全国のガソリンスタンドの数は2023年3月末時点で 2万7963カ所と、10年前と比べると約8400カ所減りました。車社会と言われる福井県内も例外ではなく、2013年3月末時点で318カ所あった給油所は、2023年3月末には60カ所減って258カ所になりました。
   
人口減少のほか、EV車や燃費のよいハイブリッド車の増加によるガソリン需要自体の減少、そこに加えて、人手不足や経営者の高齢化による後継者難などが主な要因です。そんな中でも生き残りをかけ活路を見出している県内のガソリンスタンドを取材しました。
   
福井市開発にあるガソリンスタンド「ENEOSマインドKAIHOTSU SS」です。運営するのは建材などを取り扱う福井市の井上商事です。井上商事は、この他にも県内で3つのガソリンスタンドを経営しています。
   
井上商事 石油部・陣内未日呂部長:
「福井市内は車社会ということもあり、目立って大きな減販は見受けられない。ただ郊外に行くと(コロナ禍以降)少し減販が続いている状況」 
    
経済産業省が2023年3月に発表した資料によりますと、人口減少に加え、EV車や燃費のよいハイブリッド車の増加など複合的な理由によって、ガソリン需要は年間で平均2.3%ずつ減少し、2027年度には2022年度比で約10%少なくなる見通しです。
   
このガソリンスタンドでは昨年末に、次世代のエネルギーにも対応しようとEVの急速充電器を導入しました。導入当初は1週間に1~2台でしたが、最近だと多い日で1日5~6台の利用があると言います。もちろん、そのサービスの充実の中には「スタッフの接客力向上」も掲げています。
 
井上商事 石油部・陣内未日呂部長:
「お客様の需要に応え続け、燃料を供給し続ける。そこの使命を果たすための設備投資だと思う。これから燃料が減販していく上で、他のサービスを向上していくことを心掛けて、最新機械の導入や少しでもいいものを取り扱うことで、結果、お客様に満足していただける」
     
一方、越前市今立地区にあるガソリンスタンド「越前和紙の里SS林石油店」を取材しました。実は業界の約7割が、林石油店のように1つのガソリンスタンドを運営する小規模事業者です。林石油店では、約20年前から、地域のネタなどを盛り込んだ店先の看板を作っています。この看板を作っているのが2代目社長の林直樹さん(67)です。
  
越前和紙の里SS林石油店・林直樹社長:
「日常のことや、地域の行事を載せているので、あまり売り込み性はない…」
  
店舗の中に案内してもらうと、各地の特産品や地場産品を置いていました。コーヒーチケットや越前和紙のタンブラーも販売しています。店内には本や防災グッズも並んでいます。

越前和紙の里SS林石油店・林直樹社長:
「“ガソリンも売っているガソリンスタンド”というのがコンセプト。地域の人が必要なもの、和むものを集めている。話題提供にもなるし」
  
林社長は店を中心に地域のコミュニティの場をつくり、たまに給油してもらえる関係を目指しています。常連さんは「毎日来ている。認知症になるのが嫌だ。場所が和やかだと盛り上がって笑いも出る」「(きょうガソリンは)入れていない。ほとんど車乗らないから」などと話していました。
  
また、2024年度から包括支援センターの職員も定期的に訪れるようになり「(高齢者が)普段からどんな活動しているかを知りたい」と話していました。
 
このほか約30年前から毎月、地元の情報を盛り込んだチラシを新聞に折り込んで配っています。林社長は、小規模事業者が生き残るには店の「ブランド化」が必要と話します。
 
越前和紙の里SS林石油店・林直樹社長:
「地域に必要なことをいかにして探すか、それを日ごろの活動の中でどう探していくというのがブランド化のポイント」
 
次世代のエネルギーを取り入れ、サービスの「質」の向上を目指す企業、地域密着で「コミュニティの場」としての独自のブランド化を掲げる会社、それぞれのやり方で活路を見出し、生き残りを図ります。

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