イスラム組織ハマス掃討のため、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの攻勢を強めている。地上のみならず地下、海にも広がる戦場を、最新映像から分析する。

公開されたガザの病院内映像

ガザ市内を走るイスラエル軍の戦車や重装甲車の数々。猛攻を繰り広げるイスラエル軍に、フランスのマクロン大統領は10日、「民間人を攻撃することを正当化する理由はない」として、ついに懸念を表明した。

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こうした声を払拭するためか、イスラエル軍がガザ最大のシファ病院に突入した際に公開した映像には、MRI装置の後ろや棚にカラシニコフ小銃や手榴弾が映し出されていた。ハマス側は「ねつ造」だと否定している。

また、ランティシ病院の地下とされる映像には、ハマスの弾薬保管場所のほか、女性の人質1人がくくられていたとみられる椅子もあった。これが事実なら、230人以上とされる人質は極めて少人数ごとに拘束されていることが推測される。

“地下トンネル戦”の切り札「ヤハロム」

さらに映像には、地上につながるトンネルも記録されていた。

能勢伸之上席解説委員:
ハマスの戦闘員がトンネルを駆使し、不意に地上に現れ、物陰に隠れながら、素手でイスラエル軍の戦車に爆発物をセットするという映像もありました。フェイクでないなら、イスラエル軍は、地上だけでなく地下の戦場、トンネルでもハマスと戦うことを強いられるようです。

2021年時点で、総延長500キロに渡って張りめぐらされていたというトンネル。イスラエル軍は、空爆で破壊すると同時に、人質を奪還するためには、地下トンネルに兵士を送り込む必要がある。

能勢伸之上席解説委員:
その切り札が、戦場での工事が任務の工兵部隊、その中でもエリート部隊のヤハロムです。ヤハロムの訓練映像によると、ロープで降ろしたロボットに、トンネルの中を確認させながら突入する。しかし、暗闇の中、突如トンネルを崩され、生き埋めになる恐怖とも戦わなければならないとされています。

戦闘は海でも…

ハマスの“仕掛け”はトンネルだけではない。

10月末にハマスが公開した映像では、アンテナのようなものが突き出た魚雷を、軍艦からではなく沿岸から潜水服を着た戦闘員が海中に押しだし、潜航させている。標的はイスラエル海軍の艦艇だったのか。

イスラエル軍は16日、海軍特殊部隊と地上部隊が、ハマスが訓練に使用していたガザの港の施設やトンネルを急襲し、その多数を破壊したと発表した。

戦場は、地上に、地下に、沿岸にと広がる。今後の人質解放に向けた動きが注目される。
(「イット!」11月19日放送より)

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能勢伸之
能勢伸之

情報は、広く集める。映像から情報を絞り出す。
フジテレビ報道局上席解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。