イスラム教の預言者ムハンマドの血筋を引く証しとされる、黒いターバンを着けた男性は、イランのライシ大統領(63)。イラン国営通信は、ライシ大統領やアブドラヒアン外相らが乗ったヘリコプターが墜落し、死亡が確認されたと伝えた。

ライシ大統領は19日、隣国アゼルバイジャンの大統領らと会談し、両国国境付近に造られたダムなどの完成式典に出席。その後、外相らとともに3機のヘリコプターで戻る際、ライシ大統領を乗せた1機が墜落した。

捜索は難航したが、救助隊が燃え尽きたヘリの残骸を発見したという。

最高指導者ハメネイ師の後継者とも目されていたライシ大統領に、何があったのか。

イラン国営テレビでは、アナウンサーが、ライシ大統領の訃報を速報で伝えた。

イラン国営テレビ「親愛なるライシ大統領が国民奉仕中に殉職しました」

死亡したライシ大統領は、最高指導者ハメネイ師と故郷が同じで、ハメネイ師の愛弟子のような存在。また、かつて司法界に身を置いていた当時は、反体制派の大量処刑に関与したとされている。

2021年に大統領に就任して以降も、国内の反政府デモを厳しく弾圧したほか、外交面では、反欧米・反イスラエルの強硬路線を貫いてきた。

最高指導者の有力な後継候補が死亡したことで、国内が混乱し、中東地域が不安定化するリスクも取りざたされている。

事故が起きた日の夜に撮影された、事故現場付近の捜索の映像。濃霧などの悪天候で、数メートル先がかすんで見えない状況で捜索活動が難航した。

イラン国営テレビは、この悪天候のため事故が起きたとの見方を伝えた。

またロイター通信の取材に対して、イスラエル側は関与を否定している。

ただ、今回のヘリ墜落で、イランの航空能力の弱さが露呈されてしまった。今回、大統領らが乗っていたのは、「ベル212」という1960年代のヘリコプターだという。

こういった状況を見ると、ハマスやヒズボラといったイランの同盟組織は動揺が走るのではないかとみられる。