鹿児島・奄美群島が、戦後のアメリカ軍統治から日本に復帰して2023年12月で70年。苦しい時代を乗り越えて70年がたった今、奄美ではアメリカ軍と自衛隊との共同訓練が頻繁に行われるようになり、国防の最前線に置かれている。

日本復帰70年の奄美大島

鹿児島県本土から350km以上南に位置する奄美大島。固有の動植物が生息し、自然にあふれるこの島は、世界自然遺産にも登録されている。

この記事の画像(8枚)

そんな奄美大島に2019年に発足したのが、陸上自衛隊奄美駐屯地だ。当時の岩屋防衛相は、「南西地域の空白地帯が埋まっていく」とコメントしていた。有事の際に敵の戦闘機を打ち落とすミサイル部隊も配属されている。

終戦後、アメリカ軍の統治下に置かれた奄美。奄美の人々は、署名活動や断食などの運動を続け、約8年後に日本への復帰を果たす。「無暴力」を貫き故郷を取り戻した先人たち。70年後の奄美をどう思い描いていただろう?

奄美大島での日米共同訓練

2023年9月、奄美を舞台に行われたアメリカ軍と自衛隊による共同訓練。訓練には高機動ロケット砲システム「ハイマース」も参加。ロシアの侵攻で、アメリカがウクライナに提供した兵器として知られている。

ここ数年、奄美では頻繁に日米共同訓練が行われるようになった。理由は、海洋進出を進める中国の存在だ。地図に引かれているのは、太平洋進出のため中国が設定した「第1列島線」と呼ばれる軍事的防衛ライン。中国は台湾有事を見据えて、アメリカ軍の侵入を防ぐ最低ラインと位置づけている。このライン上には、沖縄とあわせて奄美群島も含まれていて、国が防衛力強化を進める大きな理由となっている。

さらに2023年は、国防のための訓練が奄美の民間施設にも拡大された。奄美空港と徳之島空港で行われたのは、航空自衛隊のF15によるタッチ・アンド・ゴー。

鹿児島テレビが奄美空港に設置しているカメラは、訓練が行われているすぐそばを旅客機が通過する様子を捉えていた。まさに国防の最前線となっている奄美で、何が行われているのか?

募る不安、押し寄せる国防の波

鹿児島テレビでは、2023年9月に奄美駐屯地の内部の取材を申し込み交渉を重ねたが、「日程が合わない」として、12月22日までにはかなわなかった。

撮影可能な場所から基地内を見てみると、ミサイル部隊の車両が発射台を真上に向けている様子が確認できた。

国防の動きが加速することに、島民からは「守ってもらうために、必死に体を張って頑張っていると思うと、必要なことなんだなと」との声がある一方、「やめてほしい。基地があると真っ先に攻撃される」「戦争が始まるのかなと思って怖い」「いつ戦争が起こるかわからない。(戦争の)前準備のような感じがするから望んでいない」など不安の声が聞かれた。

緊迫する世界情勢を理解しつつも、住民に募る不安。その不安とは裏腹に押し寄せる国防の波。日本復帰から70年の奄美。あの時、先人たちが決死の思いでつないだものは何か、あらためて見つめ直すことが、今を生きる私たちに求められている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。