商品名やパッケージで「生」をアピールしたパンを見たことはあるだろうか。最近はスーパーやコンビニのパン売り場で、見る機会が増えた気もする。

フジパンの「生こっぺ ちょこ」(編集部撮影)
フジパンの「生こっぺ ちょこ」(編集部撮影)
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食べるとしっとりふわふわでおいしいが、気になるのは「生」という表記。パンは生地を焼いてできているはずだが、生要素はどこにあるのだろう。製造工程や原材料が一般的なパンと違うのだろうか。

パンの断面はこんな感じ(編集部撮影)
パンの断面はこんな感じ(編集部撮影)

そこで「生ろぉる」「生こっぺ」などを、ブランド「生セレクション」として、シリーズ販売している「フジパン株式会社」(本社・名古屋市)に取材。生要素がどこからきているのか、パン売り場でよく見る背景を、担当者に聞いた。

生地に「生」を練り込んでいた

――生セレクションが誕生した時期やきっかけは?

2021年2月に「生ろぉる」を地域限定商品として発売したのが始まりです。好評をいただいて販売地域が広がり、同年12月には第2弾の「生くろわっさん」を全国販売しました。以降は徐々に商品数も増え、生セレクションは2024年3月現在、49商品となっています。

開発のきっかけは、食パン専門店などで「生」がキーワードとなっている食パンが流行していたことです。その特長を食卓ロールパンで表現できないかと考え、開発に取り組みました。

生セレクションの第1弾「生ろぉる」(提供:フジパン)
生セレクションの第1弾「生ろぉる」(提供:フジパン)

――パンの生要素はどこからきている?

弊社の「生」は、生クリームを生地に練り込んで製造した商品となります。生地に入れることでほんのりした甘味とそのままでおいしい食感や風味となります。また「生」というワードを使用することで、商品の特長やこだわりをお伝えできていると考えております。


――パン業界で「生」をアピールした商品が増えている気もするが?

パン自体に生クリームを配合したり、クリームをパンに挟んだり、注入した商品は以前からありましたが、鮮度や食感を表現する「生」という商品名を食パン専門店が使用したことが、発端になっていると思われます。各社、追随して「生」を商品名に使用していますね。

製造工程は違う?お勧めの食べ方は?

――生セレクションの開発で苦労した点は?

最初の商品「生ろぉる」の開発ですね。生食パンがなぜ支持されるかの分析から始めました。そのまま食べておいしい点が評価されていると考え、ロールパンで表現するべく、何もつけずに温めなくても、おいしい味わい・食感に仕上げるため、試行錯誤を重ねました。

製造途中の「生くろわっさん」(提供:フジパン)
製造途中の「生くろわっさん」(提供:フジパン)

――原材料や製造工程は一般的なパンと違う?

一般的なパンには牛乳などの乳製品を使用することが多いですが、生セレクションには国産の生クリームを使用しています。製造工程はほぼ変わらず、中種のミキシング・発酵、生地のミキシング、中間発酵、成形、最終発酵、焼成、冷却の流れで進みます。生クリームは生地のミキシング部分で投入します。

こんがりおいしそうな色に(提供:フジパン)
こんがりおいしそうな色に(提供:フジパン)

――お勧めの食べ方は?焼いてもいい?

まずは、そのままで食感をお試しいただけたらと思います。もちろん、トースターなどで焼いていただいてもおいしく召し上がれます。ホイップやクリームが入っている、一部の商品は熱を加えると中身が出てしまうこともありますのでお控えください。

会社としてもヒット商品になっていた

――生セレクションの反響や影響は?

お客様からは「何も付けずにそのまま食べておいしい(生ろぉる)」「しっとりしていておいしい(生くろわっさん)」などの反応をいただいています。会社としても、弊社商品が「ジャパン・フード・セレクション」(フードアナリストによる食品・食材の審査・認定制度)のグランプリを受賞するなど、ヒットにつながっています。



パン売り場に「生」と書かれた商品が目立つのは、専門店の生食パンブームがあった点、味わいや食感の特徴を伝えやすい言葉である点が影響していそうだ。食べる機会があれば、まずは何も付けずにそのままで味わってみるといいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。