レモネードの売上金の一部を小児がん支援にあてる「レモネードスタンド」。小児がんの研究を進めてもらい、闘病する子どもたちを笑顔にしたいと、山形市の女子高校生が奮闘している。この活動に取り組む理由や思いを取材した。

15歳未満の子どもが発症“小児がん”

全国で年間平均2,500人、山形県内では年間平均15人の子どもたちが新たに小児がんと診断されている。小児がんとは、15歳未満の子どもが発症するがん全体を指し、血液のがんや脳の腫瘍など様々だ。

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「日本小児がん研究グループ」によると、小児がんは大人に比べて治療の研究が進んでいないという。小児がんは種類が多い一方でそれぞれの患者数が少なく、研究の対象となる患者の確保が難しいため、治療薬の開発が進まないという課題がある。

支援活動「レモネードスタンド」とは

11月26日、山形市で開かれたイベントでレモネードが販売されていた。

天童市のボランティアサークル「nicoこえ」が企画したこの取り組みは、「レモネードスタンド」と呼ばれている。売上金の一部を小児がん支援にあてるアメリカで始まった活動だ。

「nicoこえ」がレモネードスタンドを始めたのは、2023年3月。1本200円で販売し、売上は県内の小児がん患者の支援にあてられる。多くの人に小児がんについて関心を持ってもらおうと、リーフレットも作った。

購入した人からは「このぐらいの物で何かの助けになるなら良い」「できるところは協力したい。小児がん支援は知らなかった」といった声が聞かれた。

プロジェクトリーダーを務めるのは高校生
プロジェクトリーダーを務めるのは高校生

「この活動自体を知ってもらうことが一番の目的。たくさんの人が足を止めてくれるのがうれしい」と話すのは、山形市内の高校に通う3年生の平田寧々さん。この活動のリーダーを務めている。

自らも闘病…周りの子どもたちの姿見て

平田さんがこの活動に取り組むのには理由があった。

平田寧々さん:
自分が小児がんになったり、周りの子を見て現状を知った部分があって、何か自分にできることはないかと考え始めた時に、母が教えてくれた活動がこのレモネードスタンド

平田さんは小学3年生の時、頭に「こぶ」ができ医療機関を受診したところ「がん」と診断された。

平田寧々さん:
「ランゲルハンス細胞組織球症」という、珍しい血液のがんに分類される病気で、1年間に70人くらいしかこの病気になる人はいない

抗がん剤治療が始まると、平田さんに「ある変化」が現れた。

抗がん剤治療で“変化”が…
抗がん剤治療で“変化”が…

平田寧々さん:
この期間で、実際に見た目が変わって髪の毛も抜けたり、顔も薬でどんどん丸くなっていって、周りから視線を感じる。あったかい視線ではない。小児がんになって、見た目が変わったというのはすごく大きいんだなと感じた

今は症状がなくなり、投薬の必要もないが、平田さんが病気のことを忘れることはない。自分が入院中に目にした、小児がんと闘う多くの子どもたちの姿が目に焼き付いているからだ。

平田寧々さん:
小学校にも入学していない子たちがたくさん小児がんで入院していて、もう少し治療や研究が進んでくれたらうれしいなという思いと、知ってもらえると見た目に対する退院する時の気持ちも違うのかなと

“前向きになれた理由”である看護師に…

自分にできることがないかと感じた平田さんは中学2年生の時、母の勧めから親友と2人でレモネードスタンドを始めた。

高校に入学した後はボランティアサークル「nicoこえ」に入り、一緒に活動してくれる仲間も増えた。そして今、平田さんには「将来看護師として県内で働きたい」という新たな目標がある。

入院中は自分の見た目のことなど落ち込むことも多かったと話す平田さんだが、前向きになれたのは普段通りの会話で温かく寄り添ってくれた看護師の存在があったからだという。

平田寧々さん:
どの看護師さんも優しくて、ずっと安心感があって、会話するのがすごく好きな時間だった。医師よりも看護師さんとの距離が近くて、だから看護師にあこがれた

今は県内の大学で看護を学ぶため、受験勉強に励んでいる。

レモネードが子どもたちの笑顔に

10月からは活動に共感した天童市の菓子店の協力で、売上の一部が小児がん支援に充てられるシュークリームも販売されている。平田さんたちの活動は広がりを見せ、3月からの10カ月間で100万円を超える支援が集まった。

平田寧々さん:
それだけの人が小児がんについて関心を持ってくれて、知ったうえで「レモネードを買って支援しよう」という気持ちにまでつながったんだなと思うと、すごくうれしい。レモネードスタンドを今年だけの活動ではなく、これからずっと続いていく活動になることが一番の目標

1本200円の支援が、がんと闘う子どもたちの笑顔に…。平田さんたちの取り組みは続く。

集まった支援金は2024年2月に山形大学附属病院の小児科に寄付されるという。1本200円のレモネードが、小児がんと闘う子どもたちの支援につながることを多くの人に知ってもらいたい。

(さくらんぼテレビ)

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