韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年に、8月14日を「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」と定め、今年も記念式典を行った。韓国では現在、歴史認識を巡る日本との問題にどのような変化が起きているのか。文政権の歴史認識は従来の韓国と比べどの点が異なっているのか。識者を交えて分析を深めた。

相変わらず国際法より国民感情が優先する韓国

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長野美郷キャスター:
釜山の日本総領事館前の少女像について新たな動きが。

松川るい 自民党 外交部会 副部会長:
非常に不愉快ですし、明らかなウィーン条約違反。韓国政府に即刻撤去する義務があるが履行しておらず残念。一旦は撤去しようとしたが、流れが変わり合法的に設置できる決定が行われ遺憾。抗議したい。

反町理キャスター:
青瓦台はこれについて何と言っている?

武藤正敏 元駐韓大使:
正式には許可を出していないが、釜山の市長が「共に民主党」の党員で、慰安婦に寄り添った決定を下した。そもそも韓国外交部などが疑問を持っていても、国際法より国民感情を優先する青瓦台に何も言えない。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
民間レベルのことに対しては日本政府としても言えない。リゾート地の植物園に慰安婦像と安倍総理とされる土下座像を作った件もそうだが、韓国の皆さんの常識の問題。そして今回釜山の件は、韓国外務省が自制を伝えたのみ。丸山総領事から国際法違反であるという話は伝わっているが、国際的に非常識だと韓国世論にアピールしなければいけない。

李泳采(イ・ヨンチェ) 恵泉女学園大学大学院 教授:
土下座像について、作者は作品だと言っているが、評価は分かれて批判もあった。作者の言い分では、これは4年前からあったが今までは問題にされないで、今年問題になったのだと。本人はこれが安倍総理だとは言わない。なぜ謝罪しているのかというと、慰安婦に対する家父長制社会における男たちの責任を示していると。
法律違反があるかもしれないが、国民が慰安婦問題はまだ解決されていないと言って政府がそれを抑えるということが社会的に広がるのは、今の時代精神となっている。

反町理キャスター:
それは、韓国では国民感情が国際法より優先するという意味の説明ですよね。

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:
領事館・大使館前に設置する理由は、責任もあるし解決してほしいという世論の背後にある国民感情。作っている団体は政治問題として取り扱ってほしいということ。

「韓国の建国は1945年ではなく1919年」文政権の歴史認識

長野美郷キャスター:
日本は8月15日に75回目の終戦記念日を迎え、韓国でもこの日は日本統治から解放された「光復節」。文在寅大統領の建国に対する考え方が2017年の式典で示されている。建国は1919年3月、政府樹立は1948年8月という考え。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
文大統領のこれまでの8.15記念演説で最もいかんと思ったのは、韓国政府樹立の話ではない。1945年8月15日、韓国では解放独立を意味する「光復」というが、これがどこからもたらされたかということ。韓国が日本の支配から独立した背景の歴史的事実を、文大統領は「外からもたらされたものではなく、我々が力を合わせて成し遂げた」と言った。韓国教科書でも、同時に我々の努力にもよると書いてはいるが、連合国の日本に対する勝利の結果だと書いている。これを文大統領は「我々の努力で実現した」と言った、これは相当な歴史歪曲、韓国の国民を誤解させる。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員
黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:
韓国国民に初めて主権意識が生まれたのは1919年。主権を取り戻すための運動が植民地時代にもあって、8.15までにも独立運動があって、という延長上に文政権の歴史認識がある。今までは敗北意識、自分たちで勝ち取れなかった受け身の独立だという意識が強かった。
日本で「与えられた民主主義」という表現があるが、文在寅政権では韓国は抵抗して自ら取り戻したと強調して、国民が歴史の主人公だと訴えている。

「韓国は日本と戦って独立を勝ち取った」という歴史歪曲

松川るい 自民党 外交部会 副部会長
松川るい 自民党 外交部会 副部会長

松川るい 自民党 外交部会 副部会長:
日韓が戦ったことは一度もない。当時の韓国は大日本帝国の一部で、日本と一緒になって米中と戦ったのが事実。でもそれでは承服できないので、色んなところで日本と戦っていたという歴史に変えたいという願望があるのだろう。でも指摘の通り、韓国の歴史では勝手に光がやってきたのが残念だったと教えていた。これを文大統領がはっきり変えたことに問題がある。1919年の上海臨時政府も2年間ほとんど活動しておらず、その後1945年まで相当の時間が残っていて事実関係に無理がある。日本と韓国の歴史がパラレルワールドになったまま本当に何も噛み合わないという関係になりかねないので心配。

武藤正敏 元駐韓大使:
文在寅大統領の歴史観がいかに狂っているか。3・1独立を北朝鮮と祝おうとして無視されたことがあった。北朝鮮はパルチザンで戦ったが、上海臨時政府はなにもしていないと。韓国は日本と戦って勝ったことはない、戦ったことすらない。

武藤正敏 元駐韓大使
武藤正敏 元駐韓大使

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
韓国は日本と戦ったことはない。李泳采さんは戦ったことがあるという立場だと思うが、韓国ではメディアを中心に、日本と戦ったという歴史的キャンペーンで国民教育がなされている。

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:
上海臨時政府が連合軍に参加する直前に終戦となったから最後の決戦はなかった。しかし1945年まで戦っていたというのが文政権の歴史認識。サンフランシスコ講和条約にも参加したいと言ったのに、吉田内閣が韓国だけは排除してくれとアメリカに言ったのだと。日本の歴史教育を受けた歴史家は日本との決戦はなかったと言って自らの国家を否定してきた、という立場。

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授
李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授

反町理キャスター:
歴史の再解釈と改竄は違いますよね? 大戦中に日本軍と戦って独立を勝ち取ったのだという人が韓国に増えていると。今後の日韓関係に災いがあると思わないか?

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:
サムスンやドラマのヒットなどで韓国は以前よりも自信を取り戻している。経済的にも国際的にも、昔のように日本に対して負けていると思っていない。それと歴史認識が重なって、植民地時代は弱かった、でも歴史認識でも正々堂々戦ったことになれば自信を取り戻せると。

反町理キャスター:
それで不幸にならないのか?

李泳采 恵泉女学園大学大学院 教授:
日本ではこうした歴史は知られてないからギャップが大きいと思うが、平等な関係で向き合ったほうが関係改善になるのではないでしょうか。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月14日放送