5月1日、大手総合商社の「伊藤忠商事」や企業再生ファンドなどの3社共同で「WECARS」が設立された。
ビッグモーターが手がけた中古車買い取り販売事業や子会社のすべての事業を引き継ぐ。
専門家は、経営陣が新しい文化や価値観を粘り強く作れるかが、再建のポイントと指摘する。

伊藤忠商事など3社共同で「WECARS」設立

中古車販売大手「ビッグモーター」の主要事業を引き継ぐ、新会社が発足した。

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新会社「WECARS」田中慎二郎社長:
お客さまを何よりも優先し、信頼を得ること、そして事業として成長することは両立できると信じている。

5月1日に発足した「WECARS」は、大手総合商社の「伊藤忠商事」や企業再生ファンドなどの3社共同で設立され、ビッグモーターが手がけた中古車買い取り販売事業のほか、子会社のすべての事業を引き継ぐ。

また、ビッグモーターが金融庁から代理店登録を取り消された保険業務についても、伊藤忠商事の子会社の「ほけんの窓口グループ」と連携させるとしている。

取締役には元消費者庁長官、監査役には元最高検察庁次長検事らが就任し、ガバナンス体制の改善を図るという。

また、創業家やこれまでの経営陣は関与せず、コンプライアンスを強化するとしている。

経営再建できるかどうかに注目

「Live News α」では、働き方に関する調査・研究を行っている、オルタナティブワークラボ 所長・石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
── 会社経営の経験がある石倉さんは、新会社に引き継がれた事業の再建について、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
社名変更、そして経営陣の刷新で良い方向へ進んでいけるのか? 経営再建できるかというのは注目。

ただ、ビッグモーター時代に不正の温床になっていた要素を取り除いていくのは、思ったより大変な道のりが予想される。

堤キャスター:
── 具体的には、どんなことが課題になるのでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
もちろん旧経営陣による影響は大きいと思うものの、行き過ぎた成果主義、超高給な報酬、それを徹底させるマネジメント手法など、不正を生み出してしまう文化や仕組みは根深く残ってしまう可能性があり、これをどうにかしないといけない。

成果主義や高額な報酬などは制度によって是正されていくだろうが、そうなると、高給を目当てにしていた人の入れ替わりはあるはず。

そのときに重要なのは、次に優秀な人たちが入ってくるかどうか、高い倫理観を持ち、新しい経営方針に合った人たちを採用できるかどうかで、なおかつ、その人たちが社内で管理職につくなど、新しい文化を定着させる役割を担えるかが重要になる。

文化や価値観が変わるまで粘れるかがポイント

堤キャスター:
── 仕事の仕方や、それを導くマネジメントが問われるということなのでしょうか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
どうしてもビッグモーター時代に管理職をやっていた人の中には、以前からのマネジメント手法や管理方法を引きずってしまう人もいるだろう。

それが続いたら社名が変わり、新しい経営陣になっても、現場では以前のような商売の仕方が続いてしまうかもしれない。

だからこそ、人が適切に入れ替わり、かつ新しく入ってきた人たちが新しい文化を作ることを経営陣が粘り強くできるか。

人や制度といったわかりやすいところが変わるだけではなく、それを動かす文化や根づいている価値観がしっかり変わるまで粘れるかが、再建の大きなポイントになりそう。

堤キャスター:
事業が継承されるからといって、すべてが刷新されるわけではありません。
過去を精算して、従業員や取引先、そして何より顧客とどう向き合っていくのか、信頼の回復が問われることになりそうです。
(「Live News α」5月1日放送分より)

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