世界で活躍する若手起業家を生み出そうという取り組みが、仙台市で行われている。行政による支援が得られるだけでなく、競い合う仲間を見つけられることも魅力の一つだ。
仙台市が若手起業家の後押しを
3月14日、青葉区の真新しいオフィスビルで開かれた、「仙台グローバルスタートアップキャンパス」、通称「ＳＧＳＣ」のイベント。
「スタートアップ」とは、今までにないビジネスモデルで新たな市場を開拓し、急成長を遂げる企業や組織のこと。この取り組みは、東北から、世界で活躍できる若手起業家を生み出すという目的のもと、昨年度から仙台市が始めている。
仙台市スタートアップ支援課の酒井宏二課長によると、仙台市では東日本大震災以降、社会起業家と呼ばれる、社会問題や地域の課題への取り組みを事業とする起業家が多く生まれてきており、その後押しをすべく起業支援を始めたという。
大半が学生！国を挙げた支援が始まる
日本は世界の先進国と比べ、新たに起業した会社の割合「開業率」が低いとされている。厚生労働省のデータでは、イギリス、フランスなどと大きく差が開いているのが現状だ。
こうした中、政府は、2020年に仙台市など全国8都市をスタートアップの拠点に選定。国を挙げた支援が始まった。
支援をもとに仙台市が立ち上げたのが「ＳＧＳＣ」。定員の3倍にあたる300人から応募があり、書類選考などで選ばれたのは110人。平均年齢は22.4歳で、なんとその大半が高校生や大学生だという。
2023年7月に、初回のイベントが開催された。段階ごとに参加者を選抜していく方式で、世界最先端の学習ソフトを用いた研修や、スタートアップの拠点が多いアメリカのシリコンバレーでの研修も行われた。最後まで残ったのは14人。2024年3月、最後の研修となる、投資家などを前にしたプレゼンテーションが行われた。
高齢化・過疎化の課題解決のため起業を目指す
参加者の一人、介護の分野で起業を目指す佐藤志保さん。秋田県出身の佐藤さんは、東北大学大学院の博士課程で精神医学や脳を研究し、今年3月に卒業。4年ほど前から、大学院生の仲間と、高齢化や過疎化が進む地方の課題解決のため、健康寿命を延ばす事業の立ち上げを目指してきた。
プレゼンテーションで大賞を受賞した参加者には、開業資金１０００万円以上のほか、優先出資権などが贈られる。
運命のプレゼンテーション！結果は…
いよいよ佐藤さんの順番が回ってきた。佐藤さんのチームは東北の公共施設と連携しながら、歩くだけで体の衰えに気づくことができるアプリなどを開発。検証結果を説明した上で、事業を通じて健康改善につながる行動を促したいと訴えた。
審査員からは上々の反応を得られたが‥‥、残念ながら受賞は逃した佐藤さん。それでも、表情には充実感が満ちていた。
「大賞を取れなかったのは悔しかったが、競い合った学生から『（プレゼンが）改善されていてすごく良い発表だった』と言ってもらえたので、それは良かった。意見をもらったからこそ、ここまで来られた。今後、さらに力を入れて起業に向けて頑張っていきたい」（佐藤志保さん）佐藤さんは、今年中に起業することが目標だという。
仙台市の後押しが東北に新たな価値を生む
初年度が終了した「仙台グローバルスタートアップキャンパス」。起業を目指す若者をつなぎ、東北に新たな価値を生み出そうとしている。
（仙台放送）
