歴史的な円安の影響が身近なところで広がっている。エサ代や燃料費の高騰が続く中での円安。酪農家はいま、厳しい経営を強いられている。

牛乳を“支える”人たち

福岡・宇美町の宇美小学校では乳業メーカーによる出前授業が開かれた。
牛乳が苦手な子どもを減らそうと企画された今回の取り組み。牛乳の栄養を分かりやすく伝えることで子どもの間で進む“牛乳離れ”を防ごうとしている。

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「手を合わせて下さい。いただきます」待ちに待った給食の時間、牛乳を飲む子どもたち。
「タンパク質とかカルシウムとか、そういうものが入っているのが分かりました。そして次からお母さん牛に感謝をして食べます」「牛乳、苦手だから「頑張るぞ!」という気持ちで飲みます」と牛乳に入っている栄養を意識しながら給食を楽しめたようだった。

久留米市の「永田ブルースカイファーム」。県内でも有数の規模を持つ農場だ。

エサは配合飼料と米粒が付いたままの穀草に、近所の焼酎会社で出た廃液を混ぜているという。

「永田ブルースカイファーム」永田弘さん:
焼酎が入ってます。彼女たちは、毎日いい気分です(笑)。まあ、我々はホテルマンのようなもの。ホテルに来たときに快適に過ごしていただくように。彼女たちにもここをホテルだと思って快適に過ごしてもらうことで生産性が上がる。

この農場で飼育している乳牛は300頭以上。生産量は年間で約3300トンに及ぶ。

需要減少と飼料価格の高騰さらに円安も

“牛乳離れ”が加速する中、牛乳の生産を守る酪農家の現状はどうなのか。

永田弘さんが「ここ2、3年は厳しい状況になってるんで、離農される方や廃業される方が増えていますね」と話す通り、福岡県内では2022年度に18軒、2023年度に10軒の酪農農家が廃業に追い込まれた。

こうした状況は「酪農危機」と呼ばれ、コロナ禍による「乳製品の需要の減少」とロシアのウクライナ侵攻など国際情勢の変化による「飼料価格の高騰」が主な要因とされている。

いまここに歴史的な円安が加わり、酪農を取り巻く状況はますます悪化しているという。

「永田ブルースカイファーム」永田弘さん:
経営を圧迫しているひとつの要因が、配合飼料という北米から調達している原材料を作っている餌。北米産のトウモロコシとオーストラリア産の綿実、あとは南米産の大豆。

さらに、飼料だけでなく牧草の多くも輸入に頼らざるを得ないのが現状で、円安の影響は計り知れないと嘆く。

「永田ブルースカイファーム」永田弘さん:
年間の全てのエサ代が9000万円から1億円ぐらいだったんです。それが去年は1億3000万円ぐらい…。歯を食いしばって頑張って行くしかない。牛乳を応援してくれる消費者のために頑張っていくしかない。

“牛乳離れ”の懸念から値上げ見送り

この急激なコストアップをどこまで牛乳の価格に反映させることができるのか。

福岡市での牛乳の小売価格の推移をみると、まず2022年11月に大幅に値上げして2023年8月にも再び大きく値上げした。現在は247円で推移していて、この春の値上げも検討されたようだが、これ以上の値上げは、さらに“牛乳離れ”が進むという懸念から値上げは見送られた。

政府が酪農への補助をさらに強化することも重要だが、日本の酪農を守るため私たちに出来ることは、牛乳をたくさん飲むこと。

飲み支えていくことが大切だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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