スマートフォンや家電、自動車など様々なものに必要な半導体。その業界を支えているのが材料や部品などを製造している企業だ。世界トップシェアを誇る分野もあり、高い技術に誇りを持って世界に製品を供給している。
半導体業界のサプライチェーン
半導体業界は、様々な部品や材料を製造する企業による“サプライチェーン”によって支えられている。
この記事の画像(16枚)佐賀県内には約40の半導体関連企業や工場があり、その1つが“世界2位のシェア”を誇る材料のメーカー「SUMCO」だ。
SUMCOが製造しているのは半導体の材料「シリコンウェーハ」。佐賀県内には伊万里市と江北町に工場がある。
シリコンウェーハは、いわばピザ生地のようなもので、この上にいくつもの回路を作り、切り分けて半導体ができあがる。
SUMCOの龍田次郎副社長が“最大の製造拠点”という伊万里市の工場内部を特別に取材させてもらうことができた。
工場は、高い品質を保つため、ほこり1つ入れることができない極めて厳しい環境のクリーンルームとなっている。
極限まで不純物を取り除く
シリコンウェーハは、自然界の石や砂にも含まれる「シリコン」から作られるが、半導体の材料に使うため不純物を極限まで取り除かねばならない。
その純度は数字が示している。
その数字は…
99.999999999%
「9」が11個並ぶことから「イレブンナイン」と呼ばれる極めて高い純度だ。
また、シリコンウェーハは“世界一平らな素材”とも言われる。
工場には、ウェーハの平坦度を測定する測定器があり、高い品質を保つため、検査の工程はすべて自動化されている。
世界の半導体メーカーに供給
SUMCOで作られたシリコンウェーハは、台湾の「TSMC」や韓国の「サムスン」など、世界の半導体メーカーに供給されていて、世界シェアは2位を誇る。
SUMCOは伊万里市の工場の敷地内と吉野ヶ里町に新しい工場を建設する計画だ。
国は最大750億円を支援することにしていて、半導体の素材分野の強化が期待されている。
吉野ヶ里町の工場では、業界で“最先端“となる「直径300ミリ」の製品を生産する方針だ。
SUMCOの龍田次郎副社長は、「半導体シリコンの業界は過去20年30年みても上下しながら間違いなく右肩上がりに上がってきているので、必ず吉野ヶ里工場を建設して、300ミリサイズのラインをつくる」と意気込みを語った。
世界の半導体市場は今や過去最高の約80兆円。
日本は元々、半導体のシェアは世界一を誇っていたが、現在は1割ほどに減少し、衰退したといわれている。
しかし、部品や素材を作る関連企業の活力は衰えてはいない。
世界シェアトップクラスの分野も
SUMCOなどが製造する半導体の材料(素材)シリコンウェーハは世界シェア1位。半導体を製造する「装置」も世界シェア2位を誇っているのだ。
半導体製造装置の”材料屋”
半導体を製造する「装置」の業界を支えている企業のひとつが佐賀・鳥栖市に工場を持つ「白銅」。
半導体の製造装置には、アルミニウムやステンレスが多く使用される。この企業は、半導体の製造装置を作るためのいわば”材料屋”だ。
多種多様な装置の部品を作れるように金属を様々な形状に切断・加工して供給している。
取引先の要望に応える製品をつくるのは簡単ではない。
白銅・九州工場の野村俊昭工場長は、「取引先が要望する公差(サイズの誤差)が厳しいのでそれに応える体制を整えている」とその苦労を語った。
多種多様なニーズに対応
半導体業界を支えるサプライチェーンは単純ではない。
白銅のような企業が供給する金属を使って、半導体製造装置の“部品”をつくる企業もある。
アルミニウムやステンレスなど扱う金属の種類によって企業は様々で、厳しい精度と多種多様な部品の要望に対応しているという。
佐賀市のある企業の経営者は次のようにその苦労を話した。
中島製作所 中島弘喜社長:
TSMC、サムスン、インテル、東京エレクトロン、さらにその客のエンドユーザーは、個別に装置の仕様が異なるんです。当社にもいろいろな仕様の要求がきますので、そこは知恵の出しどころ、アイデアの出しどころ
国も数兆円規模の投資を進める半導体業界。
「半導体」と一言で言っても、その製造には約500から1000もの膨大な工程がある。
半導体の関連企業は、それぞれの分野で高い技術に誇りを持ち、業界を支えている。
(サガテレビ)