激しい戦闘が続くウクライナ東部で14日、アメリカのブリンケン国務長官がキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談を行った。
また、ブリンケン国務長官が地元クラブでギターを弾いて歌っている様子も見られ、この様子に市民からは賛否の声が上がっている。


「このコンサートは不適切」クラブで歌う姿に批判の声も

16日、ウクライナ東部では激しい戦闘が続いている。

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プーチン氏は、習近平氏との首脳会談を行い、蜜月をアピールしている中、ウクライナはアメリカからの支援がより重要になってきている。

支援が届くまで、あと数週間ほどかかるので、砲弾も不足して大変厳しい状況だと思われる。この5月は、ウクライナにとって最も過酷な一カ月だとCNNも報じている。

この状況を受けて、アメリカのブリンケン国務長官が14日、キーウを電撃訪問した。ゼレンスキー大統領らと会談を行い、20億ドル=日本円で約3100億円の追加支援を行うことなどを発表した。

普通の外交にも見えたが、あるシーンが物議を呼んでいる。

ブリンケン国務長官は、「アメリカはあなたたちと共にいる。自由なウクライナと世界のために、世界中が戦っている。だから、ちょっとやってみようか!」と話すと、ギターを弾き始めた。
キーウ中心部の有名なクラブで、地元バンドの演奏に飛び入りしたブリンケン国務長官が、ギターを弾いて歌い出したのだ。

歌っている曲は、70年代を代表するアメリカのミュージシャン、ニール・ヤングの「ロッキン・イン・ザ・フリーワールド」という曲で、自由の大切さを呼びかけた歌だ。アメリカの国務長官の登場で、客も盛り上がっている。

ただ、ロシアとの戦争中という苦境の中で、ウクライナ国民の目にはどう映ったのだろうか。

海外メディアなどは、ブリンケン国務長官のギター外交について「意見が2分している」との見出しで報じている。また、退役軍人が投稿したSNSでは「同盟国からの支援がない中で、多くの人が死んでいる。このコンサートは不適切」と強く批判している。

一方で、「ロシアは私たち(ウクライナ人)が楽しむのをやめることを望んでいる」とか「戦時下でもクラブに行く自由はある」など、ブリンケン国務長官のクラブ訪問に賛同する人もいて、市民の声が分かれている。

もし、日本の大臣がウクライナで歌を歌っていたらと置き換えると、違和感を感じる人もいるかもしれないが、戦争中でも楽しむべきという市民の声もよく分かる。

退役軍人の店訪問も…親密ぶりアピール

ロシアが中国と接近する中で、ブリンケン国務長官はこれまで以上に「ウクライナとの連帯」を強調したかった、ということだろうか。

今回の訪問でも、正式な会談や犠牲者の慰霊もしているが、アメリカやヨーロッパでウクライナへの支援疲れが囁かれる中で、儀礼的な外交訪問から一歩踏み越えて、個人的な友人としての姿勢を見せたかったのではないかと思われる。

ウクライナのクレバ外相とピザを食べている様子も伝えられたが、このレストランは退役軍人が立ち上げて話題になっている店とのことで、疲弊が伝えられる兵士らにも気遣いを見せている形だ。

ガザでの紛争が起きて以後、ブリンケン国務長官は、この半年で7回中東を訪問しているが、キーウを訪問したのは2023年9月が最後となっていたため、ウクライナにはアメリカから軽視されているという危機感があった。

そういった声を受け、歌ったりピザを食べたり、非常に親密だという姿勢をウクライナ側にもアピールしなければならない状況だったのかもしれない。
(「イット!」 5月17日放送より)

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