“偽ドンキ”の運営者は韓国財閥!パクリ指摘に開き直り?

商品の陳列方法や品揃え、ポップの雰囲気などが“”本家“そっくり
商品の陳列方法や品揃え、ポップの雰囲気などが“”本家“そっくり
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ソウル最大の繁華街・明洞を歩いていると、日本でよく見かけるカラフルな看板が目に入って来た。

「そうか、韓国にもドン・キホーテがオープンしたんだ」

………いやいや、近くで見てみると違うではないか。店名はハングルで「ピエロショッピング」と書かれている。だが、あらゆる点が「ドンキそっくり」だ。黄色文字の看板に、赤を基調とした外観、さらには迷路のような商品の陳列方法、そして生活雑貨や家電製品、食品まで扱う豊富な品揃えは、ドン・キホーテの営業形態そのものだ。明洞の店舗がオープンしたのは2018年12月で、常に現地の若者で賑わっている。客の話を聞いてみると、訪日韓国人が増えているせいか、本物のドンキを知っている人が多かった。「よく似ているけど、商品が多くて便利だから構わない」「消費者としては問題ない」「ドンキのような店が韓国にも出来て喜んでいる」と好意的な受け止めばかりだ。
 
ピエロショッピングを運営するのは、韓国を代表する財閥で、日本人観光客にも人気のデパートを手掛けている「新世界(シンセゲ)グループ」だ。 “ピエロ”の開業にあたりグループの副会長は韓国メディアの取材に応じ、「1年間、全てを注ぎ込んで準備をした」と胸を張った。自身の野心作だそうだが、記者に「ドンキのパクリでは?」と聞かれると「他社の成功例に学ぶ“ベンチマーキング”だ」と主張したという。「ベンチマーキング」とは便利な言葉だ。しかし、店のスタッフ達が制服として着ているTシャツには、こんな言葉がプリントされていた。
 
「(日本へ行く)飛行機代がもったいないので、ドンキをそのまま作った」
 
もはや開き直りにも見えるが、これも「ベンチマーキング」と言いたいのだろう。

背中には「(日本へ行く)飛行機代がもったいないので、ドンキをそのまま作った」
背中には「(日本へ行く)飛行機代がもったいないので、ドンキをそのまま作った」

韓国でもパクリ議論が勃発

この「ベンチマーキング」には韓国メディアでさえ批判的だ。ピエロショッピングの開店を控えメディア向けに店舗が公開された際、韓国人記者の間で「もはやベンチマーキングの域を超えている」「ドン・キホーテと完全に同じだ」という声が相次いだという。大手紙・朝鮮日報も、「本家との差別化ができていないベンチマーキングは、パクリ議論だけを増長させ成功にはつながらない」とはっきり指摘している。
 
“本家”はこの状況をどう見ているのか。日本のドン・キホーテの運営会社に聞いてみた。広報担当者は「開業時に韓国側からの連絡はなく、業務上の提携などはない」として、存在は認識しているものの、一切のつながりが無いことを強調した。ただ、現時点では静観しているようだ。

「日本の後追い」を続ける韓国小売業界

ピエロショッピングに象徴されるように、韓国の小売業界では今も昔も、日本のトレンドを後追いするのが一つのビジネス手法だ。別の財閥企業のロッテグループは2018年、化粧品などを扱う量販店「ロッテスーパーwithロブス」を新たにオープンさせた。朝鮮日報によると、このときもグループの会長が、日本の大手ドラッグストア「コスモス」の韓国版を作るよう指示したという。さらに聯合ニュースによると、韓国最大の家電量販チェーン「ロッテハイマート」も、日本の「TSUTAYA」によく似た店舗を開いている。
 
しかし、反日的な人が多い韓国で、なぜ日本式ビジネスがもてはやされるのか?聯合ニュースは専門家の分析として次のように伝えた。
 
「日本の物をそのままコピーするのはわが国のプライドが傷つけられるが、新たな方式を日本から持ち込むのは消費者を呼び込む努力として肯定的に見ることができる」。
 
日本への敵対心と関心が見事なまでに混在し、「嫌いだけど気になって仕方がない」という韓国人の対日観が良く出ている。日韓関係は“過去最悪”と言われるが、こうした対日観が見えてくるのは、ビジネスモデルだけではない。

着る物も食べる物も「気づけば日本製」

今年3月には、韓国の地方議会で日本製品の締め出しとも取れる“戦犯ステッカー”条例案が提出された。現地では反日ムードが最高潮に達しているように見えるかもしれない。だが政治的な摩擦とは裏腹に、「日本製品が大好き」な人が多いのだ。
 
「ユニクロ」は2018年の現地売り上げが、過去最高となる1300億円を記録した。韓国にも複数のファストファッションブランドがあるが、売り上げはユニクロの10分の1程度と完敗している。韓国人は、その品質に惹かれて“あえて”日本製品を買っているのだ。「無印良品」も5年間で売り上げを3倍に伸ばし、その額は130億円を超えた。確かに百貨店やショッピングモールに行くと、必ずと言っていいほどこの2つの日本ブランドが店を構えていて、大量に商品を買い込む韓国人をよく見かけるものだ。現地で生活していると、韓国人がいかに「日本製品好き」かがよく分かる。
 
外食市場の“日本化”も進んでいる。ソウル随一の若者のまち・弘大(ホンデ)に向かう通りは、すし屋に居酒屋、ラーメン店などが建ち並んでいて、ハングルの看板の方が少ないほどだ。ここ4~5年で一気に日本化が進んだという。そして、近くにはやはり「ユニクロ」の店舗がある。
 
取材中に出会ったカップルは、男性のズボンがユニクロ、女性の靴が無印良品で、「よく居酒屋へ行く」と話していた。日韓関係は“過去最悪”だが、日本製品やライフスタイルを好む韓国人は少なくない。韓国人が日本の全てを嫌っているわけではないのだ。 

「日本好き」へのバッシングもあるが… 

こうした「日本好き韓国人」に対しては一部からの風当たりも強い。経済紙・マネートゥデイは、「日本文化の人気が高まり、国内消費者の間では“消費の自由”と“道徳性”について議論が起きている」と、高まる日本人気を好ましくない動きとして報じている。

韓国の一般大衆の間では、「日本は悪」という「韓国の道徳」と、「日本のビジネスモデルや製品は好き」という「消費者心理」がせめぎ合っている。ベンチマーキングと言う名のパクリは看過しがたいが、日本企業やクリエイターの頑張りにより、韓国のいう「道徳」を「消費者心理」が完全に上回る日が来るかもしれない。そうすれば、日本のイメージが変わる可能性はある。
 
「歴史問題のことになると、日本を遠ざけたくなる」。
 
街中で取材に応じた若い女性は険しい表情でこう話した。しかし、彼女が着ているTシャツには、日本漫画の金字塔「AKIRA」のキャラクターが…なかなかの「日本通」だ。消費者心理が道徳を上回る日は、そう遠くないかもしれない。 

【執筆:FNNソウル支局 川崎健太】
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川崎健太
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