国の重要無形民俗文化財に指定されている宮崎県・高千穂町の夜神楽。
高千穂町が把握する神楽の保存会は31ある中、「夜神楽」から昼間行う「日神楽」に変更する地域、そして「ことしは神事だけ」という地域も4つあるなど、夜神楽を実施しない地域も少なくない。

地域が高齢化する中で見えてきた神楽の変化を取材した。

地元の女性の協力が欠かせない夜神楽

11月18日、高千穂町の五ヶ村西公民館。夕方から翌日にかけて舞う夜神楽が公開されていた。
コロナ禍を経て4年ぶりの一般公開だ。

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地元の見物客は「やっぱり(コロナの非公開は)寂しかったですね」「今、子供たちが(神楽を)やっていますから、その子たちが大きくなってもずっと続いていけばいいなと思う」と夜神楽について話す。

中畑神社 神楽保存会・藤﨑康隆会長:
一晩中舞って、お客さんがそれを見て「よかったよ、楽しかったよ」と朝言われるのが一番やりとげた感じ。うれしいですね。

夜神楽では、舞手や地区の役員のほか、観光客にも神楽を楽しんでもらおうと食事を提供する地域の女性が活躍する。
この食事づくりは準備を含めると3日がかりになるという。

地元の女性は「大変ですけど、お祭りですから(頑張る)」と話す。

ーー女性の協力がないとできない?

中畑神社 神楽保存会・藤﨑康隆会長:
絶対できないです。一緒に盛り上げていく方法を模索しないとたぶん生き残れないのではないかと思う。

見えてきた夜神楽の変化

高千穂町では夜通し舞う夜神楽から日中だけの日神楽に変更する地域が出ている。

天岩戸神社の近くにある下永之内(しもながのうち)公民館では、2022年に続いての日神楽だ。

地域の人口が減り高齢化する中、住民アンケートでは日神楽を望む声が夜神楽より4件多かったほか、「神楽をしない」という意見も少なくなかった。

下永之内公民館・富高隆治館長:
(食事提供などの)役目に出れないという方が増えてきたものですから、一晩中舞い明かすのが一番の理想なんですけど、なかなか難しい時代が来たと思っている。

(※富高館長の「高」ははしご高」)

高千穂町のまとめでは、コロナ前の2019年度と比べて、2023年度は夜神楽が3地区、日神楽が1地区減って、神事のみを行う地区が4つあるという。このうち8つの地区は神楽を公開していない。

下永之内公民館では日神楽となったが、地元の女性たちが心を込めて食事の提供などを行っていた。

初めて参加した大分県の観光客は「楽しいですね。おいしくいただいています」と話す。

地元の女性:
日神楽の方が楽ですね。夜ご飯とか作らなくていいし、朝ごはんも作らなくていいので。私たちも大変です。

守り続けたい伝統を後世に

舞手の数も維持が必要だ。
下永之内公民館では舞手12人の半数はほかの地区からの応援だ。

保存会は食事を作る女性の負担に理解を示しつつ、夜神楽を再開できるように体制は維持していきたいと考えている。

下永之内神楽保存会・佐藤雄一会長は「農家の人は特に五穀豊穣(ほうじょう)を願って祈願をするということで、夜神楽の方がいいというのはあります。今、小さい子供がいるから、その子供たちも続いて、長く神楽はしてほしいと思います」と話す。

元々、食事の提供は舞手や住民向けのものだった。しかし、一部地域では過疎高齢化で提供が負担になりつつある。

長く伝承されてきた神楽を絶やさず、後世に伝えるための取り組みを模索する中、負担軽減に取り組んでいる地区もある。

観光で訪れる人は、そうした事情を理解した上で神楽を楽しんでほしい。

(テレビ宮崎)

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