5月1日から阪急・西宮北口駅周辺が「客引き行為」の禁止区域となる。

大学や塾が多い文教エリアで、客引き行為が、なぜ横行しているのか取材した。

【動画】“学習塾の聖地” 西北 ガールズバーなど『客引き行為』が禁止区域に 保護者「危ないので迎えに来てる」

■関西で住みたい街ランキング2位の人気の街「にしきた」に異変…夜になると姿が変わる

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約50万人が暮らす兵庫県西宮市。駅前には阪急西宮ガーデンズがありファミリー層が多く住む街だ。そんな「にしきた」の愛称で知られる阪急・西宮北口駅といえば…

記者リポート:阪急西宮北口駅周辺です。駅前を見てみますと、学習塾が多いエリアですね。

100を超える学習塾が立ち並ぶ文教地区として知られ、関西で住みたい街ランキング2位の人気が高い街だ。

しかし、そんな「クリーン」なイメージがある街に異変が起きている。それは、ガールズバーや居酒屋の客引き行為。

にしきた商店街 矢田貝充彦会長:一番人通りが多いのがここの通りなので、キャッチの人はここの筋に固まってます。5メートル、10メートルおきにずらーっと。

10年前は1軒だけだったガールズバーは8軒に増え、それに応じて客引きの数も増加しているのだ。

西宮市民:嫌ですね。もうちょっと取り締まってもらいたい。

西宮市民:分かってないですよ、子供たちは。『お姉ちゃんたち、寒い時に素足で寒くないんかな』って言ってましたけど。

どのように街の姿が変わるのか取材してみると…
記者リポート:午後7時です。客引きとみられる人が徐々に出てきました。

約100メートルの間に20人ほどが立ち並び、公然と客引き行為が行われていた。

この状況に頭を悩ましているのはやはり、学習塾だ。

英語塾ABC 市本哲也代表:生徒は塾を出られて右に行ったら駅なので、午後9時だと(客引きが)いますよね。

西宮北口駅近くの小学生から高校生まで、約30人が通う英語塾。なかには大人と間違われたのか、声をかけられた女子中学生もいて、授業が終わると駅まで大学生のスタッフが付き添うようにしている。

英語塾ABC 市本哲也代表:塾の前だったら『やめてくれ』と言えるが、(駅周辺)なので、嫌でも『やめてくれ』って言いにくい。もしかしたら(客引きが)いるから、(塾に)入会しない方もいるかもしれないし、お迎えに来ないといけないというので、負担をかけているケースはあるかと思う。

そして、塾の授業が終わる午後9時すぎになると、異様な光景が広がっていた。

記者リポート:学習塾の帰りでしょうか。子供たちがこのエリアを歩いています。

塾を終えた子供たちが、客引きの目の前を足早に通り過ぎていく。
こうした状況に迎えに来る保護者の姿も多くみられた。

子供を迎えに来た保護者:危ないので迎えに来ています。ちょっと前まではこんなことなかった。ここ1年以内くらい。ハロウィンの時も、いかがわしい服装で客引きされていて、ちょっとびっくりした状況。

取材を進めると子供たちへの影響を考え、駅の反対側に移転した塾もあることが分かった。

また、商店街の会長によると、風紀を乱すような行為もあったという。

にしきた商店街矢田貝充彦会長:客引きしている連中が、ハロウィンの時に浮かれて、ほとんど素っ裸みたいな形で騒いでいた。“ここはそういう町ではない”というのがわれわれの願い。

■西宮北口駅の一部エリアを客引き行為の禁止地区に指定 すでに禁止区域の三宮駅周辺は…?

この事態を改善しようと兵庫県は新たな対策に。

兵庫県斎藤元彦知事:1日でも早く安全安心な日常生活、健全な教育環境を確保するために、客引き行為等の条例に基づいて、5月1日に禁止区域に指定したい。

5月1日から西宮北口駅の一部エリアを客引き行為の禁止地区に指定することに。

違反した場合には、5万円以下の過料が課されたり、氏名が公表されたりする。

兵庫県内ではすでに禁止地区になっている地域もある。

阪急・神戸三宮駅周辺は2015年から禁止地区に指定され、指導員が見回りを行っていて、客引きの数は条例の制定前に比べ約3割減少した。

しかし、取材してみるとまだ客引きの姿はある。

話を聞いてみると…。
客引きしていた人:稼げるっすよ。(1カ月で)4、5、60(万)とか人によるけど。(Q.禁止区域の認識は?)悪質じゃなければ(OK)みたいな感じ。絶対キャッチは減らないですよ。

客引きしていた人:(Q.禁止区域の影響は?)そうなんですか?(影響は)あんまりないです。(指導員は)動いたらあかん、とまって声かけろって。ゆるいですよ。適当ですよ、三宮の防犯なんて。

禁止地区の指定は効果があるのでしょうか。西宮で聞いてみると、「禁止区域になっても客引きをやめる予定はない。正直、街は変わらないと思う」という声も。

文教地区は繁華街に変わっていくのでしょうか。

■“客引き”禁止地域にする効果は期待できるのか

西宮市の客引き禁止地区は学習塾が本当に多い地域だ。今回の客引き禁止地区だが、阪急西宮北口の北側の“通り”は、子どもたちが通う学習塾が多くあるエリアだ。

禁止地区になったことで効果は期待できるのか?課題は解決するのか?について、兵庫県の担当者によると「“立っているだけ”を規制するのは難しい」という。

大阪大学大学院の安田洋祐教授は今回の規制をこうみている。

安田洋祐教授:とりあえずやってみないことには、どれぐらい過激な客引きが減るかというのは、分かりません。風紀に合わないからといって、臭いものに蓋のように、とりあえず禁止したくなるのですが、それを繰り返していくと、長期的には街の活性化自体が難しくなってしまうかもしれない。さじ加減が難しい問題だと思います。今回、客引き禁止にすることで、飲食店側から見ると、お客さんが呼べなくなるので、大きな痛手に見えますが、もともとお客さんをうばい合っています。どのお店も強引な客引きができなくなれば、それはある意味平等になってくるのと、客引きによって『よそ行こう』ってなっていた潜在的なお客さんが帰ってくる可能性もあります。今回は学習塾があることで問題になっていますが、仮に(学習塾が)なかったとしても、こういった禁止はお店にとっても悪いことばかりではないと思います。

このエリアでは学習塾と飲食店が入り乱れている。

関西テレビ 神崎博報道デスク:大阪や兵庫などの他の事例では、条例を制定することによって長い距離付きまとうような悪質な客引きはまず減ると思います。そのあとは運用の問題で、条例はあっても、どれぐらいの頻度で摘発や巡回をするかなど、それぞれの行政のさじ加減によって変わってくると思いますが、例えば、かなり厳しく巡回をすることで、客引きができないということになれば、飲食店の経営が難しくなって、もしかするとこのエリアから飲食店がよそへ移転して、ある意味ですみ分けができるかもしれません。運用にかかっていると思います。

5月1日からこのエリアがどのように変わるのか、保護者の方々が心配だという声もよくわかるので、地域の方々の声もうまく拾い上げる形での議論がこれから必要になってくるのではないだろうか。

(関西テレビ「newsランナー」2024年4月30日放送)

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