日本時間の15日未明、イスラエル軍はハマスの司令部があるとしていたガザ地区最大のシファ病院に突入し、病院の中の映像を公開した。映像を公開することで「ハマスが組織的に病院を軍事利用している」として、病院攻撃の正当性をアピールするものと思われる。

シファ病院の映像を公開

イスラエル軍は日本時間の15日未明、ハマスの司令部があるとしていた、ガザ地区最大のシファ病院に突入した。その後、病院の中の映像を公開し、ハマスの拠点だと主張した。

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ガザ保健省によると、今回の作戦でシファ病院の技術士2人が拘束されたとして批判している。

イスラエル軍は「作戦は継続中」としたうえで、病院のMRIセンターの内部映像を公開し、ハマスの拠点だったと説明している。
イスラエル軍の報道官は、「我々の部隊が病院の主要な場所にあるクローゼットを開き、これらを発見した。このような武器は病院とは全く無関係だ」と話している。
また、イスラエル軍は地下に司令部があり、人質がいるものとみて調査を続けている、としている。
一方、ハマスはイスラエルの主張を全て嘘だと否定している。

こうした中、国連の安全保障理事会は15日、戦闘の人道的一時停止などを求める決議を採択した。
安保理の決議には法的拘束力があるが、イスラエルの国連大使は「決議は現実から切り離されていて無意味」と反発している。

ここからは立石氏が解説する。

ハマスの重要拠点とみているシファ病院へ作戦を継続するイスラエル軍。16日の朝、病院内の映像を公開した。
イスラエル軍が公開したシファ病院内の映像では、戦闘があった後なのか、物が散乱している。
カメラが入っていったのはMRIの検査室。イスラエル軍はこの部屋に自動小銃や弾薬・防弾チョッキなどが隠されていたと説明している。
さらに、センター内には通信機器やコンピューターもあり、廊下にある監視カメラは黒いテープのようなもので覆われて使用不可能になっている、とも説明している。

今回のシファ病院への突入については、WHOなど国際社会から強い避難・懸念があがっている。

イスラエル軍は映像を公開することで「ハマスが組織的にシファ病院を軍事利用している」として、病院攻撃の正当性をアピールするものと思われる。

あくまでもイスラエル側の主張のため、この映像をどこまで信じていいのかという部分はあるが、作戦中にこうした病院内での動画を出してくる狙いは何なのだろうか。

ノーカットを強調した映像

今回のシファ病院の映像では、注目する点が二つある。

一つ目は、シファ病院を歩きながら7分近くリポートしていた、イスラエル軍のヨナタン・コンリクス中佐という人物だ。
コンリクス中佐は広報官で、普段はイスラエル国内の軍の本部で海外特派員も含め、記者相手のブリーフィングを勤めている。
軍の重要な幹部の1人だが、今回、わざわざ現場に出向いてリポートをしている。コンリクス中佐は英語も流ちょうであり、対外メディア戦略を担っている。
こういう人物が出てくることで、海外に向けてイスラエル軍の正当性をアピールする狙いがあるとみられる。

そして、もう一点が映像の冒頭でのコンリクス中佐の「ノーカット、編集無しでシファ病院で見つけた全証拠を見せます」という発言だ。
コンリクス中佐は「映像はノーカット」というのを強くアピールしている。これにも理由が考えられる。

14日に別の広報官が、今回とは別の病院でハマスの武器などが見つかったとリポートを行っている映像もある。
しかし、公開された映像のカット割りが多すぎて、意図的に編集されたものではとの疑問も出ていた。そこで、あえて今回は「編集していない」ということを強調しているのだと考えられる。

今回のシファ病院の映像については編集はないということだが、パソコン画面には、ぼかしなどの処理も見られた。

ハマスの地下トンネル見つからず

そして、肝心の映像内容についてだが、イスラエル軍はこれまで「シファ病院地下にハマスの司令部がある」として、攻撃目標としてきた。

これまでイスラエル軍は、シファ病院のCGの映像も公開し、複雑に広がる地下トンネルなども公開している。

しかし、今回の映像では、武器などは確認できたものの、肝心の司令部や地下トンネルが確認できていない。
ここがハマスの本拠地と断定できる証拠は、まだ出てきていない状況だ。

ネタニヤフ首相の側近、イスラエル首相府上級顧問レゲブ氏はBBCの取材に対して、「地下ネットワークについて、さらなる資料が公開されるだろう」と話している。

一方でハマス側は「イスラエルによるプロパガンダだ」と、これを強く否定している。

さらに、FNNがイスラエルに拠点を置く医師を支援する人権団体に話を聞いたところ、真偽は不明だが、現地の医師や医療スタッフは「ハマスがいるという証拠を見ていない」と証言しているということだ。

AFP通信などによると、イスラエル軍は16日もシファ病院での作戦を継続中で、軍用車両を入れるためか、病院の入り口などにある放置車両を排除しているという。今後の何らかの作戦に向けた動きとみられる。

イスラエル側は15日、病院に保育器などを運び込む映像も公開し、人道に配慮しているとアピールしている。

今回の武力衝突で、ハマスは人間の楯として人質や市民を利用していることは明白だが、病院は守られるべき場所であり、イスラエルは攻撃にあたって明確な証拠を示す必要がある。
(「イット!」 11月16日放送より)