新年度に入って1カ月がたち、新生活に慣れてきた人がいる一方で、環境が変わると知らぬ間にストレスがたまっていたりする。そんなストレスを解消するための生理現象に「歯ぎしり」や「食いしばり」が起こると考えられている。そのメカニズムや改善方法を専門医に聞いた。
「歯ぎしり」には2種類ある
街頭で歯のトラブルについて聞くと、「歯医者に寝ている時に強くかむ傾向があると言われた。ちょっと痛い」「家族にその傾向がある。寝ている間にかみ過ぎてしまうのか、顎が痛くなるので病院で治療を受けた」などの声が上がった。
この記事の画像(8枚)多くの人が抱える口の中の問題の一つ「歯ぎしり」について、歯の専門医・福井赤十字病院の山田和人医師に聞いた。
福井赤十字病院・山田和人医師:
歯と歯がかみ合う状態がいわゆる歯ぎしり。寝ている時に勝手に動く歯ぎしりと、起きている時に食いしばってしまう歯ぎしりの二つがある。
放置すると身体にも悪影響
では、なぜ歯ぎしりは起きるのか。原因の一つとして考えられているのが、不安や憂鬱(ゆううつ)な気持ちなど、日常生活において抱えるストレスを発散するため、「歯ぎしり」という症状を引き起こすという。この歯ぎしりは、様々な悪影響を引き起こす。
福井赤十字病院・山田和人医師:
歯が削れる、折れる、かぶせているものが割れてしまうとは別に、顎(がく)関節症になったり痛みが持続的に起きたりする。
放っておくと、歯の健康だけなく身体の健康にも影響を及ぼす可能性がある。また、歯ぎしりは、別の病気と併発して起きる場合もあるという。
福井赤十字病院・山田和人医師:
最近の論文では、逆流性食道炎で食道から酸が上がってくるのを、歯ぎしりのようにかむことによって飲みこむ場合があるので、逆流性食道炎を治療することによって歯ぎしりが治まったという報告もある。
ただ、歯ぎしりは寝ている間に無意識に行っていることが多く、自覚が難しい。山田医師は、「歯が折れたり、歯や顎に痛みがある場合は歯ぎしりの可能性があるが、本当に歯ぎしりなのか、別の要因なのかは区別がつかないので、歯医者でみてもらうのが一番いい」と話す。
マウスピースで歯ぎしりを治める
では、「歯ぎしり」と診断された場合は、どんな治療法があるのか。
福井赤十字病院・山田和人先生:
生理的なものを完全になくすのは不可能なので、「スプリント(マウスピース)」をかぶせる。歯ぎしりをしても、ほとんど音がしなくなり、歯も削れないので、スプリントをするだけで多くの人が治まってくる。
症状を自覚するのが難しい歯ぎしりだが、放置すると様々な身体の不調につながる。普段の歯磨きに加えて、日頃から歯の状態チェックをしよう。原因や症状を知ることが、健康な歯を守ることにつながる。
(福井テレビ)