいねって。多分そこですね、(母親と)似てるのは

航平さんは来年大学を卒業し、東京の会社に就職する。

高羽悟さんと奈美子さんの息子・航平さん
高羽悟さんと奈美子さんの息子・航平さん

ーー平成というのは高羽家にとってどんな時代でしたか?

悟さん:
うーん、うん、そうですね、まあ奈美子と出会ったのも平成に入ってからですし、結婚して航平を授かったのも平成の時代、ただまあ事件にあったのも残念ながら平成の時代ということで、一言ではね。なかなかその時代が良かったとか悪かったとか言えないんですけど。就職が決まればひとつね、責任は果たせたかなという気持ちにはなります

高羽奈美子さんの夫・悟さん
高羽奈美子さんの夫・悟さん

事件があったのは、今から20年前の平成11年11月13日。

名古屋市西区稲生町5丁目のアパート。この一室で奈美子さんは殺害されているのが見つかった。

夫の悟さんは仕事で外出中で、2歳だった航平さんは奈美子さんと一緒にいたが、無事だった。

夫は事件から20年経った今も現場の部屋を借り続ける

悟さん:
殺人事件なんて自分の身にふりかかることだとは本当に思ってもなくて。呆然と『何でこんなふうになっちゃったんだろう』と言うしかなかったのは、昨日のようには思い出すんですけども…

現場となったアパートを事件後も悟さんは部屋を借り続けていて、当時の状況のまま残している。奈美子さんは、廊下と居間の間で首などを刃物で刺されていた。

悟さん:
(奈美子さんは)膝から下くらいが廊下に出ていて、こっち(居間側)にうつぶせで顔を右側にして倒れていまして、胸の下は血だまり。ここ(廊下の壁)に血しぶきが飛んでましたんで、ここ(玄関)の下に犯人の血がついているんですね

犯人はB型の女…年齢は現在60歳~70歳か 現場には女の血痕も

玄関に残る「血痕」。

現場には犯人の血痕と靴跡も残されている
現場には犯人の血痕と靴跡も残されている

悟さん:
この辺が犯人の靴の跡なんですけども。24センチというのが見えるような跡があります

犯人は、奈美子さんともみ合いになった際、手に傷を負ったとみられ、足跡も残っていた。愛知県警は目撃情報から犯人を女と断定。血液型はB型で、年齢は現在60歳~70歳くらいとみている。

現場に残された血痕や目撃情報などからわかった犯人の特徴
現場に残された血痕や目撃情報などからわかった犯人の特徴

悟さんや航平さんも、これまで事件発生の日に合わせビラ配りをし、情報提供を呼び掛けてきた。しかし、ここまで犯人像が絞られているにも関わらず、令和になっても未解決のままだ。

悟さんと地下鉄の駅で情報を呼びかける航平さん 当時12歳
悟さんと地下鉄の駅で情報を呼びかける航平さん 当時12歳

現場となったアパートの前に立つ1人の男性。

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん:
遺族の方の人生まで狂わせてしまった犯人には、どうかそれに見合った罰を受けてもらいたい、という思いでずっと捜査してきましたし、今もそう思っています。捕まえられなかったのは悔しい限りです

愛知県警元捜査一課の岡部栄徳さん(61)。未解決事件ばかりを扱う「特命捜査係」の班長として、7年間この事件に携わってきたが、去年3月退職した。

発生直後の初動捜査でもカギとなったのは、アパート周辺でも見つかった、犯人のあの「血痕」だった。

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん:
ダーッと流れておる状態ではなくて、ポタ、ポタ、という感じ。一定のリズムではなくて、トットッとあって、また離れてポッとあってという感じですね

路上には自宅から北東の方向におよそ500メートルにわたって犯人の血痕が点々と残されていた。しかし…

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん:
この辺りから血液の滴下が分からなくなってしまってですね、そこで例えば完全に消えちゃった、止まったよっていう確認ができれば一番よかったとは思うんですけど、そこから先が探したけど探せなかったのか、現実に無かったのかというのがわからない

血痕は、道の途中で途絶えた。

当時を知る複数の捜査関係者によると、実は奈美子さんが殺害された日の夜、愛知県警は警察犬を使って血痕を追っていた。その後、この血痕を一部の報道機関も追い始めたため、当時の捜査幹部が一時中断を指示。

するとその夜、現場に雨が降り、血痕が消えて追うことができなくなったという。あの時、血痕を調べていればあるいは犯人にたどりつけていたかもしれない。

一方で、岡部さんは捜査で浮かび上がった犯人像についてこう話す。

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん:
どこかで奈美子さんに逆恨みした、地元で接触のある人物。ただご主人やお友達の方も身内の方も聞いたことない人。それと奈美子さんの慎重な性格、もろもろ考えて奈美子さんと接点のある友人知人の中の一人ではないかなと。ただ奈美子さんよりも年上、どちらかというとお母さんに近いくらい

その上で、血痕が消えた先で犯人が通ったとみられるルート周辺での目撃情報を愛知県警に寄せてほしいと話す。

元愛知県警捜査一課 岡部栄徳さん:
埋もれた情報がいくつもあると思うんです。そこらへんを警察の方へ情報提供いただけると、犯人に結び付くかなと。よりここから先の目撃者の方が出るかなと思いますので、是非協力していただければ

自首してくれって言うしかない…解決のカギは採取されたDNA 急転直下で逮捕の可能性も

事件現場のアパート。悟さんは、今もここで奈美子さんが使っていた遺品を保管している。

悟さん:
私もここへ来て、少しずつ手に物を取ると、奈美子が大事にしてたんじゃないかなと思うと、なかなか捨てられなくてですね…

「事件を風化させないため」そんな思いで借り続けてきた部屋。事件から20年がたち、手放そうとも思ったというが、大家さんが家賃を下げてくれたこともあり、もうしばらく借りることにしたという。

悟さん:
僕らは中途半端な被害者なんで、これが指名手配されていればね、犯人の家族を調べようとか、犯人の住んでたところはどこでとか、いろいろ情報収集するでしょうから。犯人の親に対する恨みとか出てくるでしょうけど。どこでどう育ってということも分からない。ただ女性で(当時)40~60歳って聞いているだけで、本当にそれも正しいか捕まえてみないと分からないですし。自首してくれって言うしかないですよね。出てきて本当のことを喋ってくれとしか言いようがないですよね

罪を償うことなく市民に紛れて生活をしている犯人の女…現場からは女のDNAも採取されていて、事件はいつの日か急転直下する可能性もある。愛知県警西署は情報提供を呼びかけている。(電話番号:052-531-0110)

(東海テレビ)

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