10代・20代対象の民間調査によると、正社員とフリーターの約半数が職場で賃上げがあったが、両者の上げ幅には大きな差があることが分かった。賃上げの不均衡は、非正規雇用の賃金水準の低さに起因すると指摘されている。

正社員とフリーターで“賃上げ格差”

20代以下の正社員と、いわゆるフリーターを対象にした民間の調査で、約半数が「職場で賃上げがあった」と答えたものの、その上げ幅は、両者で大きく異なることがわかった。

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10代・20代の正社員と、パート・アルバイトなどで生計を立てるフリーター、それぞれ1000人を対象にしたレバレジーズ調査「若者しごと白書」によると、2023年末時点で「賃上げがあった」と回答したのは、正社員が48.6%、フリーターが50.4%と約半分で、大きな差は見られなかった。

しかし、月額の上げ幅を聞いたところ、フリーターの約半数が1000円未満だったのに対し、正社員は5000円以上が過半数で、1万5000円以上と答えた人も1割を超えた。

非正規への賃上げ余地あり

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
20代以下の若者世代で、正社員とフリーターの賃上げ格差が改めて示されましたが、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
正社員、フリーター共に賃上げが起きているのは、前向きな動きです。ただ、課題である格差の解消には至っていません。

フリーターの方は、正社員に比べると、そもそもの賃金水準が低いことも影響して、実際に手にする金額では、依然として大きな格差が残っていると思います。

堤キャスター:
なかでも外食や流通などのサービス業では、非正規で働いている方も多いですよね。

エコノミスト・崔真淑さん:
例えば、流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンの集計によると、2023年のパートタイマーの賃上げ上昇率は5%を超えています。これは、この組合が結成されて以降、過去最高となっている。

日本の非製造業はパートタイマーに依存する企業も多く、まだまだ伸び代は大きく、賃上げの余地はあると思うんです。しかし、構造的な要因が影響して、賃金水準を高めるための壁になっているのではないかと思います。

企業のみならず抜本的な改革が必要

堤キャスター:
具体的には、どういうことでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
パートタイマー、特に、最低賃金の近くで仕事をしている人の半分は、実は扶養に入っている主婦や学生との統計データがあります。

社会保険料負担がかからない範囲で、つまり、手取りが減らない範囲で仕事を抑える「年収の壁」が存在し、それが賃上げの壁になっているのではないかとも言われています。

そこで政府としては、2023年9月に、2年間は130万円以上働いても扶養に入れるという特別な制度や、年収の壁に対策をした企業には、期間限定で補助金を出すことを決めました。ただ、このような時限措置をしても、将来を見据えて働き控えをする人が出てくると、賃上げの壁になりかねないということなんです。

堤キャスター:
企業に賃上げを促すだけではなく、国が果たすべき役割も大きいようですね。

エコノミスト・崔真淑さん:
アルバイトやパートの賃上げで、最も影響が大きいとされているのが、最低賃金の引き上げです。そして、最低賃金の引き上げとともに、「年収の壁」の改革など、柔軟な雇用の制度設計が引き続き行われるべきだと思います。

堤キャスター:
仕事には責任が伴いますから、努力した分、報われる世の中であってほしいと思います。いま、賃上げが大きな焦点になっていますが、時代にあった雇用の仕組みや、賃金の在り方を考えていく必要があるのかもしれませんね。
(「Live News α」2月12日放送分より)

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