かき氷に輪投げや射的。暑い中、浴衣を着て焼きそばなどを食べながら花火を眺める。そんな夏祭りなどのイベントが、新型コロナウイルスの影響で中止が相次いでいる。

そして夏祭りのお楽しみの1つといえば金魚すくいがあるが、中止によって金魚業者も打撃を受けているという。

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日本の金魚の有数の産地、熊本県長洲町は、5月の連休に行われる「火の国長洲金魚まつり」など、金魚の名が使われたイベントも行われており、金魚がシンボルとなっている町だ。

そんな金魚の名産地は、コロナ禍でどんな影響が出ているのか?そして出荷できなかった金魚はどうなってしまうのか?
金魚を育てる長洲町養魚組合の松井一也組合長に話を聞いた。

夏が金魚出荷のピーク

ーー金魚すくい用の金魚に関して教えて。

九州は琉金(リュウキン)という種類の金魚を主流に使っています。ちなみに、大阪や名古屋・東京になると和金という種類を使います。

琉金は丸い体に各ヒレが長く、優雅に泳ぐ姿がキレイな種類。色は赤白の更紗(サラサ)と赤の素赤(スアカ)が基本で、大きくなると約10センチ以上にも成長します。

イベント用の大きさは決まっていて、頭から尾っぽまで約2~3センチくらいの大きさです。

琉金 提供:熊本県長洲町役場
琉金 提供:熊本県長洲町役場

ーー金魚を主に出荷する先は?

主に九州圏で、同業者にも出荷するし、イベントでは屋台などもそうですが、商工会や幼稚園などさまざまな所に出荷します。


ーーどれくらいの金魚を育てている?

育てている金魚全体の現状の数は分からないけど、約30万匹くらいですかね。最初産まれた時は何百万もいましたが、それが自然に鳥や害虫などに食べられたりして減っており、正確な数は数えられないのです。

金魚すくい用の琉金は全体の7・8割ほどで約20~25万匹だと思います。
残りが、オランダシシガシラやランチュウなどの主に観賞用などに飼われる特殊金魚を育てています。


ーー金魚の出荷のピークは?

メインは7~10月に出荷します。
4月の初旬から卵をとり、出荷は3カ月後の7月の頭から始まります。夏よりは少ないですが、ピークを過ぎた後も随時出荷していきます。

ランチュウ 提供:熊本県長洲町役場
ランチュウ 提供:熊本県長洲町役場

九州の金魚すくいが琉金になった理由に関しては、「昔から琉金を飼っており、自然とそうなったのだと思う」と話している。続いてコロナ禍の影響を聞いた。

今年は出荷がほぼゼロ

ーー例年に比べての現在の出荷は?

3月頃から新型コロナウイルスの影響があり、九州の主だった祭りやイベントがどこも中止になったことで、出荷の割合は例年に比べるどころか、現状ほぼゼロの状態で、例年だったら出荷されている金魚がいまだに残っている状態です。
同じく売り上げも、イベント用の金魚に関してはほぼゼロの状態です。


ーー出荷がないので売り上げもない、現状に対してはどう思う?

長洲養魚組合のみんなとも話していますが、もうしょうがないよねという気持ちです。

5月にある「金魚祭り」には例年多くのお客さんが来ていたけども、コロナの影響で今年は中止になり、私たちもそうだが、楽しみにしていたお客さんたちもガッカリしているようです。実際「金魚祭り楽しみにしてたのに中止でガッカリした」というような電話も何件かありました。

恒例行事がなくなって残念だけども、どうしようもないし、しょうがないと思っています。

九州金魚すくい選手権大会の様子 提供:熊本県長洲町役場
九州金魚すくい選手権大会の様子 提供:熊本県長洲町役場

大きくしないように育てて来年用に

ーー残っている金魚は今後どうなる?

まず手段としては、金魚の「せり市」に出す人もいます。または、来年用に持ち越すかですね。

金魚は広い所に少ない数で育てると大きくなります。大きくする金魚は観賞用にしたりするオランダシシガシラなどの特殊金魚で、金魚すくい用の金魚は大きさが決まっているから、大きくしないように育てます。

その大きさを保って育てるのに技術がいる。その技術を使って来年用に持ち越します。


ーー今後については?

例年よりも来年用の金魚が多いけれども、大きさは技術でカバーして、来年にはコロナが収束するのを期待して育てていこうと思っています。
ただただ一日も早くコロナが収まってほしいという思いです。

オランダシシガシラ 提供:熊本県長洲町役場
オランダシシガシラ 提供:熊本県長洲町役場

ちなみに、金魚すくい用の金魚だけでなく、観賞用などとして楽しむ特殊金魚の売り上げも半減しているという。例年ならば養魚場に来るお客さんが、新型コロナウイルスの影響で外出を自粛し、さらに、県をまたいでも来ないためではないかとのことだ。

松井組合長は「養魚で生計を立てている者として、出荷が出るにしても出ないにしても、池の方に金魚をいっぱいにして育てないといけないと思っている」と、イベントがことごとく中止になって大変苦しい現状でも、金魚をシンボルとする長洲町の養魚場としての誇りを教えてくれた。

また、8月20日の長洲町の臨時会で、新型コロナウイルス感染症対応の国からの臨時交付金を利用して、長洲町の伝統的産業の金魚を守るために、長洲町養魚組合に地方創生費として、町から2000万円の補助金が出ることが決まったという。

このピンチに町全体で対応していくそうだが、来年こそは夏の風物詩の金魚すくいが楽しめることを願うばかりだ。
 

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プライムオンライン編集部
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