8月31日夜、文科省内や与党の文教族、教育関係者に激震が走った。

その震源地となったのは、夜9時ごろ配信された記事「わいせつ教員の対策を強化へ 文科省、免許再取得制限を5年に」。

連載企画「ポストコロナの学びのニューノーマル」第4回は、わいせつ教員に対する規制強化を巡る、教育職員免許法(教免法)改正の動きを取材した。

5年で再取得なら再犯のおそれが無いのか?

この記事によると、教員による児童生徒への性暴力が深刻化している事態を受けて文科省が、わいせつ行為で教員免許を失っても3年経てば再取得可能な教免法を改正し、制限期間を5年に延長する”規制強化案”を検討しているという。

拙稿で既にご紹介した通り、わいせつ教員を2度と教壇に立たせないために必要なのが、教免法の改正だ。

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こうした性犯罪は再犯率が高く、小児性愛障害の疑いもある。もしそうであれば治療が必要で、警備や運転のように法律で就労の制限をかけるべきものだ。

小児性愛障害については、医学的知見をさらに積み重ねたうえで、「こうした行為を再び行うことはない」と合理的な判断ができるまで、免許を授与するべきでないはずだ。

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しかし、文科省が検討しているという案は、3年なら再犯のおそれがあるが、5年ならそのおそれはないとの“判断”が見て取れる。

これには文科省内部や与党の文教族からも、異論が巻き起こったという。

わいせつ教員は免許を犯罪に利用している

石田郁子さん「子どもの安全を第一に考えれば、再取得を不可能にするのは当然」
石田郁子さん「子どもの安全を第一に考えれば、再取得を不可能にするのは当然」

中学生時代に教員からの性暴力被害に遭い、性被害でPTSDを発症したとして札幌市教育委員会と教員に対し2019年2月に東京地裁に提訴した石田郁子さん(42)は、5年への延長案についてこう語る。

「本質的には現行法と変わらず、効果を想像しにくいです。教師による生徒への性暴力は、教師の立場や信頼を利用して行われる、つまり教員免許が犯罪に利用されているわけです。子どもの安全を第一に考えれば、再取得を不可能にするのは当然のことだと思います。

職業選択の自由を理由に再取得の制限をためらうのは、加害者に比重が置かれており、筋が違います」

萩生田文科相「報道を見てびっくりした」

記事が配信された翌日の9月1日の閣議後会見で、萩生田文科相は「報道を見てびっくりした」と語った。萩生田氏は7月に国会で、わいせつ教員を「非常に重要な問題」と述べ、教免法の速やかな見直しを表明していた。

「担当局でいろいろなシミュレーションをしているのは事実ですが、過日国会でも申し上げましたように、厳格化を速やかにすすめていきたいというのが私の思いです。3年が5年に延長で、よい制度に変えることができるならそれは1つの案ですが、私はその詳細についてまだ詳しく承知していません」

1日 萩生田文科相の閣議後会見
1日 萩生田文科相の閣議後会見

萩生田氏は、「児童生徒を守り育てる立場にある教師が、児童生徒に対してわいせつ行為を行うなどということは、断じてあってはならない」と述べたうえで、現行の教免法では3年で免許の再取得が可能となることが課題だと強調した。

そして萩生田氏は、報道にあった期間延長も検討課題の1つであるとしながらも、「それだけで足りるものでは全くないと思っておりまして、より幅広い視点から実効性のある方策を検討し、できるかぎり速やかに国会に法案を提出できるように準備を進めていきたい」と改正の早期実現にあらためて意欲を示した。

文科省は性暴力を許さない毅然とした態度を

前述の石田さんは、こうした案が出てくる文科省の姿勢に懸念を示す。

「必要以上に慎重だと思います。文科省は『教師による生徒への性暴力は許さない』という毅然とした態度をとる必要があります。処分対象の加害者教師だけではなく、被害生徒、保護者、それを取り巻く社会全体を考えるべきです」

石田さんは、自身で教員による性暴力被害の実態調査に取り組んでいる。7月に法務省にアンケート結果を提出し、9月には文科省に提出する予定だ。

(関連記事:「教員による児童生徒への性暴力」被害者による実態調査でわかったいくつかの傾向とは

「文科省へのアンケート提出時期は、いまのところ9月の予定です。既に行った2回目アンケートはいま集計中で、10月か11月頃に提出できればと思っています。実態調査や防止対策など、私自身、協力できればと思っています」(石田さん)

わいせつ教員の教育現場からの追放には、文科省内に及び腰か、抵抗する勢力が存在するようだ。一体どこを向いて仕事をし、子どものほかに何を守ろうとしているのか聞いてみたい。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。