「教材生物バザール」という全国でも珍しい取り組みがある。広島県立教育センターが主催し、教材となる生き物を“無償”で提供。「児童・生徒がホンモノに触れる機会を…」と県内の小中学校から教職員が集まった。

27年続く、毎年人気のイベント

葉っぱの上をクネクネと動くモンシロチョウの幼虫。水槽の中で首をのばすイシガメ。会場に集められた生き物はなんと約170種類。顕微鏡でないと観察できない小さな生物からハムスターまで、大小さまざまな生き物が一堂に会した。

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5月13日、観察や実験のために学校で飼育する生き物を無償で提供する「教材生物バザール」が東広島市の県立教育センターで開かれた。集まったのは県内の小中学校の教職員。児童・生徒が“ホンモノ”に触れる機会を増やそうと参加した。

この「教材生物バザール」は1997年に始まり、2024年で実に27回目。毎年、先生たちから人気のイベントだ。いくつか過去の事例を振り返ってみよう。

2001年、ほとんどの参加者が持ち帰ったという「メダカ」。その背景に、川がコンクリートで固められ、メダカが手に入りにくくなった事情があった。2005年にはカエルやヘビなど両生類やは虫類に触れられるコーナーが新設。

2005年に「は虫類・両生類」に触れられるコーナー新設
2005年に「は虫類・両生類」に触れられるコーナー新設

2023年の一番人気はカブトムシの幼虫だった。さて2024年はどんな盛り上がりを見せたのだろうか。

「ホンモノを求めてきました」

メダカのコーナーは今回も大人気。先生がひっきりなしに訪れ、ビニール袋に入ったメダカを持ち帰っていく。
「元気そうですね。お腹が大きいメダカも…」

別の場所では、1匹ずつイモリのしっぽをつかんで水槽に移している。

「イモリ」を見たことのない児童・生徒のために…
「イモリ」を見たことのない児童・生徒のために…

子どもたちのために真剣な表情で生き物を集める先生たち。中には、大きなかごが生き物でいっぱいになる先生もいた。

水中の小さな生物・ボルボックスを持ち帰る中学校教師は「ボルボックスは田んぼに普通にいますが集めるのが大変。これだと生徒自身がスポイトで取って顕微鏡で観察できるので」と話す。

ボルボックスを吸い取って容器に移す中学校教師
ボルボックスを吸い取って容器に移す中学校教師

こちらの小学校教師はカブトムシの幼虫をゲットしたようだ。
「ぜひこれだけはゲットしたかった。最後の1つでした。本当だったら卵から幼虫、さなぎという順に観察していきたいが、生き物は思うように育ってくれなかったり難しい。時には映像で見せたりもするが、じかに触れさせて観察したいなという思いでホンモノを求めてきました」

背景に、生き物に触れる機会の減少

先生たちが“ホンモノ”にこだわる理由とは…。
ある中学校教師は「今の子どもたちは動物・植物・昆虫に触れる機会が少ないので、授業の中で実物に触れさせる機会を作っていきたい」と話していた。

今回、約170種の生き物の中でも珍しいと話題を集めたのがハムスターとフクロモモンガだ。

そのフクロモモンガを手にした中学校教師はこう話す。
「イヌやネコを飼っている子はいても、なかなか生き物に触れていない子もいる。生き物のかわいさ、命というものを感じてほしい」

生き物とのふれあいが減少していることについて、「外に出ると危ない、川で遊ぶのは危ないなどと言われる時代なので好きになるキッカケがない」と懸念する先生もいた。

県外の大学や水族館の研究機関が生き物を提供するために訪れるというこのイベント。提供する側も、自分たちが研究している生き物をぜひ子どもたちに知ってほしいという熱い思いがある。参加した先生たちにとっても、実際に触れて知見を深める場になった。

(テレビ新広島)

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