長崎の知られざる街の魅力を発掘し、県内21市町をめぐる。カステラ・ちゃんぽん・皿うどんだけではない、長崎には脈々と受け継がれた味や新名物が続々と生まれている。今回は香りも味も深い長崎・東彼川棚町の「くん製」だ。

川棚町の新名物誕生

長崎市中心部から車で走ること約45分の場所にある長崎県の中央部にある東彼杵郡川棚町。大村湾に面し、日向の棚田など、自然豊かな町だ。

「日本の棚田百選」にも選定されている日向の棚田(川棚町)
「日本の棚田百選」にも選定されている日向の棚田(川棚町)
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そんな川棚町で今、新名物として話題になっているものがある。香ばしい香りと煙が立ち込める「Smoked SANATA」で作られていたのは「くん製」だ。

地元出身の三好史朗さんが趣味で始めたくん製づくり。2023年9月からはインターネットで販売し始めた。カキやチーズ、卵など現在ラインナップは7種類。地元の食材がほとんどだ。

味の決め手は「調味液」と「チップ」

おいしさのポイントは2つ。まずは味付け。

ゆで卵を漬けるのは、バジルやローリエなど5種類のハーブを使ったオリジナルの調味液だ。

――なぜ燻製にする?
Smoked SANATA​・三好史朗さん:
現地に行かないと食べられないものが、遠くにいても同じような鮮度でおいしさで食べられるというメリットがある

もう一つは、くん製の命ともいえる「チップ」。

桜・ヒッコリー・ウイスキーの樽の木片を混ぜていて、食材によって配合を変えている。

Smoked SANATA​・三好史朗さん:チーズとか卵とかナッツあたりは、どちらかというと煙を柔らかくしたような配合にしている。素材に少し癖があるものは少し(煙が)強めの桜をちょっと中心にした配合にしていて素材が一番おいしくなる配合に仕上げている

専用の棚を40度に保ち、食材をいぶす。約45分、ほんのり茶色に色づけば完成だ。

くん製醤油の「TKG」の味わい

香りと味わいが深い「卵のくん製」の味は?

KTN記者:鼻をすっと突き抜けるような香りがする。ハーブの味がしっかりとしみ込んでいる。お酒が欲しくなるような味

三好さんのイチ押しは「くん製したしょう油」を使った卵かけご飯だ。

ひとくち口に含むと、醤油の香ばしい香りが増し、くん製することによって醤油そのものの大豆のうまみが凝縮された、深い味わいになっていた。

きっかけは「パパ友」

もともと健康食品の発送業務をしていた三好さんが、くん製を作ることになったきっかけは、地元の友人だった。川棚町にある川下精肉店の川下浩輝さんは、三好さんのパパ友で10年以上のつきあいがある。川下さんは、コロナ禍のキャンプ需要にあわせてくん製作りを始めたが、精肉店が忙しく、製造を断念。三好さんが新しいことを始めたいと知り、道具をゆずった。

川下精肉店・川下浩輝さん:三好さんはすごいなと。くん製に対する思いが強かった。三好さんだからここまでできたんだろうなと思った。三好さんに続けではないけど周りの若手の人も川棚を盛り上げていこうという人がまた新たに出てくれば、川棚も盛り上がっていくんじゃないかなと思う。その一人になりたいという思いで自分も頑張っている

店舗を持たずに営業している三好さんだが、現在では取引先が増え、川下精肉店をはじめ長崎市や佐世保市、それに福岡市でも販売している。三好さんのくん製のおいしさが広がりつつある。

Smoked SANATA​・三好史朗さん:(地元の食材を広める)橋渡しが自然とできているのかなとも思うし、それがまた僕がずっと活動することで広がっていくのであれば本当にうれしい。おいしいものを作ってくれたねとありがとうねと言ってもらえるようにこれからも頑張りたい

三好さんの工房に立ち込める「くん煙」
三好さんの工房に立ち込める「くん煙」

商品はオンライン販売のほか、川棚町のふるさと納税の返礼品にもなっている。
今後三好さんのくん製が、“くん煙”のように川棚町の魅力を伝え広がる日も近いかもしれない。

こんなまちメモ

<東彼杵・川棚町>

大村湾に面した風光明媚な町。町内には九州のマッターホルンとも呼ばれる「虚空蔵山(こくうぞうざん)」を中心に山岳地が広がり、水田が多く農業もさかん。また特攻殉国の碑や魚雷発射試験場跡などがあり戦争遺構も残る。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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